新しい体
「ダロス、お前はクビだ。」
「えっ?」
それは酒場の喧噪の中での、突然の宣告だった。
テーブルを囲んで座っているパーティの連中は、何もなかったかのように酒を飲んでいる。
「これからはアリスさんにパーティに入ってもらう。」
「あ・・・はい。私はアリスといいます。これからよろしくお願いします・・・。」
アルダンの隣に座ってた見知らぬ女性は奴の彼女なのかと気になっていたが、俺の代わりだったようだ。
「待ってくれ、そんな話聞いてない!」
「今さっき聞いただろ。じゃあな。」
「待ってくれ!せめて理由を教えてくれないか?」
「理由だと?それは、お前より有能なアリスさんがパーティに入ってくれるからだ。」
「有能?」
「アリスさんは、人形遣いの上位クラスのゴーレム遣いだ。もうお前がいる理由がない。」
ゴーレム遣いといえば、人形遣いと錬金術師を熟練した中級職だ。
俺達とは比べ物にならない実力者である。
「そんな・・・でも俺は今まで貢献してきたじゃないか?」
「貢献?逆だ!多少の罠避けしかできない上に、戦闘ではお前を何度守ってきたことか・・・ランクEから上がれないのも、お前が足を引っ張ってきたからだ!」
「だから荷物持ちや雑用もやってきたじゃないか!」
「そいつはありがとよ。礼を言ったぞ、これでいいか?」
たまらずパーティを見回すが、誰も目を合わそうとしない。
もう決定事項のようだ。
「アルダンさん、これはどういう事でしょうか?このように揉めるとは聞いていませんが・・・」
「ああ、役立たずに出て行ってもらうだけです。揉めてるわけじゃないですよ。」
「・・・申し訳ありませんが、私は人を切り捨てるようなやり方は好きになれません。パーティを組む話はなかったことにして下さい。」
「まてよ、いいのか?遺跡探索に人手がいるんじゃねえのかよ。」
「大丈夫です。あなたに頼らなくてもなんとかします。」
彼女は捨て台詞を吐いて颯爽と去って行った。
「チッ・・・気取りやがって。仕方ねえな、お前のクビはなかったことにしてやる。」
「・・・。」
「早速出かけるぞ!先に遺跡を発見して、あの女に吠え面をかかせてやる!」
◇◇◇
「夢か?」
夢ではあるが、おそらくはダロスの記憶だろう。
パーティをクビにされそうになっていたようだが、その後の事を考えるとその方が良かったのかも知れない。
「ここは借りた家のベッドか?工房で倒れてた気がするが、何でここに?」
記憶をたどってみても、ベッドまできて寝た記憶はない。
誰かが運んでくれたのだろうか?
かなり長い時間寝ていたようだ。
窓から外を見ると日が上がりきっている。
「おっさんの時はフィギュア製作で徹夜したら、本当に疲れが取れなかったからなあ。そもそも長い時間眠ると体が痛くなっていたから・・・若いっていいなあ。」
俺は食堂にいき、設置されている保存装置を開く。
一見ただのデカイ金属の箱だが、常に冷える魔術がかけられているらしく、食べ物が腐りにくい。
元の世界の冷蔵庫のようなものだ。
「しかし、全体的に古臭い世界なのに、家電なみの装置が存在してるんだよなあ・・・不思議だ。」
これが万能のエネルギーである魔力の力なのだろうか?
とにかく腹ごしらえのために、購入しておいた保存食の干し肉などを頬張る。
美味しくないが、とにかく腹を満たす事が出来た。
『起きたのか?』
突然の声にそちらを見ると、裸の男の子が立っていた。
細身で小柄だが筋肉質の少年・・・ただ男性器はついていない。
『イフリートか?驚いたな・・・肌の色も人間に近づける事ができるのか。』
『魔力の調整で肌の色や動きなど自由自在だ。これからもっと慣れる必要はあるが悪くない。』
彼は思うままに肌の色を変えたり、素早く動いてポーズを取ったりしている。
その姿はまるで人間で不自然がない。
(素晴らしい!これを俺が作ったのか!)
少年とはいえ男性なので自分の体を参考にして、未熟なりにかなりうまく作れたと思う。
生前にこれだけの腕があれば・・・とは思わずにいられない。
(とはいえ、もう一体の女性型を作成するのは大変だな。当分はイフリートを使って何か不具合がないか確認するか・・・。)
『この体をもっと試したい。そこらを歩いてくる。』
『いや、まてまて・・・裸はマズイ。まずは服を調達する必要があるな。』
『力を使うと燃やしてしまう・・・必要ないだろ。』
(たしかにそうだな・・・いや待てよ?)
『そういえば服も魔法金属で作れば制御できるのか?』
『可能ではあるだろうが、服の動きとしては不自然になるだろうな。体にピッタリとした形なら違和感が少ないかも。そもそも俺は寒さなど感じないから服を着る必要性がないがな。』
(体にピッタリとした服装か。戦隊モノのスーツとかだとピッタリはしているな。この世界では違和感ありまくだろうけど。)
『仕方ないが、世間体というのがある。とりあえず服を買いに行こう。』




