深淵の迷宮 エル
俺達はホムンクルスのに慎重に近づいていった。
奴は何をするわけでもなく、ただ俺達を見ているだけだ。
(奴は完全に丸腰だ。何もできないはず・・・)
他の者達もそう考えているらしく、武器を構えることなく近づいている。
それとも捕獲を考えているからだろうか?
「・・・ワタシノ・・ナマエハ・・・エル・・・」
(言葉を使って名乗った?!)
突然の事に俺達は顔を見合わせた。
「今聞いたよな・・・俺達の言語で話した?」
「たしかに名乗った。」
他の二人にも言葉に聞こえたという事は、俺の勘違いではないようだ。
「・・・クリスタニア・・・ノ・・・ナカマ?」
(まぎれもなく言葉を話している・・・しかもクリスタニアの名前がなぜ出てくる?)
「クリスタニア様の事を知っているのか?話せ!」
まるで掴みかからんばかりに、相手に詰め寄るガーネット。
「・・・クリスタニアのこと・・・しってイル・・・」
「ならば、知っている事を全て教えろ!」
鬼の形相で迫っているが、エル?は涼しい顔だ。
「ホントウにナカマか?なまえ、オシエロ・・・シンヨウできない」
「名前?まあいい・・・私はガーネットだ。」
「ガーネットか・・・お前は?」
「フン・・・僕はライマンだ。」
「お前は?」
「俺はダロスだ。隣のこいつはイフだ。」
「なるほど、なるほど・・・それなら・・・」
その後も色々な質問をしてきた。
俺達の年齢や好きな物・・・どちらかというとくだらない質問が多く、答えても問題なさそうな質問ばかりだった。
「いいかげん、クリタニア様の位置を教えろ!」
「わかった。ただ、オシエタとたん、コロされてはコマる。もうスコしウシろにサがってくれないか?」
驚いた事に、話している間に奴の言葉はかなり流暢になっていた。
理解力が尋常ではない。
「わかったが、変な気は起こすなよ?おかしい素振りを見せたら、叩き切るからな。」
「ああ、おマエたちとタタカうつもりはない。」
その言葉が本当かわからないが、丸腰では何もできないだろう。
それに情報という切り札を相手が持っている以上、こちらに選択肢はない。
俺達はおずおずと5mほど後ろに下がった。
「では・・・〇・・×△・・・・〇」
(なんだ・・・理解出来ない言葉・・・いや呪文か!)
全員が危険を感じ、身を固くして戦闘態勢に入る。
だが、その姿をあざ笑うかのように、奴の姿はかき消えた。
「消えた?」
「いや、姿を消す魔術か?」
焦って周りを警戒するが、何も起こる気配がない。
「どういう事だ?」
「おい、ダロス・・・お前の能力で確認してくれ。」
「ああ・・そうか!」
突然の事に自分の能力を忘れていた。
精神を集中して《空間把握》で周囲を確認する。
反応がない。
「見つけたか?」
「いえ・・・周囲にはいません。」
「本当なのか?」
そう言われると、何かの特殊能力で俺の能力を阻害している可能性がある。
もう一度念入りに、魔力を周囲に飛ばして確認する。
反応がない・・・少しづつ範囲を広げてみても確認できない。
「範囲を広げてみましたが、やはりいません。俺の能力を阻害している可能性もあるので絶対とは言えませんが・・・」
「いや・・・私の感覚でも周囲に気配を感じない。」
「という事は・・・まさか転移魔術か?」
転移魔術・・・転移の罠があるぐらいだから存在していてもおかしくはない。
ゲームでも存在しているが、かなり高レベルの魔法である。
「しかし、転移魔術なんてそんな簡単に使えるものなんですか?」
「少なくとも人類では、使える者は存在しない。ただ古代人は使っていたらしい・・・なら古代人によって生み出されたホムンクルスが使える可能性はなくはない。」
「クッ・・・これでまた手がかりがなくなった。」
「いえ・・・これでクリスタニアが生きてる可能性が出てきました。とにかくあのホムンクルスを探しましょう。絶対何か情報を持っているはずです。」




