深淵の迷宮 勘違い
俺はショックを受けて茫然としていた。
これからどうすればいいのか考えなければいけないのに、思考が動かない。
(クソッ!もう失敗じゃないか・・・。オートマタ―と違う反応を勝手に勘違いして・・・)
その俺の様子を見て、心配そうにライマンが話しかけてきた。
「どうだ・・・足音の連中はもう行ったのか?」
「え・・・ああ、行きました。この周辺に敵はいません。」
「じゃあさっそく進もう。」
俺はその言葉に対して少しつまりながら、正直に自分の失敗を話した。
「あ・・・いえ・・・その・・・実は救出相手だと思っていたのは、全然知らない人間でした。」
「何?僕たち以外に人間がいたのか?」
「ええ、なぜか裸の少年・・・いや少女なのかわからない姿だったので、人間かは定かではないです。それにオートマタ―と行動を共にしていました。」
「裸の少年とも少女ともわからない人間・・・まさか、ホムンクルスじゃないのか?」
「ホムンクルス?」
(ホムンクルス・・・たしか召喚士が天使や悪魔を憑依させて使役する人造人間・・・と言っていたな。)
俺は女神から教えてもらった事を思い出した。
「まさかあれがホムンクルス?」
「見ていないが、おそらくそうだろう。奴らは古代人の道具として作られた存在。子孫を残す能力は必要ないからな。」
「という事は・・・あれの確保が今回の目的ですか?」
今回深淵の迷宮に来た目的はホムンクルスの確保である。
ホムンクルスは古代人が使役するために作り出した人造人間・・・つまり、古代人の遺跡から確保するしかなく、今まで発掘したのは数十体程度しかいないらしい。
召喚士には喉から手が出るほど欲しい存在・・・つまり召喚士であるアーシャが今回の依頼人である。
「どこかに安置されていると思ってました。まさか動き回っているとは・・・」
「リーダーとして、思考能力のあるホムンクルスに遺産を守らせている例は聞いた事がある。オートマタ―は思考能力が低いから、奴がリーダーとして指示している可能性は高いな」
そこでふと、もう1つの反応について疑問が湧き出した。
(まさか・・・止まっていた救出相手もホムンクルスの可能性があるのか?)
俺がその考えに恐怖した時、イフリートからの通信が入った。
『ダロス、今いいか?』
『!・・・イフリート、大丈夫なのか!』
『大丈夫とはどういう事だ。俺がやられるわけがないだろう。』
『今どこだ?!』
『何を興奮している?今、救出相手のガーネットと合流した。』
(なんだ・・・俺の杞憂だったか。)
『危険はなかったか?』
『ああ、何もない。つまらない限りだ。』
『ガーネットも問題ないか?』
『問題ない。そちらは上手くいったのか?』
『いや・・・問題が生じた。とりあえずそちらに合流するから、待機しておいてくれ。』
『出来るだけ早く来てくれ。退屈だ。』
(ひとまずは安心だ。しかし、それだとクリスタニアの反応がないという事になる。)
反応がない・・・つまり、死んだ・・・という最悪な考えが頭をよぎった。
黙って考え込んでいる俺に、焦った様子でライマンが話しかけてきた。
「これからどうする?」
「俺の人形がガーネットと合流したようです。俺達も合流しましょう。」
「それは良かった・・・クリス嬢の事は?」
「わかりません・・・反応を感じません・・・もしかしたら、もうすでに・・・」
「・・・お前の能力不足も考えられる、まだわからない。」
彼は俺の能力を信じていないのか・・・それとも信じたくないのか・・・どちらにせよ俺を責める気はないようだ。
「とにかく、今オートマタ―と接触すれば危険だ。早く合流するべきだな。」
俺達は、奴らと接触しないように合流を目指すべく進みだした。




