古代の迷宮
薄暗い部屋で4人の男達が床に座り込んで頭を抱えていた。
「古代の迷宮を偶然見つけた時は運がいいと思いましたが・・やめるべきでしたか。」
「ま・・・魔物がいるなんて・・・アルダン、お・・お前が大丈夫だというから・・・」
アルダンと言われた大柄な男が反論する。
「うるせーよ!お前らも納得しただろうが!俺のせいにするんじゃねーよ!」
その怒鳴り声に他の3人は萎縮する。
どうもこの男がリーダー格のようだ。
「とにかく迷宮から脱出しねえとなあ・・・」
「ま・・・魔物共が入口を固めてるから、に・・・逃げれねえ・・・」
全員が狼狽える中、ローブを着た優男は冷静に意見をする。
「もう、誰かが敵を引き付けている間に脱出するしかないですね。」
アルダンはそれを聞いてわかったとばかりに、一番気弱そうな若い男に命令した。
「おい!ダロス、お前がおとりになって魔物達をおびき寄せろ!」
「え・・・え?」
今まで押し黙っていた男は突然の指名に狼狽する。
「なんで僕がおとり役を?」
「お前は人形遣いだろ。人形を使って敵を引き付けるのは得意だろ。」
「でも魔物と戦う力なんてないから、こ・・・殺されちゃうよ・・・。」
「それは何とかしろよ!それがお前の役目だろ!なあ!そうだろ、お前ら!」
その提案に他の二人は賛同する。
「それが適任ですね。」
「そ・・・そうだ!お前は戦闘で役に立ってないんだから、そ・・それぐらいしろよ!」
どうも彼の味方は誰もいないようだ。
「そ、そんな・・・。」
「とにかくこの部屋を先に出て、入口の敵を引きつけろ!俺達が脱出するまで時間を稼げ!」
アルダンは強い言葉で命令する。
後の二人も先に行けと目で指示する。
「わかった・・・逃げるまでの時間稼ぎでいいんだよね?」
「そうだ、わかったら先に行け!」
ダロスは背負っていた人間大の大きさの木の関節人形をその場に置いた。
彼が精神を集中し、指を動かすと人形は直立し歩き出す。
これが人形遣いのスキル『傀儡』である。
このスキルは魔力の糸を指から放出し、人形を操る。
動きを細かく操作しなければいけないため、操者はほとんど行動出来ず、目に見える範囲までしか動かせない。
高度な上に限定的な事しか出来ないので、人形遣いは不遇職と言われる所以である。
パーティ達は人形を先頭に入口へと薄暗い迷宮を進んでいく。
恐る恐る進んでいたが、魔物と出会う事もなく入口付近へとたどり着いた。
ホッとしたのも束の間・・・入口の階段がある広場には魔物達が5匹待ち構えていた。
狼の顔をした魔物・・・ワーウルフである。
危険度ランクCで、俊敏で殺傷能力の高い爪での攻撃は皮鎧など易々と切り裂いてしまう。
俺達のように冒険者ランクEの者達においては、1体相手に全員でかかって何とか勝てるランクの魔物である。
「迷宮内を徘徊してないと思ったら、ここに集中していたか・・・。ダロス、さっそく人形を使って誘導しろ。」
「あの数を人形一体でひきつけるなんて無理だ。殺される・・・」
「私達は隠れていますのでお願いします。」
彼らはダロスの言う事など気に留めずに、離れたところに身を隠した。
どちらにしろ、もうやるしかない。
通路から指を動かし人形を広場に歩かせる。
ワーウルフ達は一斉に人形を見るが、攻撃はしてこない。
(どうした・・・なんで動かない?)
すると突然、通路で様子を探っている僕と奴らの目があった。
もちろん偶然ではない・・・人形ではなく、それを操っている人間に気付いたのだ。
(まずい!逃げないと!)
操っていた人形を放り出し、一目散に逃げだす。
とっさに思いついた場所・・・退避していたあの部屋に向かって。
心臓が張り裂けそうになるまで全力で走る、もう後ろを見ている余裕もない。
(扉が見えた・・・後少しだ!)
扉を開けて部屋に入ろうとした瞬間、背中に激痛が走った。
だが、力を振り絞って素早く中に入り込み扉を閉めると・・・そのまま倒れ込んだ。
(く・・・痛い・・・熱い・・・)
とにかく背中が痛い。
少しずつ意識が朦朧としてきた。
その時ある確信が頭をよぎった。
(ああ・・・俺は・・・死ぬんだ・・・。)
そして意識が途絶えた。




