精霊憑依
《精霊憑依レベル5》精霊を人形に憑依させるスキルである。
憑依した人形は意志を持ち自分で動くようになる。
どんな精霊が憑依するのかは選ぶことはできない。
媒体とした人形の質が良ければ良いほど、精霊憑依レベルが高ければ高いほど、高位の精霊が憑依する。
(と・・・女神の説明ではそんな感じだったな。しかし、意志を持って動くのに何が憑依するのか選べないって・・・危なくないか?)
まずは小さい人形を媒体にしてみる事にした。
(小さいなら暴走したとしても、操っている大きい人形で抑え込めるはず。)
人形を地面に置いて、精神を集中する。
そして使いたいスキルを思い浮かべる。
《精霊憑依》
「精霊よ・・・我の呼びかけに答えよ!」
俺の口が勝手に動く。
すると周りの空気が変わり、人形に何かが集まっていくのを感じた。
それと同時に俺の体から力が抜けていく。
(これは、命を吸われている?いや、魔力が吸われているのか?)
俺は膝をつき、やがて倒れ込んで意識を失った。
◇◇◇
『オレノコエガ・・・キコエルカ?』
(誰だ、お前は?)
『オレヲ・・・ヨビダシタノハ・・・オマエカ?』
(呼び出した?どういう事だ?)
『オレハ・・・セイレイ・・・』
(精霊!?それならば、たしかに俺が呼び出した。)
『ナラバ・・マリョクヲ・・・ヨコセ・・・』
(魔力をよこせ?俺が倒れるほど魔力を奪ったのに足りないのか?)
『ソウカ・・・コレガゲンカイカ・・・ナラ・・・コレイジョウハ・・・』
(待ってくれ・・・助けてくれ!)
◇◇◇
「ハッ!・・・ここは?」
気が付くと、俺が倒れた場所・・・迷宮の部屋だった。
体を起こして感覚を確かめる。
まぎれもなく現実だ。
(さっきのは夢だったのか?)
気になって精霊憑依に使った人形を確認するが、動く気配はない。
先ほどの夢が精霊との会話なら、魔力不足で憑依失敗という事なのだろう。
(なんてこった・・・精霊憑依は失敗、さらにMPは0だ。)
MP0ではスキルは使えない。
つまり《空間把握》や《傀儡》も使用不可だ。
残る手段は見つからないように隠れて、スキを見て脱出の道しかない。
「おやおや、なんでこんなところに知らない人がいるんですかねぇ。ここはあなたのようなゴミが入っていい場所ではないですよぉ。」
そこにはいつの間にか魔物達を連れた男が立っていた。
この部屋で魔物を作り出していた男だ。
ワータイガーだけではなくワーウルフ達も連れている。
(戻って来たのか?しかも入口にいた魔物まで連れているとは・・・最悪だ。)
「しかし迷い込んだ冒険者に逃げられてしまうとは・・・魔物は細かい指示や判断が出来ないのが弱点ですなぁ。場所が知られた以上ここも引き払わないとねぇ。」
彼は俺がいる事もお構いなしに独り言をブツブツと言っている。
隙だらけだが、魔物達がいる以上逃げる事は難しい。
スキルも使えない以上、出来る手段は・・・
「ここを引き払うならお手伝いします。だから見逃してくれませんか?」
そう・・・みっともなくても出来る手段は、命乞いしかないのだ。
「ほうほう・・・いいねぇ!そういう奴、好きだよぉ!」
今まで俺に興味がなかった奴の眼が、真っすぐに俺を捉える。
彼の眼は綺麗だった。
その眼を見た時確信した。
・・・・・こいつとは対話が出来ないという事が。
「死ね!」
魔物の爪が容赦なく振り下ろされた。




