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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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その22 夜の村を探索しよう!

 次の日の朝。 昨日、村の守り神ーー熊吉を殺した私。 悲嘆に暮れる美羽を横目に、家に帰ってふて寝していたけれど。


「……は?」


 縁側から見渡して、まず意味が分からなかった。


 畦が崩されている。 水田の水が抜かれて、泥が剥き出しになっている。 そして、育てていた今シーズン最後のワサビが、全部引き抜かれていた。


 ーー全部だ。 一本も残らず。 畑の真ん中に、きれいに積み上げられていた。 高さは私の腰くらい。 葉の向きまで揃っている。


ーー優秀な助っ人? 雇った覚えないけど。


「……うわ。 なにこれ?」


ーー紙が一枚置いてあった。 『姉ちゃん、きゅうり作ってよ!』


 泥の上には、足跡が無数に残っていた。 小さい。 子供くらいの大きさ。 そして、全部裸足だった。


ーーこれが美羽の言っていた悪霊の仕業?


 慌てて小屋を見に行った。


 牛のことねは、いた。 鶏のひとみと姫様も、牛の美羽も豚の美羽も、ちゃんといた。

 アヒル小屋も三十羽揃っている。


 気を取り直して村の中に行くと、人の声が聞こえてきた。


 道の真ん中で、大木勝也が風呂敷を三つも背負って、望美さんを引っ張っていた。


「だから、一緒に来ようって!」

「行かないよ〜」

「なんでだよ! この村もう駄目だって!」


 どうやら、望美さんも一緒に行こうと誘っているようだった。


ーーまさか、この村を捨てるつもり?


 望美さんは、店の軒先で箒を持ったまま、いつもの顔で首を振っている。


「私、ここにいるから〜」

「なんでだよ!」


 勝也さんは地面を蹴って、それでも諦めずに詰め寄った。


「小川さん……いや、望美! この村は危険なんだ、昨日の晩変な女に追いかけ回されたんだよ!」

「それって〜 勝也さんがナンパしたせいじゃないですか〜」

「確かにその子に、かわいいって言ったけど……」


 勝也さんが、ぴたりと黙った。 


「ホラ〜」

「違うんだって! その女、マスクをしててさ『これでも?』ってそのマスクを外したんだよ! そしたら……ああ、恐ろしい! 俺、逃げるわ!」


 勝也さんは、顔を真っ青にして、風呂敷を抱え直して走っていった。 村の出口のほうへ。


 望美さんは、それから何事もなかったように箒を動かし始めた。


「あら〜 瑞稀ちゃん。 おはよう〜」

「……おはようございます」

「畑、やられちゃった?」

「……はい」

「そっか〜 私も店の棚も商品入れ替わちゃって……大変よ〜」


 笑っていた。 箒を動かす手も止まらない。 慣れている人の反応だった。


「そうそう、あ〜しなんか、メニュー表を全部豆腐にされちゃってさ! どんだけヘルシー嗜好なんて!」

「私もです! 包帯を大量に奪われてしまいました……」


 村を回ってみて分かったのは、被害が全員に出ているということだった。


 莉央さんは、むしろ興奮していた。


「やばいじゃん! これ絶対あの話じゃん!」

「爺さん?」

「んー? 妖怪?」


ーー妖怪。 悪霊だけじゃないんだ。


 情報を集めた結果、悪霊ーーイタズラ妖怪たちは夜に出没するらしい。


 日が落ちてから。 村の人は全員、日が暮れたら家に入って、戸を閉めて、朝まで出ない。


 そして誰も、自分の目で見たことがない。


「見た人は?」

「いないよ〜? いたら妖怪じゃないじゃん」


 葵さんは、前と同じことを言った。


 つまり、こうだ。


 この村には何かが出る。 全員が知っている。 誰も見ていない。 そして私が、その何かを森から出したとーー


 家に戻って、私は縁側に座り込んだ。


 一つ。 戸を閉めて、布団をかぶって、朝まで待つ。 村の全員と同じやり方だ。

 たぶん、安全だ。 


 二つ。 見に行く。


 誰も見たことがないなら、見た人が一人いればいい。

 正体が分かれば、対処も分かる。 この村で何か分かったことがある時は、だいたい自分で見に行った時だった。


 私は立ち上がって、懐中電灯を取り出した。 灯磨さんにもらった、電池の仕組みが分からないやつだ。


 そこで、昨日の美羽の顔が浮かんだ。 夜の外出は禁止だと、あの子は言っていた。 掟に書いてあると、あの電話帳みたいな本に。


 そして私は、その本の中身を一行も読まずにサインした。


ーー村の掟? なにそれ! 知るか!


 そもそも、守る気で読まなかったわけじゃない。 面倒くさかっただけだ。


 読んでいないものは、守れない。 守れないものは、破れない。


 理屈は通っている。 通っていないのは、私の頭だ。 日が落ちた。 私は、懐中電灯のスイッチを入れて、玄関の引き戸を開けた。


ーー夜の探索開始だ!




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