深淵の迷宮への道
深淵の迷宮は魔物の森にあるが、そこまでの道は舗装され兵士により警備もされており、安全に行きつくことができる。
なぜなら、日々冒険者が挑戦して持ち帰った遺物の価値は絶大であり、国が全面協力する意味があるからだ。
しかも、この迷宮は100年経っても底が見えず、遺物を吐き出し続けている。
「・・・そして今日も一攫千金を狙って多くの冒険者が迷宮に挑んでいる・・・という事さ。わかったかい?ランクEの荷物持ち君?」
「はぁ・・・そうですか。」
「あのねえ・・・ランクDの僕が無知な君に説明してあげているのだ、もっと感謝したまえ。」
「それは・・・ありがとうございます。」
「だから生まれの卑しい者は礼儀がなっていないんだ。」
ライマンは道中ずっとこの調子である。
前はクリスタニアとガーネット、後ろは俺とライマンなせいかやたらと話しかけてくる。
リアカーでみんな荷物を運びながらのため、より面倒である。
どうも貴族の三男坊らしく、自分の事を高貴な存在として認識しているらしく、こちらを下賤な存在としてけなしくてくる。
「それに君は人形遣いらしいじゃないか。習熟しても使えないから、もうやめた方がいいよ。まあ中級職のゴーレム遣いになれば多少はマシだけど、いまだにランクEじゃ才能ないね。」
ボロクソである。
(たしかに人形遣いは弱いと女神は言っていたな。前の魔物遣いとの戦闘はイフリートが強かったから勝てたけど、たしかに攻撃手段が乏しいな。今回は荷物持ちだし、かわす事に専念して戦闘は他の者達にまかせよう。)
「ライマンさん、さすがに侮辱がすぎます。生まれも育ちも冒険者には関係ありません。」
「それは申し訳なかった。クリスタニア嬢がそう言うなら、言いすぎだったかもしれません。以後気をつけます。」
ライマンは大仰な身振り手振りで謝った。
嫌味ったらしい動きだ。
「ライマン殿、その態度は失礼では?」
道中で一切話さなかったガーネットが威圧的な態度で口をはさんだ。
ライマンは気おされて、少しひるんだが言い返す。
「ぼ・・・僕はクリスタニア嬢と話しているんだ!か・・・関係ない奴が口を出すな!」
二人は睨み合う体勢になったが、女性とはいえ大柄なガーネットの威圧感にライマンは及び腰だ。
「ガーネットさん、待って下さい。ライマンさんあなたの謝罪の意思は受け取りました、以後あまりダロスさんに侮辱的な言葉を投げかけないようにしてください。」
クリスタニアはガーネットを抑えながら、ライマンに注意を促した。
二人とも互いに気に食わない感じだったが、一応は引くことにしたようだ。
「チッ・・・デカイだけの馬鹿女が・・・」
しかしライマンは怒りが収まらないようで、ブツブツと小さな声で文句を言っている。
おそらく聞こえているようだが、ガーネットは涼しい顔だ。
クリタニアに対しての無礼には敏感だが、自分に対しては気にならないらしい。
(思ったより、面倒そうなパーティだな。迷宮で仲たがいして全滅なんてやめてくれよ。)
そうこう言い争いをしている間に、深淵の迷宮の入口についた。
入口付近は森の中とは思えない程の広場になっており、多くの冒険者が準備しており、配備されている兵士もかなりの数だ。
他には商売人や荷物を預かる連中、さらには食べ物の屋台まであり、もはや小さな祭りである。
「凄い賑やかだな。」
「ええ、冒険者にとっては祭りのようなものです・・・命をかける事にはなりますが。」
たしかに皆はしゃいでいるように見える。
いや・・・そうやって自分を鼓舞しているのだろうか?
死への恐怖を克服しようとしているのだろうか?
「それでも・・下賤な物がまともに働いても得られない大金が得られる、命など安いモノだろうよ。まあ、僕はそんな奴らと違うがね。」
違うとはどういう意味だろうか?
金目的ではなく名誉とか・・・しかし、聞く事はしなかった。
なぜなら、話しかけたらまた嫌味ったらしい自慢話が始まるからだ。
「それでは私達も参りましょう。」
ついに迷宮に挑む。
命のやり取りがこれから行われるなど、平和ボケした俺には実感がわかないし覚悟もない。
このまま何となく挑んだら、あっさり死ぬような気がする。
覚悟などわかないが、俺は出来るだけ気合を入れた。
(イクゾー!)




