ひとみの極秘任務 その15
そんなこんなで、文化祭が終わってしばらく経った。
ーーファンクラブNo.2の明里の奴が、学校に来てねぇ。
部下たちの報告じゃ、家に引きこもってるらしい。 親は日中出払ってて、一人きりだとよ。
ハッ。 ふざけんなよ。 ケジメはつけただろうが。 ゆいゆいも善子も許した。 彩乃も水に流した。 なのに当の本人が、一人で罪を抱えて引きこもりってか。
ーー迎えに行くぜ。 決まりだ。
平日の昼間、アタイは学校をサボって明里の家に来ていた。 おサボリ? うるせぇ。 これも極秘任務の一環……ってことにしておく。
ピーポン。
返事なし。 いるのはわかってんだぜ。 もう一回。
ーー無視かよ。 上等だ。
ドンドンドンドンドン!
ドアを叩く。 しばらく叩いて、止める。 開けやしねぇか。
カチャカチャ、バーン!
「オイ! 明里! いんだろ? 出てこいよー」
しばらくすると、二階から足音がした。 よし、釣れたぜ。
アタイはリビングのソファーに堂々と寝そべり、頬杖をついて待った。 招かれざる客ってのはな、遠慮したら負けなんだよ。
降りてきた明里は、ひでぇ面だった。 髪はボサボサ、目の下にはクマ。 あの澄ました女の面影もねぇ。
「⋯⋯ひとみちゃん。 学校は?」
「あ? テメがゆー立場かよ、おサボリさんよー」
おいおい、重症だなぁ?
「オイ! 来客用のドリンクはネェのかよー」
「⋯⋯少なくとも、不法侵入者に出す飲み物はないわよ」
「ケッ。 そうですかー」
「⋯⋯要件はなにかしら?」
ーーおっと、反応が変わったな? アタイを警戒しているのか?
「アァ? 明里ちゃんよー 冷たいじゃネェか? アタイとの仲はそんなんじゃネェだろー」
「⋯⋯なによ? 吉澤ひとみ。 貴方はただの駒だったんだから⋯⋯計画は失敗したし、私たちの関係は終わりよ」
ーー駒、ねぇ。 なあ、明里よ。 お前はいつからアタイを操る立場だと勘違いしてたんだ? アタイを操ることができんのは、ことねだけだぜ。
「フーン。 そうかい」
アタイは、あっさりリビングから出た。 その時、アタイと明里の様子を見ていた奴の妹ーー凛がアタイを部屋に案内した。
「なんだ? オメーもいたのかよ?」
「ええ……帰ってきた所よ」
なんだ? ーーコイツ、この前と違って落ち込んでやがるな?
「お姉ちゃん……なんで、引きこもっているの?」
「はあ……そんなん、アタイよりも、お前の方が知ってんじゃねぇか?」
「え?」
凛の奴が驚いた様子でアタイを見ている。 そんな表情されてもなぁ?
ピーポン。 チャイムだ? 誰だよ?
インターホンに向かう明里の足音。 物陰から覗くと、モニターを見た明里が、髪を掻きむしってやがった。
「⋯⋯なによ」
「あ、明里! あれから学校に来てないって聴いて、心配だから来たの!」
コイツは、瑞稀の声だ。 モニター越しでもわかる、パアッと花が咲いたような声
ーーハイハイ、演技演技。 だが、使えるな。 凛に目配せをしてアタイは玄関に向かった。
「⋯⋯ほっといてよ!」
「そんな⋯⋯」
アタイは玄関のドアを開けた。 外で萎れてる瑞稀と目が合う。
ここからは、アドリブの時間だぜ。
「はわわ。 倉石さんです!」
アタイは全力の猫被りボイスで言ってやった。 明里の家の中から、アタイの声。 さあ、どう見える?
「……なるほど」
瑞稀の奴、たっぷり間を取って頷きやがった。
「ちょっと、待ちなさいよ! 瑞稀、なにを想像したの? 言ってごらんなさい! 怒らないから」
ーー出てきた出てきた。 リビングから玄関まで、ノンストップだ。
「二人でお楽し⋯⋯」
「ガアー」
明里が玄関に駆け込んでくる。 アタイと瑞稀は、ニンマリと明里を迎えてやったぜ。
ーーかかったな、明里。




