バレンタイン大作戦!
81、バレンタインでチョコを配りまくる!
二月十四日。 世間ではバレンタインデーと呼ばれる日である。
ーー私には、去年までは無縁の日だった。 でも、今年は違う。
私は生徒会室の机に、山盛りのチョコを積み上げていた。 我ながら壮観だ。
「倉石、これ全部お前が作ったのか?」
「そうだよ! 私の手作り!」
「そうか。 どれどれ……」
そう言うと、柳田庶務は包みの一つを開けて口に入れた。
数十秒の沈黙の後、彼は口を開いた。
「瑞稀、お前。 チョコレートって何か知ってるよな?」
「柳田庶務。 今、聞き捨てならないことを言ったよね?」
「彩乃のチョコと比べるとな……」
柳田庶務は目を逸らした。 失礼な!
「……で、これをどうするんだ」
「決まってるよ。 配るの! 生徒会の親睦を深めるための、義理チョコ大作戦です!」
「なるほどな。 だが会長、うちの生徒会には問題がある」
「問題?」
「男が、俺と高坂しかいない」
ーーなにその、どうでもいい固定観念? 古いよ、それ?
「そんなの、女の子同士でも配ればいいんです! 友チョコって言うんだから!」
「……お前がそれでいいなら、俺は構わんが」
私はさっそく、チョコを手に取って生徒会室を出た。
後ろで、柳田庶務が手を合わせているが、見ないフリをしてあげる。
◇◇◇
みんな、まだ教室にいるかな? あ、いた! 彩乃だ。
「彩乃! はい、これ!」
「⋯⋯あ、チョコね!」
「二つとってね! 一つは舞香の分だよ!」
「はいはい、どうも……どんな味かしら?」
彩乃は呆れながらも、ちゃんと受け取ってくれた。 そして小さな包みを開けて、口の中に入れた。
「⋯⋯な、なにこれ」
「どう? ビックリしたでしょ!」
「チョコレートじゃない……」
ーー何を言っているのかな? バレンタインだよ?
私は、るんるん気分で横に視線を送る。 そこにはことねと湊がいた。
「……」
「ことね! チョコあげる!」
「へぇ? 頂こうかしら」
「高坂もどうぞ!」
「おお、遠慮なく……」
「……」
「瑞稀。 ……にはあげないのかしら?」
二人は、同時に包み紙の中を開けて口の中に放り込んだ。
「うわ、これなんだ?」
「……」
「瑞稀。 私たちになんてもの食わしているのかしら?」
その直後、高坂が頭を抱えている。 ことねは険しい顔でこちらを睨んだ。
私はそっと目を逸らした。 お嬢様! 怖い〜
「……」
「どう? 二人とも美味しい?」
「……」
「……。 ねえ? これが貴方の答えかしら……」
「え? なんのこと?」
「もういいわよ。 まだ配るんでしょ?」
ことねは笑って、ひらひらと手を振った。 よし、次行ってみよう!
「……」
今度は校舎裏に行って見た。 すると、ひとみがいた。
「よお、瑞稀。 ⋯⋯って、なんだよそれ」
「ひとみ! はい、チョコ!」
「⋯⋯アタイに?」
「うん。 いらない?」
「い、いるに決まってんだろ! ⋯⋯くれよ」
ぶっきらぼうに受け取ったひとみは、じっとチョコの包みを見つめていた。
「どうしたの? 早く食べて!」
「今、食うのかよ!」
「うん、そうだよ。 早く」
ひとみは、私を訝しみながらも包みの中の物体を口に入れた。
ーーすると、彼女の顔が歪んだ。
「……お前、これはなんだよ?」
「チョコだよ?」
「チゲぇだろ!」
ひとみが私に向かって吠える。 知らないっとーー
よし、よし! 次は先輩達に配ろう!
黒田陽介先輩と明里に凛の分を含めて三つ。
新田善子と立川竜也に二つ。 榊原会計と田中書記に二つ。
今川先生を始め、校長先生たちを含めて、学校全員に一つずつと。
ーーまあ。 これは、この前の入院騒動のお詫びだからね!
配り終わった私は、のんびりしようと、生徒会室に戻った。
するとそこには、チョコが一つ置かれていたーー
そこにはメッセージが添えられていた。
『愛してますの、瑞稀。 ……より』
「なにこれ〜」
ーー実は私、チョコレート嫌いなんだよね?
だから私は、そのチョコごとメッセージカードを『処分』した。




