ダロス
「ハッ!」
俺は目を覚ました。
体中汗びっしょりだ。
けだるい体をゆっくりと起こして、深呼吸・・・体と心を安定させる。
「自分が死ぬ悪夢を見たらこうもなるよな・・・。」
夢の中で俺は背中から怪物に切られて激痛と恐怖の中で死んだ。
ゲームでは何回も死んだことはあるが、現実ではそうはなりたくはない。
「いや、待てよ?俺って死んだはずだよな・・・ちゃんと思い出そう。」
とにかく俺は記憶をたどっていく事にした。
俺の名前は上人 形介 35歳。
底辺フィギュア作家である。
イベントの帰りの電車で倒れて死んだ。
その後女神と会って異世界転生をする事になった。
なんか色々思い出してきた。
「となると、ここが異世界なのか?」
周りを見回してみるとどこかで見たことがある薄暗い部屋である。
悪夢で俺が死んだ場所と完全に一致する。
まさかと思い、背中を確認すると傷も痛みもない。
ただ服は切り裂かれており、床には赤い血だまりがあった。
「なんだ?どういう事だ・・・あの夢は現実で俺は死んだのか?いや・・・死んだのはダロスという男で俺ではないはず・・・」
夢でない事を確認するため、次は自分の服装を確認してみると・・・ダロスと全く同じであった。
(異世界転生・・・夢で見た・・・ダロス・・・同じ服装・・・人形遣い・・・そして今の現状・・・)
その時、俺の頭の中で何かが繋がった。
「つまり俺は異世界のダロスという人形遣いに転生したという事か!」
確かにそれなら、今の姿も納得がいく。
さっき夢だと思ったのもダロスの最後の記憶だったのかもしれない。
「しかし、そうだとすると今の状況はあまりにも危険じゃないか?」
現状を整理すると、俺はこの迷宮に入り殺された。
そして仲間からは捨て駒にされたと言っていいだろう。
つまり、ここから自分一人の力で脱出しなければいけないという事になる。
「なんでいきなりハードモードなんだ、あの女神め・・・特殊能力をくれたんじゃないのか?」
とにかく何か方法はないか、女神とのやり取りを思い出してみる。
◇◇◇
「女神様・・・転生でお願いします。」
女神はパチパチと手を叩いた。
「素晴らしい!歓迎いたします。では、職業は・・・」
「人形遣いでお願いします。」
「なるほど・・・では職業の説明をさせていただきます。」
その後詳しい説明を受けたが下記の通りである。
・職業にはレベルがあり、複数一緒に鍛えられる。
レベルの限界は30である。
・レベルが上がるたびにスキル(特殊能力)を得られる。
・レベル上昇によって能力値が上がる。
複数一緒にあげた場合は全ての能力上昇が加算される。
・下級職、中級職、上級職がある。
中級職は下級職2種のレベルを15に上げる事により、転職出来る。
上級職は中級職2種のレベルを15に上げる事により、転職出来る。
・レベルを上げる時の経験値は下級職→上級職の順に高くなる。
ただ、レベルによる能力上昇値もその順に高くなる。
大きくまとめるとこんな感じらしい。
「では、あなたには特別に最初から上級職レベル15から始める事が出来ます。」
「え・・・上級職?」
「そうです。聖騎士、将軍、隠密、賢者・・・強力な能力を持った上級職になれるのです。そのために必要な下級職と中級職も選ぶことが出来ます。」
「と・・・なると下級職である人形遣いの系統の上級職とかありますか?」
「同じ系統といえば、中級職ならゴーレム遣い、上級職なら召喚士となりますね。」
「ゴーレム遣いはわかるが、召喚士が同じ系統なのか?」
「最終的には人形遣いやゴーレム遣いは無機物に精霊などを憑依させる・・・召喚士は悪魔や天使などをホムンクルス(人造人間)などを媒介に受肉させる・・・つまり同じ系統です。」
(ゴーレム、ホムンクルス・・・フィギュアとは離れていくな。強いのかもしれないが、あまり興味がない。)
「申し訳ないが、俺がなりたいのは人形遣いだ。」
「しかし人形遣いは下級職のなかでも弱いですよ?よろしいのですか?」
「別にいい。そのかわり精霊を人形に憑依出来るレベルまで欲しい。」
「わかりました。上級職レベル15になるまでの経験値を下級職にすべて振り分けますと・・・レベル29となりますね。精霊憑依がレベル15なので十分ですね。」
「ではそれでお願いします!」
「わかりました。後はこの腕輪を授けます。」
「腕輪?」
彼女の手が光るとそこに腕輪が現れる。
見たことがない文字が刻まれている、装飾のない白い腕輪だ。
「この腕輪の力であらゆるものを数値で確認する事が出来ます。あまり頼りすぎないように。」
「数値で確認?どういう事だ?」
「第二の人生・・・楽しんでくださいね。」
彼女は質問に答える事もなく、俺は何か強い力でどこかに送られた。




