↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

346/347

その29 ミウミウにさよならを言おう!

 日が落ちた頃。 私は村にやって来ていた。


 攻略方法は頭に入っている。 六十万とは別に、十万円分の図鑑を読んだ記憶がある。 死に戻りで金は戻ったけど、知識は残っている。


 妖怪たちは、律儀だ。 追い出されるのは嫌がるけど、頼まれると素直に聞く。

 一周目の私は、同じ作法で「帰ってもらった」。 帰ってもらったから、戻ってこなかった。 村が空になった。 でも今日は、おでかけだ。


 全員を退出させた後。 村は、静かになった。


 私は広場の真ん中で、懐中電灯を握って立っていた。


 ーー来い。 美羽ーーミウミウ!


 『瑞稀……久しぶりですわね?』


 現れたのは美羽ーーいやミウミウだった。


 あの破廉恥コスチュームまで同じだった。


 『ずっと、待ってましたわ、瑞稀!』


 私は、懐中電灯の光を向けた。 


 ーーミウミウ。 それは、私が美羽につけた名前だった。


 私は、体育祭の頃から、三学期前まで、私は美羽のことをそう読んでいた。


 意味や由来は特にない。 美羽だから、ミウミウと読んでいただけ。


 『ミウミウ』という記号にすることで、私は美羽を定義していたのだ。


ーー便利だったよ。 本当に。


『ねえ、瑞稀。 なんで呼んでくれなくなったんですの?』


 ミウミウが、首を傾げた。 美羽が本気で困っている時と、同じ角度だった。


「……」


 理由は、分かっている。 三学期前、あの日から私の中で美羽は変わった。


 何があったかは言わない。 それは過去の話だ。


 とにかく、あの日から、あの子は私の中で「モブ」ではなくなった。


 そのため、ミウミウという記号で呼ぶことがなくなったのだ。


 記号で呼べなくなった。 ーーもう、省略できない。


「瑞稀!」

「はあ。 やっぱり、来たの? 美羽」

「当然ですわ!」


 美羽もやって来た。 というか、服装変えて来てよ、どっちがミウミウで美羽なのかわからなくなるからさーー


『私、捨てられましたの〜?』

「……捨ててない」

「捨てられましたわ!」

「美羽は黙っていてよ!」

「いいえ。 黙りませんわ。 なぜなら……」

『私、いや「私たちは一緒の存在なんだから」』


 美羽とミウミウは泣いていた。 同じ顔らしく、泣き方も同じだった。


ーーけど、なにかが違う。 ミウミウは、美羽が忘れた存在なんだ。


 そして私も、ミウミウーー美羽を存在ごと冷却していた。


「ねえ、瑞稀〜」

「なに」

「もう一度、呼んでくださいませ〜」


 それは、手を差し出した。 この手を取ったら、たぶん終わる。 一周目の私は、たぶんここで終わったんだ。 ーーでも今回は違う。


「……名の無きものには、名を与えよ……」

『瑞稀?』

「瑞稀?」

「与える者は、その名を最初に呼んだ者でなければならぬ……ミウミウ」

『!……瑞稀!』

「……今までごめんね。 そしてありがとうさよなら、ミウミウ」

『……はあ。 仕方ないですわね。 さよなら、瑞稀……』


 ミウミウは顔を上げた。 ーー嬉しそうだった。 


 そして、穏やかな表情のまま、消えて行ったのである。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。