底辺フィギュア作家
(暇だなあ。)
こう思うのは今日は何回目だろうか。
俺の名前は上人 形介35歳・・・フィギュア作家だ。
今日はフィギュアのイベントにディーラーとして出展している。
入場して長机に自分の展示物を飾った時は期待に胸が膨らんでいたが・・・残念ながら何もないまま昼過ぎになり、今はただただ暇である。
(こりゃ今回も成果0だな。)
後は時間を過ぎるのを待つだけである。
「あの・・・、展示しているのこの女性キャラは〇〇〇のカードゲームのキャラですか?」
話かけてきたのは細身の若い男性だった。
好きなキャラがプリントされているTシャツを着ており、こういう場所に相応しい正装?に身を包んでいる。
「えっと、その・・・忙しかったですかね?」
「いやいや、そんな事はないですよ。どの作品の事ですか?」
「これなんですけど?」
彼の指差した作品は、俺の作品の中でも好きなアニメのキャラを製作した自信作である。
もしかして彼の好きなキャラに似ている要素があったのかも知れない。
「ああ、これは〇〇〇のアニメキャラで、君の言うキャラとは違うんだよ。」
「そうなんですか・・・それは残念です。ありがとうございました。」
彼は礼をして、遠巻きに見ていた小太りの男性と合流してなにやら話していた。
「買わなくていいのか?・・・のキャラは全部買うって・・・」
「・・・のキャラじゃなかった。それにあのクオリティだと・・・」
(クオリティ・・・か。)
悪い人達ではないのはわかっているのだが、ああいう声が聞こえてくると怒りと共に自分が情けなくなってくる。
(10年間、俺は何をしてきたんだろうなあ・・・。)
俺はアニメやゲームの世界のキャラクターを表現したいと思い・・・フィギュアを我流で製作してきた。
情熱だけはあり、作り続けていたら上手くなると思っていた。
だが残念ながら、基礎も何もなく・・・ただ漫然と作っていて上手くなるはずがない。
さらに最近はAIや3Dプリンタの普及によって、誰でも簡単に作れるようになり、俺のレベルでは全く追いつけなくなってしまった。
だからといって、そういう物に頼るのは金儲けの為だけに作る気がしてやる気は起きなかった。
(今日は早めに片付けて帰ろう。)
◇◇◇
帰りの電車の座席に座って揺られていると、酷く虚しい。
特に俺は人と上手く話す事が苦手で、イベントには出展しているが知り合いは誰もいない。
そのため帰りはいつも一人である・・・虚しい。
(しかし酷く眠いな・・・今回も徹夜してしまったからなあ。)
作品を作るのには時間がかかる。
特に俺は手作りなので時間はいくらあっても足りない。
だが、最近は年のせいか無理をしては危険という事も把握している。
特に今日は頭痛が酷く、心臓の鼓動が速い。
(早く帰って寝よう。まずいかもしれない・・・・)
そう思った途端、心臓が抑えつけられる感覚になり、苦しみに襲われる。
俺は電車の椅子から転げ落ち、地べたでのたうち回った。
(く・・・苦しい・・・くるしい・・・くる・・・)
俺はあまりの苦しみに意識を失った。




