校長の最後
入学式が終わった。 保護者のみなさんが、ぞろぞろと体育館から出ていく。
ちょっと、トラブル?があったけど。 つつがなく終わったね!
ーー嘘は言ってないよね? だって、本当に挨拶しかしてないもん。
私は舞台袖で、次の準備をしていた。 このあとは、二年生と三年生の始業式だからね。
そして体育館に、二年生と三年生が入ってくる。
みんな、去年より少しだけ大人びて見えるね。 制服の着方が、こなれてるっていうか。 張り切っているというか。
ーーさて。 どうしようかなぁ?
そして、始業式が始まろうとしていた。
私がみんなに挨拶をしようと、声を出そうとした瞬間ーー
『……えー、みなさん。 進級おめでとうございます。 新しい学年を迎えるにあたり……この理想学園の校長である、この私が、皆さんに……』
ーーこれは、なにかなぁ? 放送室からかぁ。 やられたね〜
校長先生が、喋っている。 誰にも邪魔されずに。
まあいいよ。 どうぞ、たっぷり喋ってください。 好きなだけーー
校長先生は、三十分以上も喋り続けている。 生徒たちは船を漕いでいる。
『……さて、私は今のこの状況に文句があります。 そもそも、今日、私が、このような形で挨拶をしているのは誰のせいだ!』
ーー校長先生のシャウトが、体育館に響き渡った。
生徒たちは、何事かと顔を見回している人がいっぱいだ。
『倉石瑞稀! 君の行為は、生徒会長の権限を逸脱している。 ……よって、理想学園校長の名に置いて。 君を、生徒会長から解雇する』
ーーああ。 そんな、直接的に来るんだねぇ? 予想外だったよ。
「そ、そんな! あんまりです。 校長先生!」
私は動揺のあまり、壇上で嘆いていた。
ーーが、当然相手がいるのは、放送室。 こちらの様子はわからない。
「酷いよ! あんまりだよ、どうして……なにがいけなかったんですか?」
私は俯く。 みんなからは、私が落ち込んでいるように見えるはずだ。
「……こんな、横暴は酷いよ」
私の嘆きに、生徒たちから同情の声が漏れ始める。
「そうだよな? 解雇はやり過ぎだろ」
「そっちの方が、横暴じゃないの?」
「そうだ、そうだ」
「というか、やり方が卑怯じゃない?」
「まともに、くれば負けると、わかっているじゃない?」
ーーニヤリ。 いい調子だ、悪くないね。
体育館の様子が、私に傾いている。 先生の一部が、苦い顔で睨んでいる。
そして、校長先生へ今の状況を伝えに行っていることだろう。
ーー放送室の鍵はかかっているんだけどな〜
だけど、それまでの間。 校長先生はというとーー
『そもそも、この私に、一介の凡人が楯突くのがおかしいんです。 川端ことねみたいに権力もない、ただの引きこもりだったくせに……調子に乗って……』
ーーどうしたのかなぁ? 校長先生、本音で喋りすぎだよ〜 もういいよ?
『この理想学園には、この私……ぐ、うう……ああぁ、ああ!』
その言葉を最後に、校長の声は止まった。
ーー慌てて、駆けつけた先生たちが、ドアを蹴破るとそこには泡を吹いて倒れた校長先生がいましたとさ。 めでたし、めでたしってね?




