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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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その24 村を崩壊させよう!

 私は縁側に立って、装備を確認した。


 小川雑貨で買った、きゅうり。 砂糖と水を固めて作った、鼈甲飴。 借りてきた包帯。 そして、丸暗記した作法。 頭の中に知識は全部入っている。 


「姉ちゃん! きゅう……」

「はい」


 きゅうりを差し出した。 河童の動きが、止まった。


 そして、ばりばり食べ始めた。 ーー別にこのまま、去ってもいいんだけれど。


 私は、ハンマーでカッパの皿を割った。 クソガキには、天誅だ。


「二度と私のズボンに触らないで、この変態野郎!」


 一体目、攻略完了。


 二体目。 道の真ん中で、白いワンピースが待っていた。 


「私、きれーー」

「はい飴!」

「ッ」


 女が、びくりと跳ねた。 マスクに手をかけていた指が止まる。 私は鼈甲飴を放り投げる。 私はその横を素通りした。


 二体目、攻略完了。


 三体目。 傘をかぶった小さいのが、盆を持って立っていた。


「……お豆腐、いかがですか」

「もらう」

「え」

「もらうって」


 豆腐小僧は、硬直した。


 それから、おそるおそる盆を差し出してくる。 私は豆腐を受け取って、持ってきた皿に乗せた。 ーー食べないけどね。


「ありがとう」

「……」

「美味しそうだね」

「……うん」


 妖怪が、照れた。 誰にも受け取ってもらえない豆腐を、何十年も、何百年も差し出してきたんだと思う。 ーー捨てるけどね?


 三体目、攻略完了。


 雑貨屋の前。 箒と桶と鍋が、今夜も勝手に動いていた。


 私は、箒の前に立った。


「あんた、箒子」

 

 ピタリ。 箒は静かに地面に落ちた。 名前を呼ばれると静まる。 書いてあった通りだった。 ーー名前って、適当でいいらしい。


 診療所の前。 包帯の人がゆらゆら揺れていた。


「ウウ……」

「足りない?」

「ウウウウ」

「じゃあ巻く」


 私は持って来た包帯を巻いた。 腕から、肩から、首から、頭まで。 丁寧に、隙間なく。 包帯を巻かれたいだけの妖怪だったらしい。


 巻き終わると、嬉しそうに両手を上げて、ゆらゆらと林のほうへ去っていった。


 四体目、攻略完了。


 天狗には鯖。 鬼には豆。 一つ足りないには、一つあげようーー


 気づけば、空が白んでいた。 私は、村の真ん中に立っていた。


 朝まで、退治して。 そして、正気に戻ってふと思う。


ーー私、なにやっているんだろう? 徹夜で、妖怪に、きゅうりと飴と豆腐と包帯を配って回った。


 これは退治なのか。 どちらかというと、配給じゃないだろうか。


 しかも、お金は全部なくなった。 村の秘密には、一歩も近づいていない。


「み、瑞稀……あわわ。 こんな時間に会えるなんて……はわわ」


ーーひとみ? 貴方は今回の番外編では、エキストラでしょう?


 振り向いて、私は二度見した。 ーー美羽だった。


 その格好はTシャツに別のシャツの羽織りをかぶって、下はジーンズだった。


 露出はゼロ。 スリットもゼロ。 胸チラも脇チラもヘソチラもゼローー


「……そんなに、見ないでくださいませ」


 私が見ると、恥ずかしそうにモジモジしている。 なんで?


「なんで」

「好きな人の前では、綺麗にアピールしたいですの!」

「はあ?」


 顔が赤い。 裾を引っ張っている。 膝をすり合わせている。


 ラフな様子を見られた彼女かよ! いつものアンタの方が恥ずかしいよ!


 美羽は、羽織りの袖を直しながら、村の様子を見渡した。 きゅうりの蔕。 飴の袋。 豆腐の皿。


「……瑞稀。 これは?」

「退治した」

「退治?」

「作法を守って、全部帰ってもらった。 たぶん今夜からは、畑も荒らされない」


 美羽は、長いあいだ黙っていた。


 それから、ぽつりと言った。


「……大変なことをしてくれましたね、瑞稀……」

「褒めてる?」

「逆ですわ……最悪な状況ですの……」


ーーどういうこと? これでゲームクリアなのかなぁ?


「妖怪が村から消えた……つまり、ここは空になった……」

「……うん?」


ーーまさか。 聞きたくないよ、その先の事実は。


「来ますわよ、悪霊が……」


 どうやら、私のやっている行為は、この村を崩壊させる行為だったらしい。

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