深淵の迷宮 誤算
俺達はフロア内の魔力阻害地域へと来ていた。
目の前には壁が立ちふさがり、物理的に中に入れない。
「ここがそうなのか?もしかしてただの行き止まり・・という事はないだろうな?」
「ただの行き止まりなら魔力を阻害する効果があるのはおかしい。この壁の先に何かあるはずです。」
しかしぱっと見、入口らしきものはない。
(自分で言っておきながら、自信がなくなってきた。もしかして、このフロアだけ形が違うだけなのだろうか?)
まずは《空間把握》で簡単に周囲の安全を確認する。
全ての敵位置を把握したいが、そんなに時間はかけていられない。
「この周囲には敵はいないようです。手分けして探しましょう。」
俺達は各々散って、壁を確認し始めた。
『おい、俺も探すのか?』
『いや・・・周囲の警戒を頼む。』
『わかった。その方が楽しそうだ。』
◇◇◇
数十分は経っただろうか・・・壁の周りを確認して、触ったり叩いたりしたが、やはりただの壁である。
(何もない・・・いや何も見つけられないだけなのか?)
もし俺がゲームの盗賊みたいに隠し扉を探す能力があったのなら、何かわかるかもしれないが・・・何をしていいかまったくわからない。
これでは無駄に時間が過ぎていくだけである。
他の2人も同じようで、ガーネットはとにかく無駄に壁を叩いたり蹴ったりして、扉を探すというよりは完全な八つ当たり状態。
そしてライマンは途中からずっと座り込んで考え込んでいる。
(無理もないか・・・俺達には迷宮を調査する能力がない。何も知識がない人間がいくら三人集まっても文殊の知恵なんて出るはずもない。)
俺達はとりあえず集まって、互いに何か気付いた事を言い合う事にした。
「みなさん、扉は見つかりましたか?いえ・・・とにかく何か気付いた事はありますか?」
「見つかっていたら、話している。何もない。」
「僕もそうだ。正直ただの壁にしか見えない、何かあるようには思えないな。」
(俺にも何かあるようには見えない。)
どうしようかと悩んでいると、イフリートが話しかけてきた。
『何か聞こえないか?』
『聞こえる?』
耳を澄ませてみると、たしかに何か音がする。
カチャ・・・カチャ・・・
(オートマタ―・・・か?位置を確認して退避するべきか?)
俺はさっそく《空間把握》を発動・・・
カチャ・カチャ・・・カチャ・・・カチャ・・・
カチャ・・カチャ・・・カチャ・・・
(なんだ・・・音が増えて・・・これは・・・マズイ!)
「周囲にオートマタ―反応を多数確認・・・完全に囲まれている!」
「何!」
「オートマタ―だと!」
ガチャ!・・ガチャ!・・ガチャ!
急激に大きな音を立てて、両横の通路からオートマタ―が湧き出てきた。
(反応が鈍いオートマタ―とは思えない動きだ。しかも集団で・・・まさか・・・奴がいるのか?)
集団の中に奴の・・・道中であったホムンクルスの姿があった。
「〇・・・△・・×」
またわからない言葉を話している。
おそらくオートマタ―に指示をしているのだろう。
奴らは警戒しているのか、動いてこない。
(右の通路からはオートマタ4体、左の通路からはオートマタ―3体とホムンクルス1体・・・)
『イフリート!右の通路の連中を頼めるか!』
『簡単だ。』
イフリートでも4体は厳しいかもしれないが、任せるしかない。
「人形に右の奴らは任せます。俺達はホムンクルスの方を。」
「では、私が前に立って奴らの足を止める。後は頼んだ。」
そう言うとガーネットは雄たけびを上げながら敵に向かって駆けだした。
「ウォオオオオオオオオ!」
単独で勝手に突っ込んでいく姿を見て、俺はあっけにとられた。
(何を勝手な事を・・・一人で勝てる相手じゃないのに・・・)
「バカ女が!一人で突っ込みやがって!」
「ライマンさん、魔術で援護を」
「今やっている!」
よく見るとライマンの両手に目に見えるほどの魔力が集まっているのがわかる。
「この魔術は時間がかかる。なんとか時間稼ぎしてくれ。」
(好き勝手動いて・・・こうなったら時間稼ぎをするしかない!)




