第18話 嘘だってすぐバレるよね?
「ひとみちゃん、ご飯食べていくでしょ?」
ーーはい出た。 ウチのお母さんの悪い癖だよ。
お母さんの声が響いてくる。 この人、なんでご飯を出したがるんだろう?
「えっと。 嬉しいですぅ」
「気持ち悪い、声出さないでよ……」
「こら! 瑞稀はまた、お友達にそんなことを言って!」
「駄目ですよぅ。 みんな、仲良しこよしが一番ですぅ」
ーーああ、最悪なんだけど? 我慢だ、私。
◇◇◇
食卓に並んだのは、普通の量だった。
ごはん。 味噌汁。 生姜焼き。 サラダ。 ーー普通。 うん、普通だ。
私は、ひと知れず胸をなでおろした。
だって、前に来た時なんて酷かったもんね。 どんぶりに山盛りのカレー。 その横に唐揚げの皿。 さらにうどん。
ーー学習したんだね、お母さん。 よかったね?
「お母様ぁ。 美味しいですぅ」
「あらあら。 いっぱい食べてね」
「はいぃ」
「母ちゃん、おかわり!」
「はい、護。 たんとお食べ。 ……瑞稀も、少しは食べなさい」
「食べてるよ」
「一口しか減ってないじゃない」
「……」
ーーほら。 また、始まった。 いちいちうるさいなぁ。
この家の食卓が、こんなにうるさかったことってあったかなぁ?
ーーまあ、どうでもいいけどね。
夜。 ひとみを玄関まで送った。
「じゃあな、瑞稀」
「うん」
「……その、なんだ。 悪かったな。 勝手に上がりこんで」
「本当だよ、もう来ないでね?」
「へへ。 ……またな」
ひとみは、手を振って歩いて行った。
スカートの裾が、街灯の下で揺れている。
私は、その背中が角を曲がるまで見送った。 ーーさて。
名演だったね? 吉澤ひとみ。 これからお家に帰るのかなぁ?
ーー違うよね? だって、報告しなくちゃいけないもんね。 ことねに。
自分の部屋に戻って、私は机の引き出しを開けた。
中から、小さな受信機を取り出す。 イヤホンを片方だけ、耳に差し込んだ。
ーーうん。 ちゃんと入ってる。 聞こえるよ?
スカートのヒラヒラにつけたんだ! 気づかないなんて哀れだね?
どこかに到着したのか、インターホンの音がした。
『よ、……』
『……』
ーーあれ? おかしいなぁ。 全然聞こえないよぉ?
私はベッドに寝転がって、目を閉じた。
イヤホンから、音が聴こえているはずなのになぁ?
重い門が軋む音がした。 それから、扉。
ーー川端の家って、こんな音するんだ?
誰かの声がした気がする。 ーーうん?
『……』
『……? どうしたんだよ?』
『……』
『え? なんだこりゃ! 虫か?』
あれ? 私は、イヤホンを押さえた。 まさか、バレた? どうしてーー
『なんだって! 盗聴? やられたぜ。 さすが……! 頼りになるぜ!』
『……』
それを最後に、盗聴機から、音が聞こえなくなった。




