異世界の女神
「どこなんだここは?」
俺はなぜか真っ白い空間にいた。
周りには何もない。
いや・・・周りどころか自分の姿すらない。
ただ、なぜか自分の体の感覚はある。
(なぜこんな所にいるんだ?たしか俺は電車で倒れて・・・)
「よくぞ来られました。」
声の方向を見ると何かがいる事はわかるがぼやけてよく見えない。
「誰だ?」
「私は・・・女神です。」
「女神?」
意味がわからないが、とにかく姿をよく確認しようとして目を凝らすと、少しづつ姿が見えてきた。
金髪碧眼の美しい顔立ちに、白い翼を持った女性だ。
まさにファンタジーゲームに出てくる女神そのものだ。
「本当に女神だ。という事は、もしかしてここは天国か?つまり俺は死んだのか?」
「残念ながら・・・・。」
いきなり死んだと言われても実感がない。
でもそれで良かったのかもしれない、この先生きていても明るい未来がないと予想出来るからだ。
「それで、これから俺はどうなるんだ?」
「あなたには二つの道があります。」
「二つ?」
「一つは存在自体が消え、無となる道です。」
「無?・・・意志すらなくなり消滅するという事か?」
「はい。」
というか死んだら、そのまま肉体は機能を停止し、意志などなくなる・・・当然の事だ。
それ以外の道があるとは思えない。
「二つ目は別の世界・・・つまりあなたからしたら異世界に転生して第二の人生を歩む道です。」
「・・・そんな事が出来るのか?」
「ええ、もちろん。しかも生前の記憶を持ったまま別人として、転生する事が出来ます。」
「生前の記憶を持ったまま?」
「さらに特殊な力も与えます。」
「特殊な力まで?」
彼女が両手を広げると空中に膨大な文字が浮かび上がった。
その文字列には心当たりがあった。
「戦士・・・魔術師・・・・ファンタジーゲームでよくある職業だな・・・。」
「そうです。よくわかりましたね。」
俺はアニメやゲームが好きでフィギュアを作っていた人間である。
ファンタジーゲームでよくある職業を知らないわけがない。
「つまり異世界は剣と魔法の世界という事か?」
「そうです。異世界では基本的には魔力がエネルギーとなっており、それを利用した文化が発達しています。」
「胡散臭い話だな。俺達の世界のゲームや小説に似た世界なんて現実に存在しているわけがない。」
「知らないものは想像すらできません。それなのに剣と魔法の世界を題材にしたものがある・・・これはどういう事でしょうか?」
(どういう意味だ?まさか・・・現実に異世界があって、死ぬ事によって互いの世界を行き来しているから・・・なのか?)
想像の域を出ないが信じがたい話だ。
「とにかく、あなたはどちらの道を選ぶのですか?」
どうにも胡散臭いが、ファンタジーゲームが大好きな俺としてはその世界に行ってみたい気持ちはある。
ただ、その世界が前の世界より酷い可能性は大いにある。
それにイマイチ彼女の意図がわからない。
「その世界は・・・」
「これ以上の質問には答えられません。選択をお願いします。」
ニコニコとしているが、これ以上話さないという強い意志を感じた。
とにかく選択をしろという事らしい。
(しかし、もう一度人生をやり直して・・・どうする?)
俺は生きてきていい事がなかった。
唯一の楽しみはフィギュアを作る事だけだったが、俺には才能がなかった。
記憶を継いだままなら俺は自分以外にはなれない。
変わらない人生を送るだけなら意味がないのかもしれない。
(それなら、無となる事を選ぶか・・・それとも他の目的のために生きるか・・・)
一応、職業を確認してみる。
ゲームでよく見た職業が並んでいる。
(ん・・・これは?)
『人形遣い』
フィギュアと関係ありそうな職業だ。
「この人形遣いとは?」
「・・・人形を操る下級職です。人形を先行させて危険を回避したり、おとりにしたり出来ます。強くはないですが便利な職業です。」
「フィギュア・・・いや、人形を作ったりする職ではないのか・・・。」
「作る必要はないですが、それは自由です。それに・・極める事で精霊を人形に憑依させてある程度の自我を持たせることも出来ます。」
「それは、凄い!」
自分が作った物が意志を持って動く・・・稼動フィギュアの究極系である。
その誘惑に勝てる者などいるだろうか?
「女神様・・・転生でお願いします。」




