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2O・3O(仮)  作者: 夜何時
第四章
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第三十三話 開戦の狼煙

二次三次高校。


夏休みが終わってから数日。


校舎には再び穏やかな日常が戻っていた。


しかし、その平穏を誰よりも信じていなかった者がいる。


剣持刀也だ。


先日、エニカラ本部で知らされた情報。


――天宮こころがゲーマーズに狙われている。


その事実を知ってからというもの、剣持は学校でも街でも周囲への警戒を一切緩めていなかった。


常に窓の外や人の流れへ意識を向けていた。


『刀也君』


頭の中から伏見が話しかける。


『少し肩に力が入りすぎじゃないか?』


「……分かってる」


小さく返事をする。


「でも、もし僕が油断したせいで天宮さんに何かあったら」


その先は言わなかった。


伏見もそれ以上何も言わない。


ドーラを救えなかった後悔。


それが今も剣持の胸へ残り続けていた。


だからこそ今度だけは絶対に守る。その決意だけが、剣持を支えていた。



しかし――。


何も起こらない。


何日経っても学校はいつも通りだった。


天宮は三枝や鈴谷と笑いながら話し、家長は相変わらず剣持へ「最近おかしいよね」としつこく聞いてくる。


夕陽も普段通り授業を受けていた。


平和な日々に、剣持も少しだけ安心しかけていた。


その日の四時間目も……


教師が黒板へ数式を書き続ける。


剣持はいつものように窓際最後列の席から外を眺める。


何も異常はないことを確認していた、その瞬間だった。


「――剣持!!」


夕陽が立ち上がった。


教室中が驚いて振り返る。


彼女は右目を押さえながら苦しそうに息を荒げていた。


剣持は一瞬で理解する。


「来る!」


竹刀袋を掴み、一瞬で竹刀を抜いた。


教師もクラスメイトも状況が理解できない。


「け、剣持君!?」


クラスメイトの一人が心配そうに声をかけたその直後。


――ガシャァァァン!!


教室の窓ガラスが粉々に吹き飛ぶ。


悲鳴が響く。


割れた窓から飛び込んできた一人の青年。


銀髪に赤い瞳と鋭い牙を覗かせながら、不敵に笑う。


「よう」


立っていたのはゲーマーズの葛葉だった。


着地と同時に教室が静まり返る。


教室中は恐怖で動けなくなっていた。


葛葉は教室をゆっくり見回す。


「俺はここで暴れてもいいんだけどさ」


肩をすくめながら笑う。


「一般人まで巻き込む趣味は俺にはねーのよ」


剣持は竹刀を構えたまま睨む。


「……何が目的だ」


葛葉は楽しそうに笑った。


「お前と戦いに来たに決まってんじゃん」


空気が凍る。


葛葉は窓の外を親指で指した。


「だから、誰にも邪魔されねぇ場所で決着つけようぜ」


剣持は周囲を見る。


怯えるクラスメイトと困惑で動けない教師。


学校の中には天宮も鈴谷も三枝も家長もいる。


ここで戦えば必ず誰かが巻き込まれることは明確だった。


「剣持…」


夕陽が静かに言う。


「……分かってる」


剣持は竹刀を下ろした。


「行こう」


「話が早くて助かるな」


葛葉はニヤリと笑う。


次の瞬間、窓から勢いよく飛び出した。


剣持も迷わずその後を追う。


屋上を飛び越え、


二人の姿は彼方へ消えていった。



静まり返った教室で誰も声が出ない。


しかし、最初に動いたのは夕陽だった。


「みんな!」


教室中へ叫ぶ。


「今すぐ避難して!」


教師が我に返る。


「み、皆さん!落ち着いて避難します!」


ようやく生徒たちも動き始める。


その中で夕陽だけは逆方向へ走った。


「リリちゃん!」


家長が呼び止める。


夕陽は振り返らない。


(剣持は葛葉を引きつけてくれた。)


(なら次は――。)


天宮こころ。


彼女を守らなければならない。


夕陽は全力で廊下を駆け出した。



学校の隣のとあるビルの屋上。


望遠鏡と通信機材が並ぶ即席の監視拠点。


伊波ライは双眼鏡越しに校舎を見つめていた。


「今日も平和……か」


そう呟いた直後。


校舎から大量の悲鳴が聞こえた。


「……!」


伊波が立ち上がる。


その横で叢雲カゲツも目を細めた。


「ガラスが割れたぞ」


「襲撃だな」


小柳ロウが静かに刀へ手を掛ける。


星導ショウだけが首を傾げた。


「学校って窓割るイベントありましたっけ?」


「「「ないわ」」」


三人同時に突っ込む。


それと同時に伊波は通信機を取り出す。


「学校で戦闘発生、手の空いてる者は直ちに二次三次高校に集合してください」


それだけ言って四人は一斉にビルから飛び降りた。


その時だった。


「――そこまでよ」


穏やかな声と共に校舎との間へ三人の少女が降り立つ。


天ケ瀬むゆ、先斗寧、海妹四葉の三人だった。


海妹は笑顔で手を振る。


「やっほー!」


先斗は静かに腕を組んだ。


「ここから先へは行かせない」


天ケ瀬は眠たそうに欠伸をする。


「抵抗しなければいい夢見せてあげるから」


伊波は表情を引き締める。


「ゲーマーズか」


海妹は元気よく笑った。


「正解!」


その瞬間。


両陣営の間へ緊張が走った。


◇ 


同時刻。


二次三次市。


街を巡回していた加賀美隊の鷹宮リオンと緑仙は、のんびりと歩いていた。


「今日は何も起きないわね」


鷹宮が退屈そうに伸びをする。


緑仙はため息をついた。


「平和なのはいいことじゃん」


「でも暇じゃん」


「仕事中なんだから暇でいいんだって」


その時、通信機が鳴る。


『こちら本部、二次三次高校で非常事態発生!』


『ゲーマーズの襲撃と思われます!』


二人の表情が変わる。


「学校!?」


それを聞いて鷹宮が駆け出そうとした瞬間。


「残念やけど」


後ろからコテコテの関西弁が聞こえてくる。


パンダのパーカーを身にまとった制服姿の少女が立っていた。


「ここ通行止めやよ」


ゲーマーズの一員、笹木咲はニヤリと笑う。


「ウチの名前は笹木咲く、ほな遊ぼか」


鷹宮は静かに鎌を出現させる。


緑仙の足元には小さなパンダが次々と現れる。


一方、笹木は近くのガードレールへ手を置いた。


「ウチのゲーム、開始やよ」


次の瞬間――バァンッ!!


叩きつけられた一撃と共に、ガードレールだけでなく地面まで蜘蛛の巣状にひび割れた。


戦いの幕が、今上がる。

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