深淵の迷宮 休息
迷宮内には小部屋が何個かある。
おそらくは古代人が住んでいた名残なのだろうが、だいたいは中の物は風化し何もない場合が多い。
ただ、守護のためなのかガーディアンは配置されており、遭遇する場合が多い。
その分通路では遭遇する確率は低いのだが、たまに徘徊している場合もある。
「徘徊しているオートマタ―に会うとは不運だな。」
「ええ、でもなんとか倒せて良かったわ。イフ君のおかげね。」
クリスタニアは相変わらずイフリートびいきだ。
「おい、お前の人形の強さは異常だ。こいつはなんだ?」
「え・・・強いですかねえ・・・まぐれですよまぐれ・・・偶然手を出したら倒したんじゃないですか?」
「まぐれだと・・・僕を馬鹿にしているのか?!普通の人形が古代人が作ったオートマタ―をこうも簡単に破壊できるわけがないだろう!」
漫画とかなら、
《まぐれかあ・・・そりゃそうだよな、お前みたいなランクEの人形が強いわけないもんなあ・・・偶然が重なっただけだよなあ。》
で済むと思っていたが、そんな事はなかった。
「ライマン殿、それぐらいにしたらどうですか?ここは迷宮、まだ何が起こるかわかりません。それに・・・まずは救ってもらった礼を言うのが筋ではないですか?」
「救ってもらっただと。こいつが手を出さなければ僕の魔術で倒していた。礼を言う筋合いはない。」
「あ・・えーと、すみませんねえ。余計な事をしてしまって・・・」
「それは皮肉か?」
(謝ってるのに、噛みついてくる・・・本当に面倒な奴だな。一体どうしろと?)
たまらずクリタニアが仲介に入る。
「ライマンさん、少し落ち着きましょう。」
「チッ・・・」
このままではパーティの雰囲気は最悪である。
(落ち着くためにも休憩した方がいい。それに、闇雲に進むより俺のスキル《空間把握》でこのフロアを確認したほうが安全だ。)
俺は目を閉じて《空間把握》を発動させる。
このフロア全体を知るには時間が必要だが、安全な小部屋を探す事ぐらいは短時間で出来る。
「クリスタニア、この先にある小部屋で休もう。」
「小部屋・・・ですか?休憩には賛成ですが、敵が待ち構えているかもしれません。」
「イフリートに確認させる。俺達は隠れて様子を見ていればいい。」
「それはいい。人形遣いにはおわつらえ向きだ。」
「そういう言い方は・・・」
「本人がやりたいと言っているのだ、仲間のやる気をそぐのは良くないだろう?」
あいわからず嫌味っぽいライマンだが、今の状況にはナイスな言葉である。
「大丈夫だよ。ガーディアンは扉の外までは追ってこない、確認したらすぐ逃げるようにする。」
「・・・お願いします。」
『という事だ。イフリート、頼む』
『結果はわかっているのに、面倒な事だ。』
イフリートはそう言って、扉の中に入っていった。
・・・
・・・・
・・・・・しばらくしてイフリートが出てきた。
「大丈夫のようです。休憩しましょう。」
◇◇◇
小部屋には敵はいないかわりに、中には何もなかった。
守るほどの価値がない場所なのだろう。
全員、思い思いに床に座る。
クリタニアとガーネットは隣接して座り、ライマンは部屋の端の離れたところに座る。
俺も全員と離れたところに座り、彼らの様子を観察してみる。
(女性二人は仲がいい・・・というよりはガーネットがクリスタニアを常に護衛している感じがする。俺とライマンに対しても警戒している。ライマンは仲がいいようには見えない、パーティを組んでまだ日付が浅いのかも知れない。)
俺は人間関係を今まで極力排除してきた。
休憩時間は出来るだけ人がいない場所を探し、時にはトイレに籠ってやり過ごした。
しかし、第二の人生でそれは正解なのだろうか?
何かを変えるために多少の努力は必要なのかもしれない。
(やるだけやってみるか。ここで話しかけるのは誰が正解なのか・・・)
まるで恋愛ゲームである。
しかし、そう思った方が失敗した時も気が楽なのかもしれない。
俺は決意を新たに重い腰を上げて、ある人物に近づいた。




