深淵の迷宮 魔力障壁
「ホムンクルスの反応が確認出来ません。」
俺は消えたホムンクルスを《空間把握》でフロア全体を探索したが、見つける事が出来なかった。
「となると考えられる可能性はこのフロア以外に転移したか、それとも・・・」
ライマンは魔力阻害によって確認できない場所の壁を軽く叩きながら話した。
「・・・この壁の先に転移したって事か?」
「可能性はあります。」
「という事は、クリスタニア様もこの先に?」
「あのホムンクルスが知っていたという事は・・・ありえますね。」
「まいったな・・・それだと、この先は転移でしか入れないって事か?」
「絶対とは言えませんが・・・今までの事を考えると、その可能性は高いかと。」
それを聞いて全員が押し黙った。
まず、その考えを確認する方法が難しいからだ。
「しかし、クリスタニア様がこの壁の先に転移したのなら、私達が転移の罠に入れば、行きつける可能性があるのではないか?」
「それはそうでしょう。ただ、行きつくまで壁に転移して死ぬ可能性もありますよね。」
「そうやって死んだ冒険者の話は聞いた事がある。得策とは思えないな。」
「なら・・・この壁を破壊すればいい。」
「!」
(壁を破壊する?そんな事考えた事が無かったな・・・たしかに可能ならあり得ない考えではないのか?)
ゲームをやっている身では絶対思いつかない考えに驚いた。
たしかにゲームで、乗り越えたり、登ったりすれば何とかなりそうな所がよくあり、ツッコミどころ満載の時もあるが、それはルールだから仕方ないと思っていたが・・・そんなルールは現実にはない。
「バカ女が・・・そんなのは誰でも思いつく。今まで迷宮の壁を破壊しようとした冒険者が腐るほどいたが、不可能だった事ぐらい知っているだろう?」
「私は試したことはない。する価値はある。」
そう言って、突然壁に盾を構えて体当たりをした。
突然の行動だったが、その後の轟音を防ぐために反射的に耳を塞ぐ。
ビィィイイイン!
しかし、思ったのとは違い拍子抜けする音が出たと思ったら、ガーネットは吹き飛ばされていた。
俺は思わず駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「くっ・・・問題ない。やはり、駄目か・・・傷一つつかないとは・・・」
彼女が言うように壁を見ると、傷一つついていない。
「何だこの壁・・・どうなっているんだ?」
「魔術障壁だな。つまり、攻撃を跳ね返す力を持った魔術で作られた壁・・・のようなものだ。」
「魔術障壁・・・では破壊は不可能という事ですか?」
「さあな・・・構造がいまだに不明だから、何とも言えないが・・・無理だろう。」
全ては暴力では解決・・・はしなかったようだ。
『おい、敵だ。』
『何!』
カチャ・・・カチャ・・・
音が聞こえた方向に全員戦闘態勢を取る。
カチャ・・カチャ・・・
音の主は少しづつ近づいてきて、やがてはその姿を現した。
(オートマタ―か。)
想像通り、このフロアで見飽きるぐらい見たオートマタ―の姿だった。
しかも一体だけである。
『さて、俺がすぐに始末してやろう。』
『まて・・・様子が変だ。』
奴は俺達を凝視しているが、今までのように襲い掛かってくる様子がない。
『・・・たしかに今までの下級精霊とは違う・・・何かの意志を感じるな。話してみたらどうだ?』
『話すといっても・・・そうか、スキル《意思疎通》があったか!』
「ガーネットさん、ライマンさん、攻撃は少し待って下さい。人形遣いの能力で話しかけてみます。」
「そんな事が出来るのか?」
「声は出さないので、そのまま動かないでください。」
「・・・わかった。」
俺は奴にイフリートと同じように《意思疎通》で話しかけた。
『俺の名前はダロス、人形遣いだ。今、俺の能力で話しかけている。』
すると奴の体がビクッっとしたのがわかった。
(伝わっているようだな。)
『何か俺達に用があるんじゃないのか?何か話したいのなら、内容を話す感じで思い浮かべてほしい。それで俺に伝わるはずだ。』
『・・・こう・・・でしょ・・・うか?』
『ああ、聞こえている。もっと、話しかける感じで・・・』
『聞こえていますか?』
『ああ、聞こえている。そのまま・・・』
『なるほど、こんな感じですか。わかりました、ありがとうございます。』
(見かけは他のオートマタ―と同じだが、言葉遣いが丁寧で凄く知的だな。話か通じそうだ。)
『さて・・・もう一度聞こう。俺達に何の用なんだ?』
『私は【エル】様の使いできました。あの方が呼んでおられるので、一緒に来てくれますか?』




