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2O・3O(仮)  作者: 夜何時
第三章
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第二十四話 到着

轟音を響かせながら、一機の白い自家用ジェットが広大な砂漠を越えていく。


窓の外には、どこまでも続く黄金色の砂海。


その先には蜃気楼のように巨大な都市が姿を現していた。


「……すごい」


夕陽リリが思わず窓へ顔を近づける。


剣持も同じ景色を見つめながら、小さく息を漏らした。


「V東京とは全然違う……」


『おぉ……これは壮観だな』


頭の中から伏見が感心した声を上げる。


『神社の境内しか見てこなかった俺でも、これはテンション上がるぞ』


「伏見は神様なのに旅行経験ないんだ」


『神様だからこそだよ。簡単に外出できる立場じゃなかったんだから』


そんな他愛ない会話をしているうちに、機体はゆっくりと高度を下げ始めた。


「まもなく着陸いたします」


機長のアナウンスが流れ、数分後。


イブラヒムが手配した自家用ジェットは、コーヴァス帝国の空港へと静かに降り立った。


「……本当に自家用ジェットだったんだね」


「社さんから聞いた時は冗談かと思ってました」


二人がタラップを降りると、乾いた熱風が身体を包む。


日本とは違う乾燥した空気。


真っ青な空。


そして遠くには宮殿のような街並みが広がっていた。


「お待ちしておりました」


燕尾服に包まれた青年が車の横に立ち律義にお辞儀をしていた。


「私はエニカラコ―ヴァス帝国支部所属、榊ネスと申します」


そう言うと、見た瞬間に分かる高級車の後部座席ドアを開け始めた。

圧倒されて言葉が出ない剣持と夕陽を車に押し込む形で乗せて颯爽と出発するのだった。


乗車中も放心状態の二人が状況を飲み込む間もなく車は目的地に到着する。


榊にエスコートされる形で車を降りた剣持は


「…………。」


「え?」


思わず声を失った。


それは"支部"という言葉から想像する建物ではなかった。


白い大理石を基調とした巨大な宮殿。


青いガラスが太陽光を反射し、幾つもの塔が空へ伸びている。


正面には巨大な噴水。


周囲には水路が張り巡らされ、美しい庭園まで整備されていた。


夕陽も珍しく目を丸くしている。


その建物を見上げていると聞き覚えのない落ち着いた声が聞こえてきた。


「よお」


振り向くと、一人の青年が片手を軽く上げて立っていた。


褐色の肌にアラビアンな衣装。


どこか気だるそうな表情を浮かべながらも、その瞳は鋭い。


「遠路はるばるご苦労さん、俺がコーヴァス支部長のイブラヒム。よろしく」


「あ、よろしくお願いします!」


剣持と夕陽は揃って頭を下げる。


イブラヒムはそれを見て少し笑う。


「そんな硬くならなくていいって。社さんから話は聞いてるから」


そう言って二人を見る。


「剣持刀也と夕陽リリだろ」


「はい」


「じゃ、行くか」


そう言うとイブラヒムは振り返り、歩き始めた。


二人はその後を追う。


「あ、あのこれ王宮じゃないんですか?」


夕陽が恐る恐る聞くとイブラヒムは何でもないことのように答えた。


「あー、それよく言われる」


「ここがエニカラ・コーヴァス帝国支部」


「本部より豪華じゃないですか……」


「まあな」


イブラヒムは少しだけ照れ臭そうに頭を掻いた。


「建築費は俺が出したからな」


「……え?」


「あと設計も俺。元石油王だから金だけはあったしせっかく作るなら豪華な建物の方がいいだろ?」


「いや、スケールがおかしいですよ!」


剣持が思わずツッコミを入れる。


夕陽も呆れ半分でため息をついた。


「お金持ちってここまで自由なのね……」


『刀也君、世の中には理解しようとしない方が幸せなこともあるぞ』


(伏見まで諦めてる……)


イブラヒムは笑いながら支部の扉を押し開けた。


「いいから。入れ入れ」


中へ足を踏み入れた瞬間、二人は再び驚く。


吹き抜けの巨大なロビー。


磨き上げられた大理石の床。


壁には美しい装飾。


天井から吊るされた巨大なシャンデリア。


そこは高級ホテルを思わせる空間だった。


「うわぁ……」


その時だった。


「待ってましたぁぁぁぁぁ!!」


ロビー中に響くほどの大声。


勢いよく飛び出してきた青年が、剣持の両手を勢いよく握る。


「ようこそコーヴァス支部へ!!俺は北見遊征!君たちとの出会いを昨日から楽しみにしてましたぁぁぁ!!」


「わっ!?」


剣持は圧倒されながら握手に応じる。


「あ、ありがとうございます……。」


「新人同士、一緒に最高の物語を作りましょう!!」


「いや僕、新人では……」


「細かいことは気にしない!!」


「相変わらずうるさいねぇ」


ゆったりとした声が聞こえた。


ソファに腰掛けていたメリッサ・キンレンカが、小さく手を振る。


「いらっしゃい僕たちは歓迎するよ」


「よろしくお願いします。」


夕陽が丁寧に頭を下げる。


その隣でフレンが勢いよく立ち上がった。


「待ってたよ!私はフレン・E・ルスタリオ。困ったことがあったら何でも頼って、この私が先輩として全部教えてあげるから!」


胸を張るフレン。


しかし後ろからメリッサがぽつりと呟く。


「道案内だけは任せちゃダメ」


「えぇ!?」


「三回迷子になったし」


「ちょっと! 二回だから!」


「増えてる」


ロビーに笑いが広がる。


さらに奥から、紅茶を片手に一人の青年が歩いてきた。


「お二人とも、先ほどぶりですね」


優雅に一礼するその姿は、まさに執事そのものだった。


「おい、榊ネス。そのお仕事モードやめろって言ったな?」


イブラヒムがしかめっ面でそう言うと、榊の顔の表情が解けるように変わっていく。


「ちょっと、イブラヒム支部長。仕事中はこれで行くって言ったじゃないっすか」


さっきまでとは打って変わった話し方に剣持はきょとんとしたが、これが素なのだろうとすぐに納得した。


「俺が嫌いなの」


「えー。まあいいや、とにかく二人の身の回りのことは俺が引き受けるから何かあったら本当に遠慮なく言ってね」


「あ、よろしくお願いします」


最後に、工具箱を抱えた青年がゆっくり歩いてくる。


「……魁星です。鍵屋やってますよろしく。」


短く、それだけ言って頭を下げる。


イブラヒムはその様子を見回すと、満足そうに腕を組んだ。


「これで全員だ。改めてコーヴァス支部へようこそ。これから一週間は一緒に仕事することになるからお前らの活躍を楽しみにしてる」


剣持と夕陽は顔を見合わせ、小さく笑った。


異国の地で初めて会う仲間たち。


そして、まだ誰も知らない謎の事件。


二人にとって、本当の実戦任務が今、静かに幕を開けようとしていた。

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