召喚士アーシャ
アーシャに案内されたのは店の奥にある部屋だった。
「さあ入っておくれ。」
部屋には明かりが無く、扉を閉めると真っ暗になりそうだ。
「闇を照らせ・・・【光明】」
彼女が魔術を発動させると・・・手の平に光の玉が現れ、頭上へと浮かび上がって周りを照らす。
(便利だなあ・・・でも工房みたいにライトをつければいいのに、よくわからないな。それとも見られたくない物でもあるのかな?)
部屋はそれほど広くなく、明かりによって十分見渡せた。
「おぬしに見せたい物はこれじゃ。」
彼女が指さした先には、ぐったりとした人の姿があった。
「なんだ!死体?!」
「死体ではない・・・人形じゃ。」
俺は一瞬ギョッとしたが、よく見てみると人形だった。
皮膚のようなものが数か所はがれ、関節部分のジョイントが露出している。
小柄で、幼い少女の外見だが顔は無機質でマネキンのようだ。
(これはイフリートの素体と同じ物だな・・・皮膚の部分も同じ魔法金属で作られているが、愛のない造形だ。人間の姿を真似たロボットって感じだな。)
「これは古代遺跡で襲ってきたオートマタ―じゃ。」
(襲ってくる・・・そりゃそうか。もともと古代人が使役するために作りだした物だしな。)
「・・・これは動いたりしないですよね?」
「精霊付きじゃったが戦闘の末魔力を使い果たして機能を停止した。こやつはただのデク人形じゃ、安心せい。」
無機的な造りだからこそ、これが動いて襲ってくると思うと寒気がした。
しかし、こんな物を俺に見せてどうしようというのだろうか?
高額で売りつけようとでも思っているのだろうか?
「お主の人形・・・これと同じじゃろ。」
「!」
驚いて彼女を見ると、鋭い眼光が俺を捉えていた。
「な・・・何のことですか?」
「遺跡から手に入れたようじゃが・・・こういう物は研究対象としてギルドが管理しておる。勝手に所有物にすると罪になるぞ。」
「いや・・・これと俺の人形は全く違うので・・・その・・・自分で作り出したもので・・・」
「わしはな・・・召喚士じゃ。その意味がわかるな?」
召喚士・・・下級職である人形遣いの上級職である。
当然人形について熟知している可能性が高い。
つまり、言い逃れは出来ないという事である。
(脅して、金品を請求してくるつもりか・・・それとも他に目的があるのか?)
「なるほど、なるほど・・・確信があるってことか。それで俺にどうしろと?」
「この人形は古代人の遺跡、深淵の迷宮から手に入れた物じゃ。その先に、わしが欲しい物がきっとある。」
「つまり、人形の事を黙っておいてあげる代わりに、あんたの望みの物を取ってこいって事か?」
「そういう事じゃ。」
「しかし遺跡の物はギルドに報告義務があるんじゃないのか?」
「そこは、わしが何とかする。」
「・・・。」
深淵の迷宮・・・100年ぐらい前に見つかった古代人の遺跡だ。
あまりに複雑で先が見えないため、深淵の迷宮と名付けられた。
そのため未だに全ては解明されていない。
「ただ、あの迷宮はランクD冒険者からじゃないと探索許可はとれない・・・ランクEの俺では無理だ。」
「クリス嬢ちゃんがいるじゃろ。荷物持ちとして同行させてもらうよう、わしが頼んでやろう。」
「・・・よくわからないな。あんたが求める物を手に入れるのはかなり困難なはず。それを俺みたいな下級冒険者に頼むとは。」
「あんたは只者じゃない。わしにはそれがわかる・・・やり遂げてくれるじゃろうて。」
「人を脅して利用するのに、よく言う。」
「役目が終わったからといって消すなんて事はないから安心せい・・・冒険者ギルドが黙っておらんからのう。もちろんお主が持ち帰って来た遺産も何とかしてやる。人形も持ち帰り放題じゃ。」
(イマイチよくわからない人だ。ただ、強者である事は感じるし、色々と各方面に繋がりがありそうだ。逆らわない方がいいだろうな。もちろん信用するのは危険だろうけど。)
「わかった。それで何を持ち帰ったらいいんだ?」
「それはのう・・・」




