深淵の迷宮 探索
「ここが迷宮か・・・」
迷宮内部は明かりが灯っており、薄暗いが周りは確認できるレベルだった。
道幅は10mほど、高さは5mほどで広いとは言えないが、狭いとも言えない大きさである。
壁は灰色で飾り気はないが、ヒビや割れもなく綺麗だった。
整備などしている訳がないので、劣化を抑える高度な技術でもあるのだろうか?
「皆さん、ここからアーシャさんに頼まれた目的地まで出来るだけ敵を避けて進みます。敵を見つけたら出来るだけ隠れてやり過ごすか、回り道をしますのでよろしくお願いします。」
クリスタニアの話に俺達は黙ってうなずく。
『つまらないな。せっかく体を得て暴れられると思っていたのにな。』
『前もって、そういう話になっていたからな。それにランクDパーティだとランクCの魔物相手には厳しいだろ。』
『そんな事は戦ってみないとわからん。少なくとも俺は負けん。』
『わかった、わかった。その時が来たら頼むよ。ただ、勝手な事はしないでくれよ。』
どうもイフリートは炎の魔人だけあって好戦的である。
代わりに戦ってくれるのは頼もしいのだが、パーティの意向を無視するのは危険極まりない。
味方の暴走ほど恐ろしいものはない。
迷宮の探索は順調だった。
魔物は特定の場所を守るガーディアンとして配備されており、地図で確認しながら避けて目的地へと向かえば戦闘もなく次の転移装置へと進む事が出来た。
転移を数十回繰り返し、アーシャが提示した目的の転移装置へと到着した。
「この先からは目的の未探索のエリアです。慎重に行きましょう。」
俺達は頷き、魔方陣へと入るとしばらくして発動し、見知らぬ場所へと送られた。
とはいえ雰囲気は今までと変わらない。
「ガーネット、明かりをお願いします。」
「わかりました。闇を照らせ・・・【光明】」
魔術によって周りを照らされたので、かなりの広範囲は見渡せるようになった。
ただ敵にも感知されやすくはなるが、物陰から奇襲されたりすることは少なくなる。
「慎重に進みましょう。」
前衛をクリスタニアとガーネット、後衛をライマンと俺そしてその後ろにイフリートという隊列で迷宮を進んで行く。
カチャ・・・カチャ・・・
明かりの届かない先の暗闇から音がする。
(何だこの音?)
パーティに緊張がはしり、武器を構える。
やがて姿が見えてくる。
(こいつら・・・人形?)
現れたのは2体の金属製の球体人形だった。
たどたどしい動きで目をギョロギョロと動かしながら、こちらへ歩いてくる姿は非常に不気味である。
「オートマタ―よ!頑強だから関節部を狙って!」
その声にこちらを認識したのか、目がこちらを捉えた。
その瞬間、体がバネのように跳ね一気に襲い掛かって来た。
「ウォオオオオオオ!」
ガーネットが女性とは思えない雄たけびを上げて、盾を構えて突進する。
その勢いに敵は2体まとめて吹っ飛んだ。
「トォオオオリャァアアア!」
倒れた相手に素早く近づいて、全力で剣を振り下ろすクリスタニア。
ガキィイイイイン!
金属音が鳴り、一体の足がはじけ飛んだ。
「次!」
無事なもう一体はガーネットが全体重をかけ、盾で動きを抑え込んでいる。
「ガーネット、そのまま抑えていて!トォオオオオオリャア!」
ガキイイイインン!
クリタニアはうまく首の関節部分を狙って切り飛ばす。
(凄い・・・強いじゃないか・・・)
あっさりと勝負が決まった気がしたが、首をはねられてもまだバタバタしている。
「なんてこと・・・これでも死なないの!」
「クソッ!こいつ動くな!」
二人は思った以上のしぶとさに困惑しているようだ。
『人形は器にすぎない・・・首をはねても死ぬことはない。動けない程破壊するか、憑依している精霊が魔力を使い果たすか・・それぐらいしか倒す手段はない。』
『な・・なんだと!』
(こ・・これはイフリートに相手をさせるべきか?)
どうするか迷っていると、足を無くしてバタバタしていたオートマタ―が手を使ってこちらに突進してきた。
這っているとは思えない速さだ。
その恐ろしい姿に俺とライマンは叫び声を上げる。
「「うわぁあああああ!」」
戦闘能力のない俺達には、奴に食らいつかれたら逃げられない。
それはわかっているが、足がすくんで動けない。
ライマンはもっと酷く尻もちをついて動けないようだ。
ガシャン!
奴が手をバネのようにして俺達めがけて飛んできた!
『イ・・・イフリート!』
『もう準備している。』
イフリートはすでに俺達の前に立ち、待ち構えていた。
相手の動きに合わせて右拳を突き出す!
『粉砕!』
右拳は相手の胴体を易々と貫いた。
それでも体をバタバタしていたが、やがて機能を停止した。
『止まった?完全に破壊していないのに?』
『奴に憑依している精霊の魔力を吸い取った。もうただの鉄くずだ。』
『そんな事も出来るのか?』
『ああ、魔力の補充も出来たし、一石二鳥だな。』
(そういえばもう一体はどうなった?)
確認すると、クリスタニアとガーネットがオートマタ―の四肢を切断している姿が目に入った。
あれだけやればさすがに動けないようだ。
ただ、二人とも息を乱しており、かなり苦戦した事が見て取れた。
(二人でかかって何とか勝てる相手か。これから厳しそうだな。)
そしてチラッとライマンを見ると、まだ腰を抜かしている。
「大丈夫か?手を貸そうか?」
手を差し伸べると、彼は真っ赤な顔になって拒絶した。
「必要ない!お前の手など借りん!」
相変わらずプライドが高い。
(魔導士らしいが、実践では役に立ちそうにないな。)




