倉石瑞稀は体育大会をサボりたい
「さて、それでは迫ってきた、体育大会に向けての練習を今日から始めよう!」
私は声をあげてクラスメイトに呼びかける。 入学式からしばらく経った頃、私はクラスで、やりたいことリストの攻略に成功していた。
6、川端ことねに会う
なんと私は、神子様と同じクラスメイトになったのだ! そのことがわかった時、私は感動のあまり、両手でガッツポーズをした。 それに気付いたお目付け役の高坂湊さんに不審な目で見られたが、気にしない。
7、クラス委員長になる
そして、これからの私の計画の足がかりになる、重要なポジションーークラス委員。 見事になることに成功した私。 さっそく、初めての一大イベントーー体育大会に向けて、行動を開始することに。
8、体育大会のメンバーを私が決める(監督気取り)
さっそくメンバーを決めて、練習を始めないといけないのだがーー
ーー私、体育大会、出たくねぇーー
だって私、文化系だし、運動とか嫌い。 なんで、放課後に残って練習しないといけないの? それよりも、早く家に帰ってゲームしたいよ! なんとかならないかな?
「体育大会? そんなイベントあったっけ?」
「ことね、この学校の伝統行事だぞ! 創立からどんなことがあっても中止したことがないんだ!」
「へ〜、すごいね~」
「凄いねじゃなくて、ことねにはとても関係ある話しなんだぞ!」
「私、体育大会当日は休むわ⋯⋯」
「駄目だよ! 彩乃ちゃん。 一緒に頑張ろ! 運動した後の湊のご飯は、美味しいんだよ! 運動の疲れも湊の笑顔を見れば消えてなくなるよ!」
「はいはい、それはよかったですね」
「もう、そんな態度じゃ、湊は落とせないよ! 彩乃ちゃん!」
「⋯⋯はあ、もう別にどうでもいいかなぁ。 ⋯⋯なによ、ニタンタして」
「⋯⋯別に。 勝利の笑みを浮かべていただけだよ」
「⋯⋯ってことなんだ。 つまりことねと、この学校の繋がりは⋯⋯」
私は、話題そっちのけで話し合う三人を見つめる。
ーー川端ことね様は、どうやら運動をたくさんしたいようだ。 高坂湊も、どうやら積極的なようだ。
問題はもう一人だ。 入学式でいきなり絶叫したピンク髪ーー桐原彩乃さんだ。
彼女はどう見ても、運動が出来る雰囲気ではない。 考えも私の心の声と同じだ。
三者三様の状況を見せる三人。 教壇にいる倉石瑞稀は思ったーーコイツら全然私の話しを聞いてねぇ、と。 ーーしかし、使える。
私は、一心不乱にチョークで文字を書く。 他の生徒がその気迫に、驚く。
そして、書かれた内容に更に驚くのであった。 クラスメイト達が互いに見合う中、私は蚊帳の外気取りの三人に声をかけた。
「川端さん。 今回の体育大会の出場メンバーが決まりました」
「⋯⋯え? はい! お疲れ様でした」
「これでいいですか?」
「うん。 いいと思うよ」
「おいおい。 ⋯⋯委員長、明らかにことねばっかりじゃないか」
高坂湊の指摘に、私は心の中で舌打ちした。
ーーやはり一筋縄にはいかないかーー
「えー。 別にこれでいいよ湊!」
「ことね⋯⋯」
「ふふ、湊」
ーーあーあ。 なに勝手に二人の世界に入っているんだろう。 ムカつくなーー
私は、桐原さんに尋ねる。
「これでいいでしょうか?」
「⋯⋯まあ、少しは参加しないとね。 ⋯⋯いいわよ」
「よし、決定! ⋯⋯じゃ解散!」
私はクラスメイト達の「練習は?」の声を聞かない振りをして帰る。
そして、ニタンタと両手でガッツポーズを作る。
「作戦成功! 私は体育大会の出場種目無し!」
ーーそう、私はどさくさに紛れて、自分の名前を書かなかった。 気迫と流れで上手く護摩化したわ! そして、やりたいことリストにチェックを入れる。
9、体育大会の種目に参加しない
ーーさて、さっさと家に帰ってゲームしよ! 今日は、新作のゲームで遊ぼ! 私はウキウキな気分で家路につくのであった。




