↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

326/347

その10 カブを独り占めしよう!

 次の日の朝。 玄関の引き戸を開けると、カブの種が大量に届いていた。


 昨日、雑貨屋でまとめ買いした分だ。 望美さんは「明日の朝ね〜」と軽く言っていたけれど、まさかこの量を一晩で用意してくるとは思わなかった。


ーーまあ、ゲームだし。 例によって、誰が運んできたのかは分からない。


「……やるか」


 私は、それを一日かけて撒いて水やりをする。 ただそれだけの日々を過ごした。


 撒いて、水をやって、日が暮れたら寝る。 不思議と苦にならない。 むしろ、畑が一区画ずつ緑に埋まっていくのが、単純に気持ちいい。

 

 数日後、畑はカブが大量にできていた。


 収穫を始めて、五本目。 六本目。 七本目。


 八本目を引き抜いた瞬間、体が勝手にポーズを決め始めた。


「……」


 抜いたカブを両手で頭上へ。 片足を半歩前へ。 なぜか胸を張って、顎を上げて。 完全に表彰台の構えだった。


『おめでとう瑞稀、カブのランクが銅に上がりました!』


 ーーエタナ?


 久しぶりに聞いた声だった。 この村に来てから、何度呼びかけても返ってこなかった声。 それが今聞こえた。


「ちょっと! エタナ! 聞きたいことが山ほどあるんだけど!」


 返事はなかった。 当然のように、なかった。


 周りを見渡すと、カブの様子が一変していた。 葉の緑が濃くなって、根が一回り大きい。 さっきまでと明らかに違う。


 なんだろう? 成長したのかなぁ? まあ、ゲームだから当然かーー


 この前までの分も含めて、たくさん取ったからね。


 その後ーー100本取った時に、またポーズを取らされた。 


『おめでとう瑞稀、カブのランクが銀に上がりました!』

「……」


 見ると、さらに畑のカブたちが輝いて見えた。 物理的に輝いていた。 葉の縁が、日の光を弾いて白く光っている。


 そして、それから丁度200本抜いた時に。 またポーズを取らされる。


『おめでとう瑞稀、カブのランクが金に上がりました!』

「……はあ」


ーーなるほどね。


 法則が見えてきた。 抜けば抜くほど、良い物になる。 抜く手間は変わらないのに、価値だけが勝手に上がっていく。


 私は無心でカブを抜き続けた。 日が暮れても抜いた。 


 そして、ついに。 金になってから500本目ーー


 私は、畑で大はしゃぎするポーズを取らされた。


 両手を突き上げて、飛び跳ねて、最後にくるりと一回転。 誰も見ていない畑のど真ん中で。 自分の意思とは一ミリも関係なくだ。


『素晴らしい! カブのランクがプラチナランクに上がりました!』

「エタナ! さっきから、恥ずかしいんだよ!」

『……』

「聞こえているよね?」


 でも、おそらく、これがMAXだろう。 そんなきがした。


 さて、ここからが本題だ。 私はそれらのカブを出荷箱には入れなかった。 一切、一つも。 


 ーーだって、美羽に従っているみたいで嫌だから。


 だけど、その代わり。 莉央さんの料理店に売りつけた。


 ーーしかし、その量は一日に数本だけだ。


「お! いいじゃん! 1000円ね!」


 店の裏口で、莉央さんと会話する。 今日の私は、銅のカブを一本だけ持ってきていた。


 莉央さんは、そのカブを指で弾いて、匂いを嗅いで、それからにやりと笑った。


「あ〜し、分かるんだけど。 これ、めっちゃいいやつじゃん」


 最初のただのカブはたいした値段はつかなかったけど、銅は、倍の値段で売れた。


ーーこれは儲かる。 私は、カブを全部部屋の収納箱に入れて、莉央さんに買い取ってもらうことに決めたのだった。


 腐らないのかって? 当たり前じゃん、ゲームなんだから。


 その日の夜、私は久しぶりにいい気分で布団に入った。


ーー明日から、ぐうたらするぞ〜 カブを売る時間以外は、自由時間だ。


 翌朝。 美羽が来た。 なんでも、お金を徴収に来たらしい。


「瑞稀? 村に住むのなら、住民税としてお金をお納めくださいませ! それが、常識ですのよ!」

「え? お金なんてないよ?」

「なら、なにかをお売りくださいまし」

「売るものもないよ?」

「……あら? そこにカブがありますわ! ……なにこの数」

「あ。 これは、駄目だよ不良品だから〜」

「え? すごく美味しそうですわよ?」

「駄目」

「……むう。 なら、私にくださいませ! お金なら出しますわよ」

「いや」

「む、むう。 システム場、強奪ができませんわ……悔しいですの」

「システム場無理なの? 残念だったね? バイバイ」


ーー私がそう言うと、納得がいかない表情で去って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。