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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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その13 家畜を買おう!

 菜奈さんのお父様ーー花山院清嗣のおかげで、家はたちまち完成した。


 本当に三日だった。 しかも前より広いし、綺麗だ!


「君が倉石瑞稀か……若いな」

「はあ。 どうも……」


 清嗣さんは、ビシッとしていた。 この村の男たちは、みんな貴族の人みたい。


 ーーあ、一人は論外ね。 あの逃げ腰陽キャめ。


「すごいです。 ありがとうございます……でも」

「どうかしたのかい?」


 完璧だった。 完璧だったんだけど。


「……あの、清嗣さん。 なんで、家の隣にもう二つ建ってるんですか」


 新居の脇に、頑丈そうな小屋が二棟。 どちらも私が頼んだ覚えはない。


「家畜小屋と鶏小屋だ」

「頼んでないです」

「私からの依頼ですわ!」

「美羽! また、アンタの仕業?」


 意味が分からない。 なにがしたいのさ! まったく!


「せっかくですから、牛や鶏をお買いになるといいですわ!」

「小屋を潰すって選択肢は?」

「勿体ないですわ! 黒崎畜産店へいらっしゃいな」


 結局、こうなる。 美羽は私が何か困るたびに、行き先を一つずつ増やしてくる。


 黒崎畜産店は、村の北側にあった。


 牧場が併設されていて、柵の向こうで牛が数頭、のんびり草を食んでいる。 鶏の声も聞こえる。 空気が、はっきりと牧場の匂いだった。


 事務所に入ると、オーバーオール姿の女性と子供がいた。


「……初めまして、貴方の噂は届いております……」

「初めまして……」


 奥さんと娘さんでお揃いなのが微笑ましい。 怜子さんと千早ちゃんだそうだ。


「家畜が欲しいのですね……」

「はい。 小屋が勝手に建ったので」

「お母様、小屋って勝手に建つのですか?」

「千早……それは、ものの例えです」

「そうなんですね、お母様!」


ーーああ。 純粋な子供だなぁ。 私にも、こんな時があったのかな?


 家畜の説明は簡単だった。


 牛は毎朝ミルクを出す。 鶏は毎朝卵を産む。 どちらも、餌をやって、撫でてやれば、質が上がっていく。


 他にも、アヒルや豚や羊に山羊もいた。 馬も買えるらしいーー


「撫でると質が上がるんですか?」

「はい。 動物に愛情を与えれば、貴方に帰ってきますよ……」


 もう驚かない。 カブも抜けば抜くほど良くなったし。


 値段は、鶏が一羽二千円、牛が一頭一万円。 


 私は鶏を二羽と、牛を一頭買うことにした。


 美羽から、ぶんど…もらったお金は、それでなくなった。 ーー最初からそのつもりだったんだね? 美羽!


「ありがとうございます。 ……名前をつけてください」

「名前?」

「名前には、魂が宿りますので……」

「……なまえ、だいじだよ」


 千早ちゃんが、いつの間にか私のすぐ横に立って、じっとこっちを見上げている。


「そっか。 じゃあ、ちゃんと考えないとね」

「はい」


 こくり、と頷いて、また奥さんの後ろに隠れた。 


 ーー私の周りには、いないタイプの子だね?


 帰り道は、なかなかの行列になった。


 牛を一頭引いて、片手に鶏の入った籠。 坂道を上がる私の後ろを、美羽が上機嫌でついてくる。


「素敵ですわ! どんどん暮らしが豊かになっていきますのね!」

「……」

「次は、馬なんてどうです?」

「……」


ーー私は、美羽を無視した。 本編でも無視しているから、別にいいでしょ?


 小屋に入れると、牛も鶏も、当たり前みたいに自分の場所に収まった。 まるで最初からそこにいたみたいに。


 翌朝。 鶏小屋を覗くと、藁の上に卵が二つ転がっていた。 牛小屋の桶には、ミルクがなみなみと入っていた。 誰が搾ったのかは聞かないことにする。


 名前は、その日の夕方に決めた。


 牛は、のんびりしていて、でもたまにこっちをじっと見てくる。 鶏は、二羽ともやたらと喧嘩っ早い。


「牛は、ことね」

「まあ」

「鶏はひとみと、姫様」


 言ってから、自分でも少し驚いた。

 考えて決めたわけじゃない。 顔を見ていたら、勝手にその名前が出てきた。


 あの三人に会わなくなって、どれくらい経つんだろう。


 この村に来てから、私は一度も、帰ることを考えていない。


「……瑞稀」

「なに」

「私の名前は、つけてくださいませんの?」


 美羽が、柵にもたれてこっちを見ていた。 期待する目だ。


 私は牛の首を撫でながら、ぶっきらぼうに答えた。


「美羽はまた今度ね……」


 美羽は、しばらく黙っていた。 それから、嬉しそうな声で「ええ」と言った。


ーー純粋な奴がここにもいたんだ。 忘れてたよ。

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