深淵の迷宮 救出作戦
俺達は休憩所に戻り、救出のための準備をする事にした。
俺はさっそく精神を集中して、魔力を飛ばし構造をさぐる。
とにかく彼女達の無事と位置を確認するのが最優先である。
(クソッ・・・オートマタ―達の気配も多数あって邪魔だ・・・ってここがこうなって、あそこがああなって・・・この場所一帯はなんで魔力が・・・)
だいたいの構造がわかってきたが、不明な部分もあった。
《空間把握》も万能ではないらしい。
(と・・・この感じはオートマタ―と違う・・・となると・・・これか?)
オートマタ―以外の反応を2つ感知した。
おそらくこれが彼女達だろう。
「どうだ無事か?」
「おそらくは、無事です。ただ・・・」
「ただ?」
「ただ、2人ともバラバラの位置にいる。しかも・・・1人は動いている。」
「なんだって?」
2人ともバラバラの位置にいるという事は、オートマタ―に襲われたらひとたまりもない。
それに動いている方は、罠や敵に出会う確率があり、絶えず場所を確認しなければならないので合流が難しい。
(とにかく止まっている1人はイフリートに確保してもらおう。)
『イフリート、そちらは何も問題ないか?』
『ああ、問題ない。何も起こらなさすぎて、敵が襲ってくるのを期待しているぐらいだ。』
『それなら丁度いい。これから言う場所に行ってほしい。』
俺は救出者の居場所と道のりを教えた。
『かまわないが、前みたいにトラップがあったりしないだろうな?』
『大丈夫だ。教えた道のりにトラップはない。ただ、異例の事態があれば連絡してくれ。』
『わかったが・・・面倒な事だな。』
(よし・・・これで後は動いている方の対処だが・・・)
「ライマンさん、これから助けに行きます。」
「何?さっきも言ったが無謀すぎる。」
「大丈夫です。俺は相手の位置や迷宮の構造を探る事が出来ます。危険を回避しつつ合流できる・・・ライマンさんは戻って助けを呼んでください。」
「しかし、万一遭遇したら終わりだぞ・・・それに助ける対象が襲われていたらどうする?」
命の危険を冒してまで人を助ける。
現実の俺だったらもちろんこんな事はしない。
まるでゲームの勇者のような行動だ・・・まだ、現実感が薄くゲーム感覚が抜けてないのだろうか。
それとも女神に能力を与えられて強くなったと勘違いしているのかもしれない。
(たしかに、俺には戦闘能力はあまりない。持ってるナイフでオートマタ―1体は倒せるかもしれないが、確かに無謀だな。)
「それなら俺もついて行こう。」
想像もしない提案に俺は驚いた。
「なぜ?無謀なのでは?」
「荷物持ちのお前を救出に行かせて、助けを求めて1人逃げてきたなんて・・・言えると思うか?
貴族としても冒険者としても恥さらしになる。」
たしかに、面子は丸つぶれになる。
プライドの高いライマンからしたら許せない事なのかもしれない。
(しかし、戦いをするつもりはないから、1人の方が行動しやすい。正直いると面倒になるかも。)
とはいえ、説得をしている時間がもったいない。
「ライマンさんは、魔導士ですがどれだけの魔術が使えますか?」
「どれだけ?どういう意味だ?」
不審な目を向けてくるライマン。
(これは俺の聞き方が悪かった。やはり、俺はコミュニュケーションはダメだな。)
「つまり、ライマンさんの最強の魔術で一撃でオートマタ―を倒せますか?」
「それは・・・わからない。ただ、僕の最強魔術の【雷撃】ならランクDの魔物なら一撃だ。それに奴らは金属だから、攻撃は通りやすいはずだ。」
俺は他の職業の詳細を知らないまま、人形遣いになったので【雷撃】がどれほどの威力なのかはわからない。
しかし、前の戦闘を思い出すと、いくら強力な魔術を持っていてもあまり戦い慣れていない気がした。
(それほど頼りにはなりそうにないな。)
「わかりました。ただ、今回は救出が目的なので戦闘は出来るだけ避けていきます。俺が先導するので、言う事は聞いてください。」
「わかった・・・」
彼の不満そうに返事する表情からは不安しかないが、とにかく救出作戦が始まった。




