炎の魔人
『ハハハハハ!まかせておけ!俺の力をみせてやろう!』
力強い声が俺の頭に響き渡る。
その声とは真逆に、人形の動きはいびつなままだ。
『おい・・・大丈夫なのか?動きがおかしいぞ?』
『この体にまだ慣れてないからな。だが、この程度の雑魚を倒すなんて楽勝だ。』
そう言うと突然手足を動かし、奇妙なダンスを踊り出した。
(一体何をしているんだ?)
俺は困惑していたが、敵はそれ以上に困惑している。
「なんだぁ、こいつ?・・・何の真似だぁ?」
俺にも何がしたいのかわからない。
『だいたい・・わかった!』
ブワァアアアアア!
人形の体中から炎が噴き出した。
凄まじい熱で、近づけない。
やがて炎が人形の体にまとわりつき、体を覆っていく。
手、足、胴体、頭・・・関節部分に定着し、まるで人間の皮膚のようになる。
少しづつ姿を作っていき・・・現れたのは燃えるような赤い髪の少年であった。
『ふう、こんなものか。』
(変身した?まるで人間のようだ・・・)
『いくぞ!燃え尽きろ雑魚ども、【炎 爆】!』
人形の体中から凄まじい炎が放出され、魔物に向かっていく。
「ガアァアアアアアア!」
炎にまかれたワーウルフ達は、断末魔の叫び声を上げながらあっさり全滅した。
残ったのは力を失った黒い石だけだ。
(凄い・・・炎の魔法か?)
『なかなかいい魔力だ。だがまだまだ足りないな。』
(勝てる!後はワータイガーだけだ!)
その圧倒的な力に勝ちを確信する。
「古代人が残した人形が動くとは・・・貴様は人形遣いかぁ?」
「ああ、そうだ。おとなしく道をあけるなら見逃してやる。」
「なるほど人形遣いかぁ・・・安心したなぁ。ゴーレム遣いだったらやばかったなぁ。」
「どういう事だ?」
「ここには古代人が残したゴーレム共がわんさと保管されている・・・そんな人形とは戦闘力が段違いだぁ。なかなか強いようだが、所詮は人形・・・ただの盾にしかならんよぉ。」
たしかに巨体のゴーレムが何体も保管されていた。
もし、ゴーレム遣いならあれらを使い魔物達を圧倒したのかもしれない。
しかし・・・
「ゴーレムなんて美しくない!」
「・・・は?!」
奴はその言葉に一瞬驚いた顔をしたが、すぐに激昂した。
「それは理解出来んなぁ!戦いの道具であるこいつらはぁ、力こそ全てなんだよぉ!弱肉強食ぅ!」
その叫びが戦闘の合図となりワータイガーが鋭い爪での一撃を繰り出す。
(あんな巨体で信じられないスピードだ。)
人形も避ける事ができない。
剛腕が彼の体を薙ぎ払った・・・が吹き飛ぶことなく通過した。
つまり貫通したのだ。
(胴を真っ二つに切り裂かれた!・・・・って、え?)
ワータイガーが自分の右腕を不思議そうに見ている。
右腕が関節部から綺麗になくなっていた。
なぜか、吹き飛んだのは奴の右腕だった。
『なかなかいい一撃だったぞ。【炎 壁】で身を守られなければ危なかった。』
「グウゥ・・・・」
『お前に敬意を称し、この魔人イフリートが今持てる最大の魔法でトドメをさしてやろう。』
(魔人イフリート?!ファンタジーゲームで聞いた事がある名前だ。炎の魔人で怪力で強力な魔力を持つというとんでもない奴だ。まさか、凄い奴を引き当てたのか?)
イフリートの右手に炎が収束されていく。
赤い炎から青い炎へと・・・そして、黒い炎へと変化した時・・・一気に敵に向けて解き放つ!
『地獄の炎よ!焼き尽くせ!【煉 獄 炎】!』
凄まじい黒い炎が生き物のようにワータイガーに襲い掛かった。
しかし、敵は動かない・・・いや動けないのだ。
さっきまで殺意の塊だった魔物が、いまは怯えるだけの子猫のようになっていた。
「ウガァアアアアアアアァ!」
体中を焼き尽くされ、魔石がコトリと落ちた。
『なかなか手ごわい魔物だったな。この魔石もかなりの魔力を持っている。』
イフリートが魔石を持つとただの黒い石になった。
『魔石から魔力を吸ったのか?』
『魔力が足りないといっただろ。ならこういう物から手に入れるしかない。』
『魔力が足りないから、精霊憑依が失敗したわけではなかったのか。』
『成功したからこそ、魔力が必要なのさ。』
(そういうものなのか・・・)
『それより、あの人間逃げたぞ。』
『えっ!』
魔物遣いの男は姿を消していた。
勝ち目がないと悟るとさっさと逃げるとは、色々な意味で頭のキレる奴だ。
《空間把握》があれば位置を確認するのは簡単だが、MP0ではどうにもならない。
「とりあえず役に立ちそうな物を漁って脱出するか。」




