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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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その25 降臨祭をしよう!

 その日の朝。 村の一角に村民たち全員が集まっていた。 場所は品評会をやったあの場所。


 そして、その真ん中には、破廉恥コスチュームの美羽がいた。


 朝はTシャツとジーンズだったのに。 どこで着替えてきたの。 どうしてこの状況で、わざわざそれを選んだの?


「美羽〜 寒くないの〜」

「望美さんもそう思いますよね? 美羽さん、お風邪をひいてしまいます! 上着を貸しますよ?」

「駄目ですわよ! 瑞稀にアピールしているのですから!」


ーーホラ。 みんなに心配されてるよ? 美羽。


「みなさん。 今、この櫻井村は破滅の危機が訪れております……」


 声は、よく通った。 私をからかっているのは、服装だけらしい。


「お父様が不在の今、櫻井村の代表代理として命じます。 村民、今すぐ避難せよ!」


 和馬さんが、いない。 言われてみれば、今朝からどこにも姿がない。 別件かなぁ?


「ってか、荷物どうすんの?」

「鉱山の道具、置いてけないじゃん!」

「牛は……連れていけますかしら……」

「馬も、大事です……」

「おい誰か、村の外の地図あるか」

「ないわ。 聞いたこともないで」


 ざわざわと、みんな会話していた。 しばらくして、花山院清嗣さんが口を開いた。


「嬢ちゃん。 儂らは、ここの者だ。 村を捨てるなんてできん!」

「存じております、しかし……」

「わかってくれ、村長代理殿」


 清嗣さんは、そう言って笑った。 困ったような笑い方だった。


 誰も反対しなかった。 みんな同じ意見らしかった。


 美羽は、長いあいだ黙っていた。 それから、深く頭を下げた。


「よろしいのですか? ここからは修羅場……命の保障はございませんよ」


 望美さんが、箒を担ぎ直した。


「いいよ〜 店、散らかしたままだと落ち着かないし〜」


 莉央さんが、腕をまくった。


「あ〜し、仕込み中だかんね。 抜けられないっつーの」


 恵さんが、胸を張った。


「怪我人が出るなら、私が必要ですよね!」


 理屈になっていない。 全員、理屈になっていない。


 でも、誰一人として、逃げる話をしていなかった。


 美羽が、顔を上げた。


「わかりました。 これより『櫻井村降臨祭』を行います!」


ーー櫻井村降臨祭。 神を呼ぶための祭の開催だ。 


 みんなは喝采をあげて準備に取り掛かり始めた。


 誰も説明を求めなかった。 役割分担まで、勝手に決まっていく。


「幕はうちが出すわ。 蔵にあるから」

「櫓は組める。 日暮れまでにな」

「あ〜し、炊き出しやるわ。 人数分いけるっしょ」

「鉱山から照明持ってこよ〜」

「包帯と薬を、広場に運びます!」

「お神酒は儂の蔵のを出そう」


 慣れた手つきだった。 前にもやったことがある人たちの動き方だった。


 なのに、全員が自分の過去を思い出せないーーはずなのに。


 私は、広場の隅でそれを見ていた。 そして、家まで戻った私は、風呂敷を包んで、逃走の準備を始めた。


 私は、この村の住人じゃない。 村外から来た。 たしかに契約書にサインしたし、掟も読んでないし、守り神も殺したし、妖怪も追い出したけど。


 私は、ここの者じゃない。 こんな時間で死ぬ義理は一切ないのだ。


 家畜小屋のほうへ行こうとして、玄関の引き戸を開けた。


「み、ず、き?」


 美羽が立っていた。 コマンド! 逃げるを選択ーーエンディングへ!


「……」

「逃しませんわよ?」


 美羽は、笑っていた。 怖い。 


「……どいてくれないかなぁ」

「お断りしますわ」

「私、この村の人間じゃないんだけどなぁ」

「いいえ、この村の住人ですわ!」

「でも、出られるでしょ」

「出られますわよ」


 あっさり認められた。 逆に怖かった。


「瑞稀は、お出になれますわ。……でも」


 美羽は、一歩だけ近づいた。


「許すわけないでしょ? 責任を取ってくださいませ、瑞稀」


 風呂敷の結び目を、握る手が止まった。 荷物がずるりと落ちて行く。


「……私のことを責任、とってくださいませ!」


 美羽は、最後にそう言った。 声が、少しだけ揺れていた。


ーー関係ないよね? この村長、どさくさに紛れて、私を絡めとるつもりだ。


「……祭って、何時から?」

「……! 日暮れからですわ!」

「ご飯出る?」


 美羽が、目を見開いた。 それから、泣きそうな顔で笑った。


 どうやら、逃げるタイミングを失ってしまったようだーー

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