瑞稀の葛藤
「「「お疲れ様でした」」」
夕方、練習が終わったようだ。 ふう、疲れたな。
私はそう、呑気に考えながら、バックを持つーー
「あれれ? アンタどこ行くの?」
「⋯⋯えっと? お疲れ様でした?」
もう既に、歌声やAI音声でも、ましてや合図でもないーー
「やだアンタ。 これから、会社で仕事だよ? よかったね、やっと秘書として仕事できるよ?」
「ははは、そうですね」
ーーやばい、逃げたい!
私は彼女のようなタイプには、近づかないようにしていたのに。
榊原会計がこんな人だって知っていたら、会計に入れなかったよーー
「さあ、行きましょ。 ⋯⋯アンタに地獄を見せてあげる」
私は、黒田さんと新田さんを見た、二人は私を可哀想な目で見つめている。
「だから、言っただろう⋯⋯」
「みずきっち、お元気で」
「さあ! 瑞稀、行きましょう」
私は榊原さんから、強い圧を受けながら、次の場所へ向かうのであったーー
「ふふ。 ⋯⋯瑞稀、そんなに怯えなくていいから、ね。 さっきのはネタだから」
「そうなんですか? よかった。 じゃあ、お疲れ様です」
「⋯⋯本当に面白いわね、瑞稀。 私が言ったのは、怒っている様子よ」
「⋯⋯怒ってないんですか?」
「そうよ、むしろ面白いくらいよ。 ⋯⋯でも内容は本当だからね?」
ヒイ! 榊原さんがまるで私を獲物のように見てくるーー
ーーそうか、やっぱり本気だったんだ。 たしかに、卑怯者って言われても仕方ないね。 ことねやミウミウがいなかったら、私は負けていたからーー
「でも、榊原さん。 歌に乗せて歌っても内容が頭に入って来ませんよ?」
「あら? あんなパフォーマンスをした、アンタがそう言う? あのね、私はもう既に学校内では、知名度と優秀さは伝わっているの。 ⋯⋯そういえばアンタ、体育大会で司会をしたそうじゃない。 去年は私が担当したのよ? つまり目立つ! 後は実績があれば、後は勢いで勝てるのよ!」
私は、榊原さんが今まで、普通に喋ることをしない、理由がわかった。
ーー彼女、めちゃくちゃ喋る。
ぜんぜん、私のペースにならないよーー
「それから、アンタ! 私を公認会計士って言ったわね! 言いふらすのやめてくれない? ⋯⋯もし、バレたら、アンタを道連れにするから⋯⋯って冗談よ! ⋯⋯そんなにビビった顔して、どうしたの?」
「⋯⋯家族に危害を加えるのはやめてください。 ⋯⋯私は、どうなってもいいんです。 でも⋯⋯いった。 榊原さん?」
「ゆいゆい。 って呼んでほしいな? ごめんなさい。 アンタがそんなに落ち込むなんて思わなかったよ。 アンタは私のライバルなんだから⋯⋯」
ライバルーー その言葉に疑問を持った。
私が、榊原結衣のライバル?
「アンタの理想。 えっと、やりたいこと100リストだっけ? あれ、面白いよね。 ⋯⋯でも、もうちょっとどうにかならないの? 00に会うとか、そんなの目標じゃないよ? ⋯⋯なになに『私みたいな人間が会えるだけでもありがたい』? ハア。 アンタ、どんだけ自己肯定感低いのよ! ⋯⋯決めた! 私がアンタのメンタルコーチになってあげる! 誇りに思いなさい!」
私のことを、あの榊原結衣がしっかり見てくる。
ーー思えばいつもそうだった。 目標だけはいっぱしに語っているくせに、否定されると、すぐに逃げ出す私。 親や弟のためだと言っておきながら、本当は自分が怖いだけなのだ。 私は弱いーー
『瑞稀。 ⋯⋯塞ぎこむ気持ちはわかります。 でも、今は振りだけでもしませんか?』
ーーエタナの言う通りだ。 私は榊原さんを見る。
彼女は、私の方を見てなにかを悟ったのか、目的地に向けて歩き出した。
私も頑張ろう! とりあえず、今日この時をーー




