倉石瑞稀の嘘だらけの物語 その19
瑞稀は元の世界へ帰るため、元凶であるエタナを探して校内を駆け巡りました。
しかし静まり返った校舎に姿はなく、代わりに現れたのは、優雅に微笑む制服姿のことねでした。
「私が生徒会長だった」と叫ぶ瑞稀に、ことねは「それは妄想」と嗤い、「誰が本当の生徒会長か、みんなに決めてもらいましょう」と体育館へ誘ったのでした。
体育館には人形のように無表情な生徒たちが整然と並び、登壇にはことねと、なぜか凛が待っていました。
凛が告げたのは、彩乃と舞香、そしてひとみが既にこの世界から消えたという事実でした。
皆、理想を叶えて瑞稀を残していったのです。
凛は舞香の伝言「過去に囚われないで、必ず戻って来て」を伝え、瑞稀は裏切り者と罵ってしまった舞香への謝罪の涙を流したのでした。
続いて凛が、自らの想いを語りました。 黒幕の父、前々生徒会長の兄、アイドルの姉ーー華々しい家族の中で「何もない末っ子」だった彼女は、生徒会長になって家族に並ぶために理想学園へ来たはずでした。
しかし本当に欲しかったのは肩書きではなく、「貴方や舞香みたいな、心から笑い合える友達」だったと気づいたのです。
ありのままの自分を受け入れてくれたことへの感謝を告げ、凛は瑞稀の腕の中で静かに消えていったのでした。
二人きりになった体育館で、ことねは茶番をやめ、真実を明かしました。
彼女は瑞稀を「知らない」と嘘をついていたこと。 ただしその知識は「もう一人の私」前世で『理想学園』という小説とその続編『理想学園2』を愛読していた人格から聞いたものであり、瑞稀はその続編の登場人物、しかもバッドエンドの物語の主人公だったということを。
物語の瑞稀は、ひとみが消え悪霊が入り込んだ学園で、復讐のために自ら力を欲し、三人組を根絶やしに屈服させた末、悪霊に飲まれたのでした。
「結末を決めるのは語り部ではなく、主人公の貴方自身よ」ことねはそう告げて、瑞稀に消えるよう促したのでした。
しかし瑞稀は引き下がらず、逆にことねへ手を伸ばしました。
ゲームセンターでの出会い、選挙の推薦、二重人格を知った日のこと「全部覚えてる」と記憶を重ね、「誰もいない世界で独りぼっち生きるより、一緒にまた遊ぼう。
それがことねの理想だ」と迫ったのでした。 「私の理想は生徒会長であり続けること」と 強がることねに、瑞稀は「嘘つき」「本当は一人が寂しいくせに」と切り込み、「私たちは親友だ」と告げました。
ことねは「貴方の精神をボロボロにした相手を親友だなんてどうかしている」と抗いましたが、ついに「楽しかったに決まっているじゃない」と涙を見せたのでした。
それでも彼女は、自分が文化祭の日に消える運命であり、この世界は消えかけの自分が見ている最後の夢だと告白しました。
「未来は変えられる、私たちが覆そう」瑞稀の言葉に、ことねは呆れつつも「ありがとう、瑞稀。 私の、親友」「現実の世界でまたね」と、一番優しい笑顔を残して光の中へ消えていったのでした。
一人泣きじゃくる瑞稀のもとへ、雰囲気を台無しにする声が響きました。
「嘘で塗り固めたその仮面、剥いでやりますわよ!」この世界の首謀者である美羽とエタナが、現れたのでした。




