その18 村人と仲良くなろう!
数日後。 私が新しい土地で農業をしていると、美羽がやってきた。
この前の喧嘩のことは、どうやら忘れたらしい。 美羽は、私の牧場の様子を見て、眉を顰めながら見つめてこう言った。
「瑞稀? 牧場って知ってますの?」
「知ってるよ? ……ほら、今放牧しているでしょ?」
「放牧? これは放牧ではありませんわよ!」
美羽は家畜小屋を指した。
「なんで、入り口の手前に畑や水田がありますの! ほら、牛や豚たちが戸惑っていますわ!」
美羽がそう指指すと、家畜場の入り口で戸惑っている『牛美羽』『豚美羽』がいた。
畑の畦道の手前で、牛が首を振っている。 その後ろで、豚が鼻をふごふご鳴らしている。 たしかに、通り道がない。 水田を踏むか、畑を踏むか、二択だ。
「仕方ないじゃん。 計画的な農業運営だよ」
「なんですのそれは!」
まったく、相変わらずうるさいな〜 そんなことをいうためにわざわざやって来た訳?
ひとしきり叫んだあと、美羽は咳払いをした。 乱れた髪を直して、スカートの裾を払って、無駄に優雅な姿勢に戻る。 この切り替えの早さだけは、素直に感心するね。
「ゴホン。 ……瑞稀。 貴方、村の住民たちと仲良くやっていますの?」
「やってるよ。 望美さんの店で種買ってるし、莉央さんにはカブ売ってるし」
「それは商売ですわ」
「……中川さんと、たまに世間話するけど」
「それは診療所でお会いした時だけでしょう?」
「土間さんとは、ちょっと喋った」
「坊主の話を聞かされただけと伺っておりますわ」
ーーなんで知ってるの。 保護者気取りなのかな?
美羽は、ふう、と息を吐いた。 珍しく、本気で呆れている顔だった。
「瑞稀。 この村には、好意という仕組みがございますの」
「好感度のことだよね? それって、攻略に関係あるの?」
「はあ。 村の方々に贈り物をして、親しくなると、色々と教えてくださいますのよ? それこそ……私の好感度を上げれば、貴方の知りたいことも……」
「……へえ?」
手が止まった。 私は美羽の顔をまじまじと睨む。
「……色々って」
「色々ですわ」
美羽は、それ以上言わなかった。 でも、私は理解した。 美羽がかまって、欲しいだけだよね?
「美羽。 最初からそれを言いに来たの?」
「私は指導に参りましたのよ。 新参者の貴方が村に溶け込めるために……」
「嘘だね。 本当は、かまって欲しいだけでしょ」
「ち、違いますわよ? ……本当に違いますからね!」
美羽は、そう言うと逃げるように去って行った。 ーー本当に何しに来たの?
その日の午後、私は縁側で考えていた。 好きな物を贈ると喜ばれる。 好きな物は、話していればそのうち分かる。
美羽が最初の日に言っていたことだ。 あの時は聞き流したんだけど、攻略に必要なら話は別である。
ーー面倒くせぇ。 なんで、あんな陽キャラ軍団と連まないといけないの?
というか、これってゲームなんだよね? だったら、便利機能とかないの?
例えば、アイテムの説明とか、チュートリアルとかーー
その時だった。 『なるほど、わかりました』と言うエタナの声がしたと思いきや、私の頭の中に、一つの『常識』が芽生えた。
ーー注視すると、要約が見れるという『常識』が。
「はあ……」
人の認識を変える、相変わらずの嫌な行為だね、エタナ?




