瑞稀の秘書生活?
夏は暑い。 そんな当たり前なことを、私は今実感していた。
「ふふ。 ⋯⋯これが、アイドルの秘書か⋯⋯」
中々、過酷な仕事だ。 私の着ているスーツの下は汗まみれだ。
ーーなぜ、私は外にいるかって? それは彼女たちの昼食を買うためだ。
通常の彼女たちは、学校終わりか、昼過ぎから夕方までの時間にレッスンをしているらしい。
しかし、今は夏休み。 しかもコンサート前だ。 朝から夕方までレッスン場に篭って練習するらしいーー
「ただいま戻りました!」
「おかえり、みずきっち⋯⋯って凄い汗まみれじゃん⋯⋯」
みずきっちーー新田さんが親しげに私をそう呼ぶ。
「倉石。 榊原様の前でその姿、無礼だぞ!」
黒田さんは相変わらずだ。 私は、彼女たちに弁当を渡す。
「榊原様が『瑞稀ちゃん。 水分ちゃんと、とってる? 後、服を着替えなさい。 ここはクーラーが効いているから、汗が冷えて風邪をひいてしまうわ』だそうだ」
あのさー直接話そうよ! そんな伝言ゲームしなくてもいいじゃんーー
「はい、わかりました」
「よし。 こんなこともあろうかと、事前にお前の服を⋯⋯」
「事前に持って来た、スーツがあるんです」
よかった! 用意してて。 私は更衣室へ向かう。
「あちゃー。 みずきっち、筋金入りだわ。 さすが、一年で生徒会長なだけはあるよね」
「⋯⋯結衣。 あの子、変わり者だわ」
「明里。 挫けたら駄目よ。 私はまだ怒ってるんだから⋯⋯」
「もう、結衣。 たしかに、終業式のあれは酷かったけど⋯⋯」
「ゆいっち、初めてじゃない? 自分が利用されるの。 いつも利用する方だもんねー」
「人聞きが悪いわ、善子。 私は自分が一番目立ちたいだけよ」
「はいはい。 もう充分に目立ってますよ、結衣」
「たしかに!」
「「「ハハハ」」」
『瑞稀。 素直に自分の罪を懺悔してください』
「へ? なにを?」
『榊原結衣が怒っているそうです』
「ああ、やっぱり。 そうだと思った」
私は楽屋に戻った。 三人はまるで、なんでもなかったかのようにスマホをいじっていた。
「榊原さん肩揉みますよ!」
「おい! 無礼だぞ! 榊原様に触れるな!」
外野が何か言っているが、知らない振りをして、榊原さんの肩に触れる。
「おお、凝ってますね」
「⋯⋯⋯」
「おや? そんな顰め面して、どうしました?」
「ぷくぷく」
「なんですか? わかりませんー」
「おい! 倉石⋯⋯そのぐらいに」
「黒田さんは黙ってください。 ちゃんと言葉にしてもらわないとね、榊原会計?」
「⋯⋯私⋯⋯たかった」
「もっと大きな声でお願いします」
「私が生徒会長になりたかったわよ! チキショウ!」
榊原さんが大声で叫ぶ。
「あのね! 私、本気だったの! 田中幸子や柳田健太はわざと負けたようだし、立川竜也にいたっては論外よ! でも、私は本気だったの! わかる? なのに、アンタは、川端ことねって言う、援軍を用意して、さらにはミウミウとか言うマスコットまで用意して! なんなの、卑怯者! 自分の力で戦いなさいよ! それだけでも文句あるのに、アンタは引き立て役に私を使ったわ! アンタに踊らされる私は、実に滑稽だったでしょね! それで! 夏休みに入ってから、アンタに私の偉大さをわからせようとしたのよ! なのに、アンタはずっと私のことをほっぽって、やっと来たかと思えば、アンタはまた私のことを利用して! 今日こそはアンタに私のすべてをわからせてあげる! 平伏しなさい! そして後悔するの! 私をコケにしたことをね、わかった? 私が一番、アンタは私より目立ってはいけないわ!」
ーー私は、黒田さんと新田さんを見た。
二人は、私に同情しているらしいーー




