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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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その9 魚釣りをしよう!

 昨日、畑の黒岩に向き合った。 銀のツルハシを振り上げて、振り下ろした。


 あれだけ弾かれた岩が、一撃で割れた。 そして岩はバッグへ収まっていく。


「……気持ちいい」


 昨日の苛立ちが、まとめて消えた気がした。 玄一郎さん、ありがとう。 勝也さんのことも、もうどうでもよくなってきた気がした。


 そして、今日の朝。 畑を耕して、準備万端! カブをまとめ買いだ!


 私は雑貨屋へ向かった。 気分は高揚していた。


 そんな私の目の前ーー村の一角に、人だかりができていた。


「あら〜 物騒ね〜」

「大丈夫ですか? しっかりしてください! 大木さん!」


 望美さんの間延びした声と、中川さんの必死な声。 人の輪の隙間から覗き込んで、私は固まった。


 勝也さんが縛り付けられていた。


 ぐるぐる巻きの縄。 項垂れた首。 でも、不思議と血は出ていない。 殴られた跡も見当たらない。 


 そして、一枚の紙がデカデカと貼られていた。


「なにこれ? 張り紙? 『俺、大木勝也は倉石瑞稀に無礼を働きました』 やば! ウケる!」


 莉央さんが声に出して読み上げた。 ご丁寧に、村中に聞こえる声で。


 全員の視線が、こっちを向いた。


「あの、私、何もしてないですよ!?」


 誰も疑っていなかった。 それどころか、莉央さんはけらけら笑っているし、望美さんは「物騒ね〜」と言いながらスマホも出さない。 そもそもこの村にスマホは使えないし、警察もいない。


「……なんとも、愚かな男だな。 のう、灯磨よ?」

「……」


 いつの間にか、玄一郎さんと灯磨さんも来ていた。 玄一郎さんは髭を撫でながら、勝也さんを一瞥しただけだった。 灯磨さんは、相変わらず何も言わない。

 でも、私と目が合った時、ほんの少しだけ、視線を外すのが遅かった気がした。


「ウァ。 これが噂の妖怪の仕業って奴?」

「マジやばいじゃん! 村の規律、ちゃんと読も!」


 環奈さんと葵さんだ。 つなぎ姿のまま、今から鉱山へ行く途中らしい。


 妖怪。 村の規律。 聞き捨てならない単語が、二つ同時に出てきたよ?


「あの、妖怪って?」

「知らないの? ウケる!」

「この村、たまに出るんだよね〜。 規律を破ったら、朝にはこうなってるの」

「見た人は?」

「いないよ〜? いたら妖怪じゃないじゃん」


 葵さんは、あっけらかんとそう言った。 誰も見たことがないのに、誰もが知っている。 ーーさすがゲームの世界ってこと?


 村の規律とやらは、美羽に吐いてもらうことにして、カブを買った。


ーー私が大量発注したせいか、カブの種は明日の朝届く仕組みのようだ。


 暇になって、時間ができた私は川にいた。


 考え事をするには、ちょうどいい場所だと思ったからだ。 


 水面に糸を垂らす。 どうやら、魚がかかったかどうかは、浮袋が教えてくれるようだ。 魚釣りなんて、ゲームでしかしないから、詳しいことは知らないけど。


「まあ、瑞稀。 こんなところにいらしたんですの」


ーー来た! 美羽だった。 風呂敷包みを提げて、川原を下りてくる。 中身はたぶんお弁当だ。 


「……美羽」

「はい」

「大木さんのこと、聞いた?」

「ええ。 村中の噂ですわ。 ご愁傷様ですわね」


 美羽は、私の隣に腰を下ろした。 川面を見たまま、風呂敷を解いている。


「あの人、私に無礼を働いた、ってことになってた」

「そのようですわね」

「……美羽は、何か知らないの。 そもそも、規律ってなに?」

「あら」


 こちらを向いた美羽は、にっこり笑っていた。 いつもの顔だった。


「貴方が適当にサインした、用紙に書いてありますわ!」

「……」


 私は、竿を握り直した。 ぐうの音も出ない。


ーー話を変えよう。


「……ねえ。 昨日の夜、どこにいた?」

「瑞稀? もしかして、ですが……」


 美羽は、少しだけ首を傾げた。


「私を疑っておりますの? ……でしたら答えは『覚えてない』ですわね」

「……」


 その後、帰って規律を読もうとしたけど、忘れて寝てしまった。

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