城塞都市ターレス
「やっと着いた・・・ここが城塞都市ターレスか。」
俺の眼の前には高い壁と頑強な門扉が立ちふさがっていた。
魔物の侵入を防ぐために、ターレスという人物の指示で建設されたらしい。
「これだと入れないぞ。どうやったらいいんだ?」
『では俺の魔法で破壊してやろうか?』
途方にくれている俺を見かねて物騒な事を言ってきた。
彼は人形に憑依した精霊【魔人イフリート】である。
『やめてくれ、俺を人類の敵にするつもりか。』
『冗談に決まってるだろう。魔法は魔力を消費する、今の俺では数人焼き尽くすぐらいしか出来ん。』
(それでも十分怖いんだが・・・)
とはいえたしかに魔物と戦った時と違い、姿がただの球体人形に戻っている。
あの姿と魔法は魔力の消費が激しく維持は難しいようだ。
『しかしこんなのを着けないといけないのか?窮屈だな。』
『我慢してくれ。その人形は遺跡から手に入れた貴重なものだ。どこで手に入れたか言及される事もあるかもしれない、隠したほうがいい。』
イフリートには魔物遣い?が残したローブを着用してもらっている。
それ以外にも奴が残した貨幣や、リヤカー?があったのは僥倖だった。
(これで何とか、遺跡で使えそうな物が何個が運び出せた。)
とはいえゴーレムなどの目立つ上に貴重な物は、面倒な事になると思い置いてきた。
(たしかこの都市に入るためには・・・)
俺は目を閉じ、記憶を探る。
少しづつだがこの体の主であるダロスの記憶が馴染んできた。
この世界の常識や言語などもわかるようになってきた。
(たしか、これで・・・)
城壁の上でさっきから俺達を監視している門番に手を振ると、手で何かサインを送って来た。
俺をそれを確認して扉の前に近づく。
すると扉ののぞき穴?が開く。
「身分証明書を見せろ。」
「これでいいですか?」
俺は首に下げている銀のプレート【冒険者資格証】を見せた。
「冒険者か・・・まあいいだろう。」
しばらくすると重い音をしながら扉が開いた。
中から武装した兵士がわらわらと出てきて俺を取り囲む。
「おかしい所がないか、チェックさせてもらう。」
さっそくボディチェックと積み荷を調べられる。
俺は抵抗することなく、大人しく従った。
(危険な物は積んでないはず・・・)
「何だ、お前も冒険者か?」
「・・・。」
イフリートは、残念ながら俺との意思疎通はできても直接話す事はできない。
俺は彼のフード取り顔を見せた。
「これは人形です。私は人形遣いなので。」
「たしかに顔を見ると人形だ。しかし精巧な造りだな。今まで人形遣いは、みんな粗末な木の人形を使っていたぞ。」
「こう見えても人形制作には自信がありまして。」
「捨て駒にする人形にここまでの物を作るのは勿体ないな。」
見た目は大柄で威圧感があるが、話せる人物だ。
彼と談笑していると、他の兵士から驚きの声が上がった。
「ザインさん!積み荷に女性が!」
「なに?!」
俺達が急いで駆けつけると、兵士達が積み荷をみて騒いでいた。
「見てくださいザインさん!こいつ女性を・・・」
ザインは女性?のフードを素早くはがすと、納得したように呟いた。
「なるほど、これは女性だ・・・女性の人形だ。」
「え・・・人形?」
「どうも彼は人形遣いらしい。しかし人間と人形を間違えるとはな・・・」
「も・・・申し訳ありません!」
ザインが睨むと兵士たちは恐縮して頭を下げる。
その態度から、彼は部下たちにかなり恐れられているようだ。
「よく出来ているな。他に変な物はないか?」
「えっ・・・あっと・・・女性に驚いたので後はまだ・・・」
「・・・もういい、後は俺が確認する。お前達は周辺を見張ってろ。」
ザインは不機嫌そうに指示を出すと、積み荷の確認をしだした。
「この本はなんだ?見たことがない文字だ・・・読めん。これはなんだ?」
「・・・それは安く売っていたので購入しました。私も読めませんが、何か価値があるかと思いまして・・・つまりは好奇心で購入しただけのものです。」
「なるほど。では大量にあるこの鉱石はなんだ?」
「これも購入した物ですよ。くず石とは言われましたが、価値があるかもしれないと思って・・・」
「フム・・・・」
(疑われてるな・・・当然か・・・。)
「ザインさん、これは遺跡の遺産である魔石ではないですか?そうだとするとこいつは盗人ですよ!」
「これは魔石ではない、俺はよく知っている。それ以外の物も遺産のリストには入ってない。お前は口を挟まずに周囲を警戒していろ。」
口をはさんだ、兵士は怒られて持ち場に戻っていったが、ボソッっと悪態をつく。
「ちっ・・・元冒険者のチンピラが偉そうに・・・」
ザインは聞こえていたはずだか、気にも留めない様子で忠告をしてきた。
「知っているだろうが、お前たち冒険者は我が国アルバーンが、魔物の森の遺跡探索をするために雇っている。好きに遺跡探索の権利が与えられているかわりに、手に入れた物は報告、提出義務がある。破った場合は罪に問われる・・わかっているよな?」
「も・・・もちろんです!わかっています!」
「なら、いい。通れ。」
「ありがとうございます!」
(門番のザインはルールには厳しいが、元冒険者で俺達に甘い。記憶通りだ・・・なんとか誤魔化せたな。)
俺は出来るだけ冷静を貫きながら門をくぐった。




