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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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その27 死に戻りしよう!

 それは、美羽の顔で笑っていた。 村の人たちは驚愕の顔でそれを見ていた。 


「あ、あかん! 待って、瑞稀はん!」


 声がした。


 土間さんだった。 人の輪をかき分けて、前に出てくる。 坊主頭に汗をかいていた。


「それ、退治の仕方あるんや! ウチ、読んだことある!」

「え!?」

「『櫻井村の成り立ち』や! あの本に書いてあるんや!」

「本当に! じゃ、教えて!」


 土間さんの口が、止まった。


 開いている。 声が出ていない。 喉が動いているのに、音にならない。


『駄目です、瑞稀。 攻略のネタバレはNGです』

「エタナ? ……そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 人生は一度きりなんだから、死んだら終わりじゃん!」


 私は、土間さんの顔を見た。 目が合った。 目で、必死に合図を送った。


ーー言って! 早く!


 土間さんは、頷いた。 ちゃんと頷いた。 口を開けた。 聞こえないーー


 背後で、衣擦れの音がした。 振り向く余裕はなかった。


「瑞稀」


 耳のすぐ後ろで、美羽の声がした。


「愛しておりますわ……瑞稀」


 視界が、白く飛んだ。 痛みは、なかった。


「あら、瑞稀はん。 えらい早いな。 顔が怖いで?」


 気がつくと、図書館だった。 開館と同時に飛び込んできた、あの朝だった。


 私は、自分の手を見た。 握っているのは札束だ。 私の財産。


「瑞稀はん? どないしたんや? 要件は?」

「土間さん。 この前の本をください」

「……前巻で10万やで? ええんか?」

「はい」


 土間さんの手が、止まった。


「返品は、受け付けへんで」


 土間さんは、そう言って、一冊を差し出した。


 村史の上中下巻と比べると、拍子抜けするくらい薄い。 


ーーこれなら、私にも読めそうだ。


 私は、机に座って、最初のページを開いた。


『櫻井美羽ーー彼女は櫻井和馬と櫻井香織の間に生まれた。 彼女は今代の川端家の長女ーー川端ことねの右腕になるために生まれ、教育されてきた』


 開拓の年号も、地名の由来も、鉱山の発見も、何一つ書かれていなかった。


 書いてあったのは、一人の女の子のーー美羽の話だった。


 ページをめくる手が、震えた。


『美羽は願った。 自らの存在を求める自分のために、この身を捧げること、その方の為に生きることを』


 私は、本を閉じた。 頭を抱える。 ーー続きが読みたい。 この続きは、私にとって、とても大事な糧になるから。


ーー数日後。 私は再び、図書館に向かっていた。


「土間さん」

「なんや」

「この前の本……」

「……やからゆうたやろ、だから高値や……」

「続き買いたいんですけど」

「……50万や、ここで辞めとき、お金は返すから、この話は……」

「はい、50万です」

「……正気かいな? ええ話やないで? 腑物や!」

「……いえ。 私には、何よりも大切なモノです」


ーー私がそう言うと、土間さんは、中巻と後巻を渡して来た。


「……後巻までいいの?」

「サービスや、ウチが読ませたくないのは中巻やさかいな……」


 私は、代金を払って、図書館を出た。 そして、家で本を読み始めるのだった。


 

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