その17 農地を広げよう
家に帰ってから、私は縁側で計算した。 結論。 やっぱり農業だ。
ーー鉱山は魔物が出るし、狩や魚釣りは陽キャが出る。
仕方がない。 私は、農業を再開させた。 しかし、私はある問題に直面することになった。
ーー農地が足りない。 圧倒的にだ。
今の畑は、全部米の水田とワサビ畑のみだ。 一見効率よく稼げそうなイメージがある。
しかし。 このゲーム。 季節がしっかりしているのか、米はエラく日数がかかる。 ワサビもいつかは、植えても成長しなくなるのだ。
そのため、取り壊して新たな作物を育てなければならない。
ーーそれって正直面倒くさい。 え? じゃなにもしなくていいじゃん。
そう思ってたから、昨日までの自分は畑を放置しようとしてたんだ。
でも、それは変更だ。 一刻も早く、この村の謎を暴いてやる。
翌朝、私は自分の敷地をぐるりと歩いてみた。
ーーやっぱりあった。 私に与えられた敷地に面した場所に、フェンスとバリケード。
錆びた金網と、木の柵を組み合わせたもの。 人の背より高い。 私は金網の隙間から、向こうを覗いてみる。
その向こうは、荒廃してこそいたが、広い敷地だった。 石だらけで、雑草が腰の高さまで伸びていて、枯れた木が何本か倒れている。 でも、広い。
ーーこれは、農業ゲームの定番、農地拡張できるね。
案の定、バリケードの張り紙にこう書いてあった。
『この農地が欲しい方は櫻井家まで連絡を』
連絡方法が分からなかったので、とりあえず紙に書いて出荷箱に入れた。
ーーえ? 美羽に直接言えばって? 嫌だよ。 美羽が嫌いだもん。
しかし、次の日。 美羽が優雅な所作でやってきた。 彼女の姿や様子が絵になることは認めるけれどさ。 なんだかなぁ?
前はまだスリットはあったけどロングスカートだったのに、ミニスカートにしたの? 露出多すぎじゃない? そんなに私にアピールしたいの? 変態だね。
「農地を増やしたいんだけど……」
「まあ。 いいですわよ」
あっさりだった。 拍子抜けするくらい。 問題はここからだ。
「で、どうすればいいの? お金?」
「では、私の発言を復唱してくださいませ」
「ハア? ……うん。 どうぞ」
「私、倉石瑞稀は」
「私、倉石瑞稀は?」
「櫻井美羽を愛しています」
「櫻井美羽をあ……って言える訳ないでしょ」
ーー危なかった。 あと半秒で言っていたよ。
「あら、残念ですわ」
「残念じゃないよ! この露出変態女!」
「なんですの、瑞稀の馬鹿!」
美羽はそう言うと、フェンスに向けて、思いっきり張り手をした。
ーードゥ。
フェンスとバリケードが木端になって、敷地に散らばった。
ーーやっぱり、化け物だよね?
そのまま、美羽はプンプンしながら帰って行った。
「……帰っちゃったよ。 まあ、いっか!」
その時、また体が勝手に動いた。 あのポーズだーー
『瑞稀、おめでとうございます! 農地拡張です!』
ーーこのゲーム。 こんな流れでいいのかなぁ?




