ひとみの極秘任務 その14
ひと段落したアタイは、ことね神社にいた。
文化祭ではここで催しがあるのだ。 説法奴だぜ。 ファンクラブの精鋭が建立したこの社で、神子様の偉大さを来場者に説いて回る。
つまり代表であるアタイの、大事なお勤めよ。
賽銭箱も絵馬もお守り(ことね様イラスト入り)も完備だ。 我ながら完璧な仕事だぜ。 ことねの許可? とってないぜ!
すると、瑞稀が中学生二人を連れてやってきた。 案内役って奴か。
一人は、彩乃にそっくりな奴。 背丈は小せぇが、顔立ちがまんま彩乃だ。 妹か?
もう一人はーーおい、マジかよ。 あの顔、見覚えがあるぜ。 明里の部屋で見た、姉妹写真のガキだ。 明里の妹だよなぁ?
「次はこちらへ⋯⋯ってナニコレ?」
瑞稀が神社を見上げて固まった。 アタイは見逃さなかったぜ? 一瞬の無表情をな? あの表情が、唯一演技じゃないってようやくわかったぜ。
「はあ? 生徒会長が知らないものを、私が知るわけないでしょ? 案内人失格ね」
「わあー。 すっごい立派なお寺!」
彩乃似の方は目を輝かせ、明里の妹らしき方は早速トゲを飛ばしてやがる。 ガキのくせにいい度胸だぜ。
ーー瑞稀の反応からするに、ここはふれあい広場だったはずって認識か。 フッ、甘いぜ。 申請書類は「文化祭用仮設展示物」で通してある。 どこからどう見ても立派な神社だがな!
ーーずっと、ここに建ったままにするぜ。 サツマイモパーティできるかなぁ?
おっと、お勤めしなくちゃなぁ? アタイは咳払いをして、説法を再開した。
「この地に災いが起きた時。 かの山の名系である川端家は立ち上がり、我々下賤な民をお救い下さいました。 今代川端ことね様も、その系譜であらせられるわけであり。 神子様の意思は絶対⋯⋯」
「吉澤さん。 これはなんですか?」
「これはこれは。 下賤な民の代表じゃないですか? 観てわかりませんか、これは説法というものです」
「いや、この建物について⋯⋯」
「おや? 貴方も興味がおありで? そうでしょ、そうでしょう。 この境内はことね様の偉業を伝える、文化遺産として⋯⋯永劫に語り継がれることでしょう」
「つまり違法建築って訳」
ーーピキ。
横から口を挟んだのは、明里の妹らしきガキだった。
「⋯⋯なんだとこのガキ。 なにもんじゃ!」
「私は事実を言ったまでなんだけど?」
「貴様! よくも神聖なる境内を違法などと⋯⋯潰すぞ?」
アタイとガキの間に、火花が散る。 ことね様を愚弄する奴は、中学生だろうと容赦しねぇのがアタイの流儀だ。
いや、大人げねぇのはわかってる。 わかってるが、コイツの澄ました面、なんだか腹が立つんだよ!
ーー人生悟ってんじゃネェぞ?
「あ、あの⋯⋯二人とも、落ち着いて⋯⋯喧嘩は⋯⋯その⋯⋯」
瑞稀がオロオロと間に入る。 視線が泳ぎまくって、今にも泣きそうな面の演技だ。 もういい。 お前の演技はこりごりだよ。
「みずちゃん⋯⋯大変だね。 私、ミウミウと一緒に文化祭周って来るね!」
彩乃似のガキが、ヒラヒラと手を振って離脱しやがった。
「ま⋯⋯舞香ちゃん!? 置いてかないで⋯⋯あっ」
舞香が視界から消えた途端に、リアクションをやめやがった。 ここまで露骨だと、清々しいぜ。
残されたのは、アタイと、瑞稀と、明里の妹(仮)。 気まずい三角形の完成だ。
「⋯⋯で? 違法神社の代表さん。 この賽銭箱のお金、どこに行くわけ?」
「テメーまだ言うか! ⋯⋯ことね様の布教活動費に決まってんだろが!」
「ふうん。 宗教法人の登録は?」
「ぐっ⋯⋯こ、このガキ、口の回る⋯⋯! テメー名前はなんだ!」
ガキは、ふっと鼻で笑って、瑞稀の背中を盾にするように半歩隠れた。
おい。 テメー、瑞稀の後ろは安全地帯だと思ってやがるな?
ーー残念ながらソイツは、お前に関心がないようだぜ?




