深淵の迷宮 罠
休憩が終わり、俺達はまた隊列を組んで迷宮に挑む事になった。
ただ、イフリートの高い戦闘力を見せてしまったので、最後尾から最前列に配置されることになった。
つまり後列は俺とライマン、前列はクリスタニアとガーネット、そしてその前にイフリートである。
「イフ君を最前列に配置してもらって申し訳ありません。」
クリスタニアは申し訳なさそうに何度も頭を下げる。
本当にイフリートの事が好きなようだ。
「これで相手の出鼻もくじけて、戦闘が楽になる。それに彼は人形、死ぬことはないから大丈夫だ。何かあっても治せるから問題ない。」
『よく言う。俺も破壊されたらこの体に存在できなくなる。それは死ぬのと同義だぞ。』
『ここの敵ぐらいでは負ける事はないんだろ?』
『当然だ。この程度の奴らなど相手にはならない。出てきた奴全員破壊してやる。』
彼は不満を言うのかと思ったら、非常に楽しそうである。
(精霊ってもっと穏やかなものだと思っていたが・・・イフリートはかなり好戦的だな。こういう場面では助かるが・・・制御が難しそうだ。)
「とにかく慎重に進みましょう。この先何があるかわかりません。」
迷宮を進むと聞いてあることを思い出した。
(あっ・・・休憩中にスキル《空間把握》でこのフロアを確認するのをすっかり忘れてた。)
そのために休憩時間を取ったのに、とんでもない凡ミスである。
このままあてもなく迷宮をさまようのは危険すぎる。
(冒険者ランクEであまり強い能力を見せると転生者として疑われるかも・・・いや、そもそも転生者の存在はこの世界ではどう思われているのか・・・)
どうするべきか悩んでいる間に彼女らはどんどんと前に進んで行く。
ただ、隣にいるライマンだけは立ち止まって話しかけてきた。
「どうした?立ち止まって・・・遅れるぞ。それとも、何かあるのか?」
「いや・・・気になる事があって・・・」
その途端に前衛のグループの姿が描き消えた。
ずっと見ていたはずなのに・・・だ。
「クリスタニア達が消えた?」
「何だと?」
いなくなった空間を凝視する。
先に進みすぎて迷宮の暗闇に消えたのかと思ったが、【光明】の魔術は変わらず天井から消えた場所を照らし続けており、見逃すはずがない。
俺がその場所に駆け寄ろうとすると、強い力で止められた。
「空間転移の罠かもしれない!下手に近づくな!」
空間転移の罠:ゲームでも有名で、別の空間に飛ばされてしまうという罠だ。
下手をすると壁の中に飛ばされてしまい、生き埋めになって全滅する可能性もあるという。
「そんな恐ろしい罠が、何でもない通路に?」
「わかるように罠を仕掛ける馬鹿はいないだろう。もしかしてこのフロアはそういう罠ばかりの可能性もある。」
たしかにその通りである。
クリスタニア達の事は心配だが、下手に動けない。
「2人でこのフロアを進むのは無謀すぎる。一度戻って助けを求めるしかないな。」
冷たいようだが、ライマンの提案はもっともである。
俺もイフリートがいないとオートマタ―に勝てるかどうかわからない。
その時、頭に声が届く。
『ダロス、俺だ。イフリートだ。』
『おお、大丈夫なのか?』
『問題ない。ただ女二人の姿はない。』
スキル《意思疎通》が通じたのは良かったが、彼女達が別々に飛ばされたのは最悪である。
正直言って、オートマタ―の集団に出会ったら死しかない。
『その周辺に危険はないか?』
『どこかの通路みたいだが、今の所危険はなさそうだ。』
『なら、俺が《空間把握》で彼女達の場所を特定する。助けに行ってくれ。』
『面倒だが仕方ないか。』
(とりあえず今の状況はわかった。後はライマンにどう伝えるかだが・・・)
「どうした?急に考え込んで。何か考えでもあるのか?」
「今、俺の人形から連絡がありました。場所はわかりませんが、無事のようです。」
「そんな事が出来るのか?まあ・・・いい。とにかく無事なら、早く帰って助けを呼びべきだ。」
「待って下さい。彼女達は人形とは別の場所に飛ばされたようです。早く助けないと危険です。」
「何?・・・しかし、それでも俺達で助けに行くのは無謀すぎる。」
「これから俺の能力で彼女達の場所を特定します。そして人形に助けに行ってもらいます。」
「そんな事も出来るのか・・・」
「とりあえず、先ほどの休憩所に移動しましょう。」




