すべては私の掌の上
櫻井家の応接室に、アタイらはまた三人が揃った。
瑞稀の奴。 大胆なことをしやがる。 絶対にアイツの仕業のはずなんだ。
ーーなのに、尻尾が掴めねぇ。
「まさか教頭までもが病院送りになっちまうとはなあ」
アタイは、ソファに沈み込んだ。 この座席は快適だよなぁ。
「精神摩耗による過労だそうよ」
「はっ。 過労で病院送りかよ!」
「そういうことになっているわ」
ことねは、涼しい顔で紅茶をすすっている。 いや、猫舌だからふうふうしてる。
美羽は、菓子の山を食べている。 ボリバリうるせいなぁ。
それにしても、完全に後手だぜ。 あの日の体育館は、ひどかったぜ。
教頭ーー校長代行の声が、スピーカーから流れ続けた。 応接室での暴言。 校長室での独り言。
それを生徒全員が聞いたんだよ。 公開処刑だぜ、ありゃ。
「なあ、ことね」
「なにかしら」
「瑞稀って、やべえな……」
ことねは、カップを置いた。
「二箇所よ」
「あ?」
「音声が録れていた場所。 応接室、校長室」
ーーああ。 そしてこれの、計3台か。 作ってるなぁ。
ことねは、立ち上がってポーズを決めている。 最高のポージングだぜ。
この前のアタイにつけられた、黒い粒みたいな奴を手に持っていた。
「……おい、美羽」
「なんですの?」
「お前、なんか知らねぇか。 盗聴器の特徴とか……」
「さあ? よくわかりませんことよ」
「美羽」
ことね様が、静かに呼んだ。
「貴女、瑞稀のためなら何でもするわよね? 盗聴器を教えたのは貴方?」
「……」
美羽は、バリバリ音を立てている。
「私、瑞稀のためならなんでもしますわ!」
ーーそれ、答えだろう。 だから、すぐに盗聴器に気づいたのか!
アタイは、背中が寒くなった。 コイツらーー
「ところで、ひとみ」
「なんだよ」
「体育大会は、もうすぐよ」
「……ああ」
「校長も、代行もいないわ。 誰が仕切ると思う?」
アタイは、答えなかった。 いや、答えなくても、わかってる。
あの学校で、あの行事を回せる人間は、もう一人しかいねぇ。
ーーだが、本当に開催されるのか? 不安だぜ。
◇◇◇
放課後。 私は、隣の学校に向かっていた。 学校の名前なんだったけ?
門をくぐると、みんなが私をみている。 コソコソとなにか話しているね?
ーーまあ。 この前。 ここの名所を貸し切ったから、当然かな?
通されたのは、応接室だった。 中には、三人が座っていた。
校長と教頭とーー私の中学時代の担任の先生だ。
「……倉石さん。 よく来てくれました」
「こちらこそ、ご協力頂きありがとうございます……」
私は、きっちりお辞儀をした。 礼儀は大事だもんね?
顔を上げると、元担任の先生が青ざめた顔で私を見ている。
「……先生?」
「ひぃ!」
ーーどうしたんだろう? 怯えているよ? その様子が面白いから、私はちょっと遊ぶことにした。
「どうしたんですか? お風邪でも引きました?」
「……いいえ。 問題ありません」
「ところで、アイツらは? 不登校?」
「……と……と……の三名は、自宅謹慎中で……」
「え? 可哀想だよ、登校させてあげてよ!」
「……しかし」
「まあ。 本人たちが嫌だって言うなら別だけど?」
先生は困った顔で、校長と教頭を見ている。 ーー三人とも青ざめてないで答えてくださいよ?
「……倉石さん。 彼女たちはメンタルを病んで……」
「嘘……」
ーーたかが、あの程度でメンタルを病むとかウケるよ?
私はあの状況を半年も経験したんだけどなぁ? 服とか、毎日汚されたよ? お陰で、制服の替えは何着も必要だったよ。
「……いいから『あの三人組を登校させろ』……いいですね?」
三人とも、まるで人形のように首を振った。
「……倉石さん」
「はい」
「貴方は、なにをしたいんですか?」
ーーん? 真剣なトーンで聞いてくるね? しょうがないな〜
私は、三人に向けてこう答えた。
「暇つぶしの遊びかなぁ?」
ーーさて。 次はなにをしようかなぁ?




