魔術道具屋
「ここなら丁度いいと思います。」
「ここって・・・魔術道具屋?」
クリスタニアの案内で連れて来られたのは商業区の外れにある、【魔術道具屋アーシャ】という店だ。
店の外観も中も灰色で、品物は飾りつけもなく保管しているだけ・・・つまり倉庫のような場所だった。
「魔術道具屋って服が買えるのか?」
「とにかく見て回りましょう。」
彼女に言われるまま、物色をしてみる。
(これは薬か?こっちは呪文書?他には・・・よくわからない怪しい物がいっぱいだな。)
魔術道具屋というだけあって、魔術師っぽい道具が置いてあるようだ。
「あ・・・アーシャさん、こんにちは!」
クリスタニアが元気よく挨拶をした先に、典型的な魔術師ルック・・・黒い大きなとんがり帽子とローブをまとった女性が立っていた。
「おお、クリス嬢ちゃんかい。よく来たね。」
その女性はまるで老婆のような口調で話しかけてきたが、姿はどう見ても若い女性である。
金髪碧眼で整った顔立ち、そして耳が少し尖っていた。
「まさか・・・エルフ?」
エルフというのはファンタジーの世界では有名で、見目美しく尖った耳を持ち、長い寿命を誇る妖精のような種族。
そんなファンタジーの住民に会った驚きで、つい声が出てしまった。
「ほー、よく知っておる・・・じゃがわしは生粋のエルフではなく、先祖にエルフがいただけじゃ。まあ人より長い寿命はもっておるがな。耳も本来はもっと尖っておるが、わしはそれほどではない。」
どうも生粋の場合は耳はもっと尖っているらしい。
この世界にエルフが存在している事と、見た目の情報が得られた。
「アーシャさん、実はこの子の服を探していて・・・」
「なるほど人形かい。しかも精霊付き・・・それにこの体・・・この姿は・・・」
彼女が鋭い目つきでイフリートを見る。
(古代人の遺跡から勝手に持ってきた物だとばれたらマズイ・・・)
「ダロスさんが作ったんですよ。凄いですよね。」
「・・・作った?」
「ええ、まあそうです。」
さらに眼光が鋭くなる。
「これを作った・・・そりゃお前さん・・・」
(さすがに老齢の魔術師、誤魔化せないか?)
「天才じゃのう!」
「へ?」
「人形遣いとは、このような精密な人形も作れるんじゃのう。」
・・・ただの年寄りだったようだ。
「ここまで人に近いなら、ここにある服も着れるじゃろうて。」
「服も扱っているので?」
「ただの服ではない、魔術に対して抵抗力のある服じゃ。」
「魔術に強いって事ですか?」
「ざっくりと言えば、そういう事じゃ。」
魔術に強いなら、イフリートの炎にも耐えれるのかもしれない。
(それならグッジョブだ。)
並んでいる服は基本的には実用的で地味なデザインである。
ゴワゴワした生地でかなり丈夫ではあるが着心地は悪そうだ。
その中で数着だが、装飾の綺麗な肌触りの良い服もあった。
貴族用の服だろうか?
(クリスタニアの服に雰囲気が似ている・・・やはり良い所のお嬢さんなのか?)
「どれでも金貨1枚じゃ。クリス嬢ちゃんだけの大サービスじゃぞ。」
「それは安い!ありがとうございます!」
(金貨1枚・・・って10万円!高くないか?)
俺は急いで断ろうとした。
「それと・・・おぬしはわしと来るのじゃ。見せたい物がある。」
「え・・」
「では、私はイフ君の服を選んでおきますね。」
「えっ・・・えっ?」
動揺する俺を無視して、アーシャはズンズン歩いていく。
(くそっ・・・とにかくついて行くか・・・服はお金を要求されたら断ればいい。)
俺は急いで後を追いかけた。




