深淵の迷宮 遭遇
俺達は薄暗い通路を素早く慎重に進む。
すでに【光明】の魔術は術者が消えた事で維持できなくなり、消えてなくなってしまった。
視界は悪くなったが、敵に見つかりにくくなった事を考えればいいのかもしれない。
救出相手の位置は最短ルートを通ればそれほど遠くない場所にいる。
ただ、空間転移の罠を避けていくと必然的に遠回りをする事になってしまう。
(相手が動き回っている以上、出来るだけ早くいかなければならないが・・・空間転移の罠に引っかかるわけにはいかない。この先の十字路を右に曲がればもうすぐだ。)
カチャ・・・・カチャ・・・
音がした。
小さな音だが、神経が敏感になっている俺の耳には十分すぎるほど響いた。
まだ遠いが、俺が進もうとした通路の先からである。
(遭遇すると全滅だ。後ろの曲がり角に隠れてやりすごそう。)
オートマタ―に遭遇した時に感じたのは、彼らは鈍いという事だった。
彼らが何によって俺達を認識するのかはわからないが、少なくとも前の戦闘ではかなり近づいてから攻撃してきた。
(おそらく、彼らに憑依した精霊たちのレベルがかなり低くく、人間より認識レベルが低いのだろう。)
もちろん想像ではあるが、人形遣いとしての能力のせいか確信めいたものを感じる。
俺は後ろについてきているライマンに手で合図しつつ、素早く隠れて通り過ぎるのを待つ。
カチャ・・・カチャ・・・
音が大きくなって二人に緊張がはしる。
俺は少しだけ顔を出して様子を窺う。
薄暗い中、曲がり角から3体の人影が現れた。
(やはりオートマタ―か・・・ん?いや・・・まさか?)
薄暗いとはいえ、目が慣れてきたおかげでハッキリと判別できた。
だからこそオートマタ―出ない物が混じっていた事は間違いない。
2体は間違くオートマタ―・・・ただ、もう一体・・・いやもう一人というべきか。
(あれは人間か?)
混じっていたのは少年・・・いや少女だろうか、いや、おそらくはどちらでもない存在。
なぜなら、何も着用していない状態・・・裸だったからだ。
そして女性としてのふくらみも、男性としての印もついていない。
長いボサボサ髪の小汚い姿で、ただただオートマタ―の後ろについて歩いている。
(なんであんな子供が・・・しかも裸で?・・・それに人間なのにオートマタ―と一緒に行動している。いったい何者だ?)
彼らの足が止まった。
子供の顔がグルンとこちらを向く。
「!?」
俺は慌てて顔を引っ込めた。
(気付かれた?)
声が聞こえてきた。
「・・・〇・・△・・・%」
何かを言っているが、まるで理解できない。
ただ、何かしらの言語のようだ。
(何者かはわからないが、見つかるとヤバイ事だけはわかる。)
俺はとにかく息を殺して、相手が立ち去るのを待った。
カチャ・・・カチャ・・・カチャ
再び歩き始めたが・・・どんどん音が小さくなってやがて消えていった。
(行ったのか・・・しかし、ホラーゲームなら確認しようとしたら、すぐ近くにいたりするんだよな。)
俺はその光景を想像して身震いした。
(しかし、俺には《空間把握》がある。)
さっそくスキルを使って周辺の敵の位置を確認すると、離れていく3つの反応が確認できた。
安心したと共に・・・そこで自分の間違いにやっと気付いた。
(2つの反応はオートマタ―・・もうもう1つの反応は・・救出相手の反応?)
つまり、救出相手だと思っていたのは、さっきの彼・・・いや彼女だったのだ。




