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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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その21 村の守り神を殺そう!

「もう、熊吉ったら。 かわいい子ですわね!」

「ゴア……」

「でも、反省しないといけませんわよ?」

「ゴ……」


 人を襲わない。 畑を荒らさない。 川の魚を取りすぎない。 指を立てて一つずつ数える美羽の前で、熊はしゅんと首を垂れていた。


 体長二メートル超の羆が、ミニスカートのお嬢様に叱られて小さくなっている。 絵面としては、そうとう異常だった。


「……ところで瑞稀。 後でお話がありますわよ」

「はい」


 逆らえなかった。 助けてもらった立場だからだ。 でも、そろそろかな?


「ゴ……ア……」

「……熊吉? 熊吉!」


 熊吉が、ゆっくりと横に傾いだ。 そのまま地面に倒れ込む。 口の端から、白い泡が垂れている。 やっと死んだか。 ゲームクリア〜


「熊吉!? どうなさいましたの! 息が……嘘」


 美羽が、膝をついて熊吉の首にしがみついた。 その表情は悲しみに満ち溢れていた。


「討伐完了っと」

「瑞稀! 何かご存じ……」

「ああ、それね」


 私は、腰に手を当てて、自慢気に胸を張った。 


「毒だよ。 鮭の中に猛毒を入れたんだ。 ソイツ、丸ごと咥えてやんの〜 毒が入っているとは知らずにね?」

「……瑞稀」


ーーさて。 報告に行こうかなぁ。


「じゃあ私、依頼達成の報告に行くから……」

「誰か依頼したんですの?」

「え?」


 美羽が、振り向いた。 表情が、豹変していた。 笑っていない。 怒ってもいない。 そのどちらでもなかった。 


「う〜ん。 何者なのかな? ……よくわからない」

「そんなモノの指示に従ったと言いますの?」

「うん、そうだけど……」

「大変なことをしましたね、瑞稀」


 背筋が凍った。 美羽の発言によって、私の中である可能性が浮上したからだ。


ーーもしかして。 私は、嵌められた?


「……美羽?」

「どうして」


 美羽は、熊の背に手を置いたまま、低い声で言った。


「どうして、熊吉を殺したのです」

「……だって、討伐しろって……条件だって。 熊を倒したら、村の秘密を教えてくれるって」


 美羽の手が、止まった。 そして、長い息を吐いた。 


「瑞稀。 熊吉が何なのか、お分かりになって?」

「……ただの危険な熊」


 美羽は、首を横に振った。


「櫻井村の、守り神ですわ」

「……」


 風が止まった。


「この子がこの森にいる限り、村の外から良くないものが入れませんわ」

「でも……」


ーー開けて、瑞稀。 一緒に寝ましょう。


「へえ?……だったら、認めるんだ、あの嫌がらせが自分だって」

「あれは、特別なものですわ。 熊吉が今まで抑えていたのに……」


 美羽は、熊吉の頭を撫でた。 熊吉は、もう顔を上げることはないのに。


「熊吉がいなくなれば、あれらは出てきますわ。 村へ」

「……どうなるの」

「順に奪っていくでしょうね。 この村の全てを……」


 美羽は、こちらを見なかった。 私は、口の中が乾いていくのを感じた。


「じゃあ、灯磨さんが熊を倒せって言ったのは」

「灯磨さんは、仰っていませんわ。 村が、あの方の口を使ったのです」


 NPCみたいになった、と私は思った。

 ハッとした顔で逃げていった背中も、見た。


「村が、自分の守り神を殺させようとしたってこと?」

「……」

「なんで」

「……わかりませんわ」


 美羽が、初めて「わからない」と言った。


 私は、震える手で熊を見つめた。


 注視。 さっきは「羆」と出た。 好物が蜂蜜と鮭で、好感度が低いやつだと。


ーーまさか、この機能ってミスリードだったの? 


 便利だと思っていた。 違った。 私の思い込みを確認するための道具だったんだ。


 これから、一体どうなるのかな?

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