魔物遣い
人の反応があった部屋に一縷の望みをかけて迷宮を慎重に進む。
魔物達は入口にしか反応がなかったかので、安全な事はわかっているが・・・どんな罠があるかわからない。
(ここが人の反応があった部屋か・・・。)
俺は慎重かつできるだけ静かに、少しだけ扉を開けて隙間から内部を覗き込む。
中は明るく、思ったより広く色々な器具や本などが置いてあり、まるで実験室のようだ。
その中心に黒いローブをまとった初老の男が部屋の中にいた。
彼の手には紫に怪しく光る石が握られている。
「さて、この魔石の力はどれくらいかなぁ?」
男はその石を軽く地面に投げると、形状が変化し・・・大柄で筋肉粒々の虎顔の魔物に変化した。
体の作りは人間に近いが、体毛はまさに虎のそれである。
「ククク・・・素晴らしい力を感じる!これが古代人の遺産か・・・ワータイガー!・・・クククク・・・ハーハッハッハ!」
男は狂ったように笑い続けている。
(何だあいつは・・・魔物を作り出し使役しているのか?女神の提示した職業の中にあんな能力を持ったものはなかったぞ。)
ワーウルフ達も恐ろしい外見をしていたが、彼の使役しているワータイガーの姿はさらに恐ろしい・・・邪悪そのものだ。
「ハーハッハッハ・・・・と、そういえば迷い込んできた冒険者達の始末は終わったかなぁ・・・様子でも見てくるかなぁ・・・まあ、もう死んでるだろうがなぁ、ククク・・・」
(魔物はこいつが操っていたのか?なんてこった・・・助けてもらうどころか諸悪の根源じゃないか。よけい脱出が難しくなったぞ。)
俺は静かに扉を閉めて、物音を立てないようにその場を離れて物陰に身を隠す。
それからしばらくして、男と魔物は部屋から出てきて迷宮の入口へと歩いて行った。
それを確認すると部屋の中に滑り込むように入った。
(奴は魔石というのを使って、魔物を作り出していた。もしかして俺でも可能なのかもしれない。)
とにかくそれらしい物を探すと机の上に何個が置いてあった。
急いで、手に握り奴がやっていたように地面に軽く投げるが・・・・何も起こらない。
やはりそれだけでは駄目のようだ。
(何か呪文が必要なのか?それとも投げ方?もしかしてこれは奴が使っていた物とは違う?)
いくら悩んでもわかるはずがない。
とにかく近くの書物を見ると、見た事もない文字で書かれていて全く理解出来ない。
(くそ・・・駄目だ、だめだ、ダメだ!)
俺の心は絶望感でいっぱいだった。
しかし落ち込んでいる時間はない。
とにかく他に何か使えるものがないか、部屋の周りをぐるっと見回すと3mぐらいあるごついロボット?のような物が真っ先に目についた。
(なんだこれは・・・金属製の・・・まさかこれがゴーレムか?)
ゲームにはウッドゴーレム、ストーンゴーレムなどがいるが、これは言うなればアイアンゴーレムと言ったところなのだろう。
これを動かす事が出来れば、奴らに対抗できそうだ。
さっそく《傀儡》のスキルを発動させてみる。
(《傀儡》のスキルはダロスの記憶で見ていたので感覚は覚えている・・・いけるはずだ。)
俺は手から魔力を放出しゴーレムを操ろうとするが、人形を動かした時と違って反応がない。
(これは人形ではないのか?)
判断基準はわからんが、ゴーレムは人形とは違うようだ。
他にも壁には金属で作られた多種多様なゴーレムがいた。
そのなかに、金属製だが球体人形に近い外見の物があった。
身長160cmの男性型と180cmの女性型の2体である。
(人間に近い形状・・・これなら人形にカウントされる可能性があるかも。)
もう一度精神を集中して《傀儡》のスキルを発動させてみる。
すると、2体の人形は抵抗なく直立し歩き出した。
操作に疲れる事もなく、滑らかな動きだ。
おそらくは《傀儡レベル5》による操作技術の上昇だろう。
ただこれで魔物に勝てるかは疑問だった。
いくら思うように動かせても、俺は戦闘技術などない。
それに人形をおとりにしたとしても、あの魔物の数では逃げきれないだろう。
(となるとスキル《精霊憑依》で意志を持って好きに動いてもらったほうがいいか。)
悩んでいる時間もない。
さっそく試してみる事にした。




