クリスタニア
俺はクリスタニアさんに事情を話して、イフリートの服を一緒に探してもらう事にした。
「なるほど、それでイフ君の服を探しているのですか?それならお任せください。こう見えても服には詳しいのです。」
確かに彼女は白くて美しい高級そうな服を着ている。
「それではよろしくお願いします。ただ・・・あまり高級な服は資金的に難しいので・・・」
「それなら、中間あたりの値段設定の店を回りましょう。もちろん、怪しい店などはいきませんよ。」
(本当に詳しそうだな。これはいい出会いをした。)
「あなたは人形遣いと言っていましたが、もしかして・・・冒険者でしょうか?」
「ええ、そうです。冒険者をやっていますね・・・まだランクEですが。」
「そうなのですね、私も実は冒険者なのです。戦士でランクDです。」
「え・・・同じ冒険者でランクが上・・・しかも戦士?」
「驚きましたか?」
たしかに驚いた。
彼女は着用している服もそうだが、話し方や所作も品があってお嬢様な感じがしたからだ。
それに艶のある茶髪、肌も綺麗でかなり手入れされている。
目が大きく可愛い顔立ちだが、元の容姿だけではない清潔さによる綺麗さがあり、冒険者の泥臭いイメージとはかけ離れている。
「いや・・・あまりにも綺麗なので・・・」
「・・・私も冒険者です。そういう安易なお世辞は侮辱になりますよ。」
「すみません。そういうつもりでは・・・」
「わかりました。とりあえず誉め言葉として聞いておきます。」
彼女は少し機嫌が悪そうだった。
別にお世辞のつもりで言ったわけではなかったのだが、女性ならとりあえず誉める軽い男と思われたのかも知れない。
「しかし、本当にイフ君は強いですね。それに可愛い・・・」
イフリートの事がお気に入りなのか、近づいて歩いている姿をずっと見つめたり、触ったりしている。
女性にそこまで好かれるなんて羨ましい。
『この女ベタベタして鬱陶しいな。何とかしろ。』
『何とかしろと言われても・・・』
『会話だ・・・会話して俺から引き剥がせ。』
(会話って・・・何を話せばいいんだ?)
「えっと・・・ああ、その・・・君は戦士なんだよね?レベルはどれくらい?」
「レベル?私の戦士としての実力がどれくらいという事ですか?」
(もしかしてレベルの概念がないのか?俺だけがステータス画面でレベルを確認できるという事か?)
「もしかして私の実力を疑っているのですか?」
「いや・・・そういうわけでは・・・」
たしかに彼女の見た目は遠目から見るとあまり強そうに見えない。
しかし、近くで見ると彼女の体が思ったよりデカイ事に気付く。
身長170ぐらいで、肩幅も肉体も厚い・・・前の世界の女性とは比べ物にならない程強そうだ。
(そうか、さっき小さく見えたのは相手の男が大柄だったからか・・・)
この世界の人間は全員デカイので、麻痺していたようだ。
ちなみにダロスの体も痩せているようで、身長170で筋肉質、前世だと細マッチョでモテる体形である。
「私の力、今ここで見せてもいいんですよ?」
目をギラつかせて、俺を睨む・・・思ったより好戦的である。
戦士というのも納得である。
「それは遠慮しておくよ。君には勝てそうもない。」
「・・・私は女性だからといって舐められるのが嫌いなんです。しかし冒険者は力の世界・・・魔術師や僧侶ならいざ知らず、戦士では元々の力の差がある事はたしかですが・・・どうにも我慢ならないのです。」
俺は格闘技などは漫画やアニメぐらいしか知らないし、スポーツなどもしない人間だが、男性と女性では生まれながら力の差がある事は知っている。
特に命のやり取りをする冒険者なら、その差が命運を分ける事にもなりうるのだろう。
女性が軽んじられるのも、おかしくはない。
「すまなかった。実力を疑ったわけではないんだ・・・単純にランクDの戦士の力がどれくらいか知りたかっただけなんだ。」
俺は頭を下げて謝った。
すると周囲の人々もクリスタニアもまるで時が止まったように硬直した。
(何だ・・・もしかして頭を下げて謝る習慣がここにはないのか?それとも別の意味を表す行動だったりしないよな?)
心配になって彼女を見ると、非礼を謝ってくれた。
「このような衆目にさらされる場所で恥を承知で謝罪するとは・・・あなたは女性だからといって軽んじる人間ではないようです。」
どうも周りに人がいる時に謝罪するのは、かなりの恥らしい。
(恥か・・・フリーターとして働いていた時は、平謝りばかりしてたからなあ・・・もう何も感じなくなった。)
つまりフリーターの時と違って、謝る事の重みが違うという事だ。
彼女はそれを好意的に受け取ってくれたが、これからは気をつけないといけない。
「わかってくれればいい。それよりイフの服を頼む。」
「お任せください!可愛い服をコーディネートします!」
『普通の恰好にしてくれ・・・』




