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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
最終章

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ことね家同居計画

 春休みが明ける数日前。 アタイは家でことねと一緒に会話していた。


 ことねは寝転がって、猫のトラを撫でながら。 完全にくつろぎモードだ。


 今日は肩出しセーターとダメージジーンズという、なかなかにアタイの心臓を挑発するスタイルだ。 アタイに向けてポージングサービス付きだ。


 アタイは今日のことねの容姿について、三分間も語る機会をいただいた。


 その間、ことねは終始ご機嫌でアタイの話を聞いてくれていた。


 ーー客観的に一歩引いて考えると、ことねってナルシストなんだなぁ。


 「⋯⋯それで? 続きは?」

 「はい! セーターの肩から見える……」

 「ふふふ。 違うわよ、女子会とやらの続きよ」

 「ああ、そっちか。 ……あの後、一応瑞稀は舞香に謝罪してた」

 「一応ね⋯⋯」


 ことねは、トラの喉を指で掻いた。 トラはごろごろ喉を鳴らしている。


 「⋯⋯『変なこと言ってごめんね』だとよ」

 「⋯⋯なにも謝ってないじゃない、それ」

 「そうだよなぁ」


 あの夜、美羽が飛び出していって、しばらくして二人で戻ってきた。 


 二人が何を話したのか。 いや、そもそも話せたのか。 ーーアタイたちは聞けなかった。


 「⋯⋯美羽は?」

 「……朝メシはいつも通り二十人前食ってた」

 「⋯⋯そう」


 ことねの手が、一瞬止まった。


 「⋯⋯ひとみ。 美羽が平気なフリをするときって、いちばん駄目なときよ」

 「⋯⋯そうだったなぁ」


 アタイは麦茶を注いで、ことねの前に置いた。


 「なあ、ことね」

 「なあに」

 「なんで旅行、来なかったんだ」

 「⋯⋯湊とデートだって言ったでしょ? 聞く?」

 「ライバルとの惚気話なんざ聞きたくねぇ……」

 「あらあら? いつから、湊をライバル視する立場になった訳?」

 「え? ことね、それはどういう意味だよぉ」


 ことねはトラの背中に顔を埋めた。 猫吸いって奴だ。


 「⋯⋯アタイはな、ことねのことが好きなんだ! 一緒に暮らしたいって思っているんだぜ!」

 「じゃあ、くれば? 湊が喜ぶわよ?」

 「え?」


 ーーなんだと。 そんなことってありかよ。


 「でも、アイツは面倒が増えるのが嫌じゃねぇのかよ? 猫を飼うのを断られたんだよなぁ? アタイ、猫持ちだぜ?」


 ことねは顔を上げた。 その目が、少しだけ冷たい色をしていた。


 「⋯⋯ねえ、ひとみ。 私は何?」

 「⋯⋯神子様だろ」

 「そう。 つまり、私が言えばなんでもはいになるのよ!」

 「……おお」


 ーーああ。 そういやそうだったな。


 「私が言ったら、湊は従うわ。 それで解決よね」


 ◇◇◇


 数時間後、ことねの家にてーー


 「駄目だ!」

 「なんでよ〜」

 「駄目に決まっているだろ!」

 「ちょっとだけ、先っぽだけでいいから……」

 「なんだ、先っぽって! だいたいウチには、もう『美羽』ってペットがいるんだぞ! これ以上飼えるかよ! 美羽、テッシュくれ……」

 「はい。 あれえ? 湊? 私はペットだったんですの?」


 ことねの交渉は、難航していた。 湊の奴が首を縦に振らねえんだ。


 生意気な奴だぜ! 高坂湊。


 「ガルル……」

 「ほら、見て。 こんなにおとなしい子だよ」

 「いや、明らかに敵意剥き出しだろ? ズッ……」

 「グルル……」


 ーーなんだってんだ? ことねの指示に従わねぇとはいい度胸だな?


 「クシュ……ズゥ……俺はなにも、適当に言ってる訳じゃないんだ。 ……ひとみが居候してた時どうだった? ズゥ……」

 「……私は、ひとみに猫のコスプレをさせて、柱にローブで括り付けました」


 ことねが、突然の指摘でありのままの事実を語った。


 「そうだろ? ズルズル……結局そうなるんだ。 それに……ズゥ」

 

 湊は、トラを見てこう言った。


 「ズルズル。 俺は猫アレルギーなんだ。 ハッククシュン」

 「まあ、湊。 鳥肌が立ってますのよ!」


 美羽の声だけが、家の中で響いた。


 ◇◇◇


 「……ごめんね、ひとみ。 駄目みたい……」

 「アレルギーは仕方ねよ……」


 聞くところによると湊は実物の猫に対して、強いアレルギーを持っているらしい。


 猫の毛は大丈夫なのかアタイは心配になったが、ことねはこう言った。


 「ああ。 この服はね、猫と触れ合う専用の服なのよ」

 

 ーーどうやら、ことねの服は美羽が洗っているらしい。 それ以前は自分で。


 「なるほど。 道理で湊は帰宅後、仕切りに着替えを促す訳だぜ」

 「ええ。 私が猫と遊んで、毛玉なのもあるけど……」


 ーーまあ、これで。 計画はご破産だな。

 

 ◇◇◇


 「私は、湊への説得は諦めないわ! ひとみ、期待しててね ……ふふふ。 どうやら、体で説得するしかないわね……」


 ことねは、なにかを呟きながら、帰って行ったーー


 アタイは玄関に座り込んだ。


 足元で、トラが尻尾を揺らしている。


 『ケイカクハ、シッパイシタ。 ネコニ、ノリウツッタノハ、シッパイダッタ』


 「……? 今、なんか喋ってたか?」

 「ニャー」


 トラは答えなかった。 当たり前だ。 猫だからな。


 ただ、その琥珀色の目が、じっとアタイを見上げていた。

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