ひとみの極秘任務 その13
アタイたちは、逃げる明里を体育館裏で捕まえた。
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯行かせない! 貴方に湊とことねの邪魔はさせない!」
瑞稀が両手を広げて立ち塞がる。 相変わらず、胡散臭い演技がウメェなぁ?
「その通りだぜ。 ツラかせよ⋯⋯黒田明里」
「⋯⋯やれやれ。 今からいい所なのに⋯⋯」
「神子様であるなし関わらず、恋路を邪魔するのはヤボだぜ」
ーーコイツの狙いは、湊とことねの逢瀬だった。 ゴミ投げの次は恋路の妨害。 もう様式美じゃ庇いきれねぇぜ、明里。
「⋯⋯それで、要件はなにかしら? 瑞稀?」
「明里! なんであんなことしたの? 最悪だよ?」
「ふふ。 どうしてかしらね⋯⋯ってあぶないわね、吉澤ひとみ」
気づいたら手が出てた。 ヒラリと躱しやがって。
「アタイらを利用したって訳か? どうなんだよ!」
「ご名答。 ⋯⋯まったく騙されて、勝手に共倒れしてくれれば良かったのに」
ーー共倒れ、だと。 そんなことを考えてやがったのか! 瑞稀に意識が行き過ぎて、他のことはノーマークだったぜ。
その後も明里は一度は捕まったものの、すぐに逃げ出してしまった。
それを、瑞稀は一人で追いかけてやがった。 その代わり、アタイは仲直りした彩乃と一緒にライブを見ていたんだがーー
明里の代役である、田中幸子の口パクライブについ、爆笑してしまった。
ーーかくして、舞台裏。 アタイと彩乃は土下座をさせられていた。
「お邪魔します」
「おやおや、これはこれは。 生徒会長の倉石瑞稀さんじゃないですか?」
「お邪魔しました⋯⋯」
「コラ! 待て瑞稀!」
「ヒエー」
回れ右した瑞稀が、サッチーの剛腕で床に押し付けられる。 アタイたちの隣に、生徒会長の土下座が一丁追加だ。
ーーなあ、これも演技か? 瑞稀よ。 この「ヒエー」も台本なんだよな。
アタイにはもう、人間不信だぜ。 明里の件も含めてな。
「⋯⋯さて、今回の事件の事情聴取をしようじゃないか? ⋯⋯明里。 瑞稀の隣が空いてますよ?」
「⋯⋯⋯」
どこか不貞腐れた態度で、明里が腰を下ろして並ぶ。 その面を見た瞬間、アタイは吠えてた。
「明里! テメー! よくもオメオメと、アタイの前に面を見せたなぁ」
「⋯⋯⋯⋯」
「ダンマリかよ。 クソが」
「⋯⋯⋯⋯」
「黒田明里さん。 ⋯⋯貴方が、じゃんけん大会の時にゴミを投げたんですか?」
「そうだけど。 ⋯⋯それがなにか?」
「そんな! ⋯⋯どうしてですか? 私、貴方になにかしましたか?」
「別に。 貴方には、恨みはないわよ⋯⋯でも川端ことねにはある」
ーーハア?
つまり、明里の狙いは彩乃じゃなくて、ことね、だと?
待て待て待て。 テメー、ファンクラブのナンバー2だろうが! ことねに恨み持った女が、なんでアタイの隣で神子様コールしてたんだよ!
「⋯⋯次いでだから、うざったい組織諸共潰してやろうと、思ったんだけど⋯⋯まさか生徒会長に見られてた⋯⋯なんてね」
うざったい組織ーーことねのファンクラブのことかよ。
殴りかかりてぇ。 だが、それより先に、アタイは気づいちまった。 明里の瑞稀を見る目が、どこか寂しそうだったことにな。
ーーなんだよ、その目は。 明里、何を考えていやがる?
その時、舞台裏へゆいゆいと善子がやって来た。
「明里! アンタどこに行ってたのよ! 連絡もよこさないで⋯⋯」
「アカリッチ、さすがのウチでも怒るよ! せっかくの歌唱デビューだったのに」
「⋯⋯ごめんなさい⋯⋯謝っても許してくれないよね」
「うん。 ならいいわ、次から気をつけね」
「え⋯⋯?」
「ポカンってしてるアカリッチ珍し! 萌えるわ!」
「許してくれるの? ⋯⋯たったこれだけで?」
ーーアタイも、さすがに明里の気持ちがわかるぜ。 この対応には驚く。
謝っても許されねぇ前提で生きてる女に、「次から気をつけね」の一言。 明里の面から、初めて余裕が剥がれてやがった。
ーーふと、隣の瑞稀を見た。 瑞稀は、ポカンとする明里を、じっと見てた。 無表情でも営業スマイルでもねぇ、名前のつけられねぇ顔でだ。
「⋯⋯やれやれ。 二人とも、許すのが早すぎます。 これでは私の懐が狭いみたいじゃないですか⋯⋯」
サッチーはため息を吐くと、両手をあげた。 降参って奴だな。
その後、ケジメが行われたが、これは蛇足だな。
ちなみに、瑞稀の奴はナレーションをしてたぜ。 本人は、私のやりたいことはこれとか言ってたがーー
おそらく、演者をしたくなかっただけだぜ! あの、ミウミウの被り物しかり今回も、役者は演じたくないらしいな?
存在自体が役者の癖によーー




