倉石瑞稀の嘘だらけの物語 その6
夏休みが明け、瑞稀は無事に二学期の登校を迎えました。
クラスでは文化祭に向けた話し合いが行われ、代表となった彩乃の進行のもと、美羽の食欲主導で出し物は屋台に決まりました。
しかし瑞稀は、みんなの輪から「用事がある」と去っていきました。
ーー彼女はモブたちとの下らない茶番に付き合うつもりはないのです。
その決意は、よそよそしい敬語と業務的な態度となって現れました。
ホームルームでは、文化祭の内容は生徒会で決定済みだと独断を告げ、「彩乃と呼んで」と縋る彩乃を「桐原さん」と突き放し、姫様の忠告にも耳を貸しませんでした。
ついにことねは「川端家の名において認めない」と宣言し、校長に文化祭の中止を命じてしまったのでした。
夜の学校で雑用に励む瑞稀を、美羽が見つけ出した時、二人はぶつかり合いました。「みんなから見て私はただの生徒会長」「私は臆病だから」と壁を語る瑞稀に、美羽は「くだらない」と一蹴し、「私も臆病、私たちは似た者同士」「私だけでもいいじゃないの! 二人で一緒に明日を迎えるのですわ!」と叫びました。美羽にだけは弱みを見せたくなかった瑞稀の心は、その言葉に解かされ、二人は並んで夜空を見上げたのでした。
ーー彼女は思いました。 『私と美羽が一緒? あり得ない……』と。
翌日、姫様は「このままじゃ学園祭は中止ね」と瑞稀を試しました。
瑞稀が「貴方が何をしても文化祭は開催されます」「貴方はただの生徒として楽しんでください」と啖呵を切ると、姫様は満面の笑みを浮かべ、一瞬『ことね』が顔を出してウインクしました。
中止騒動は、瑞稀を奮起させるための『ことね』の作戦だったのです。
そして瑞稀は、深夜の山登りの疲れで休んでいる彩乃へノートを届けるよう命じられました。
桐原家を訪れた瑞稀は、両親の話題に触れてしまい、「二人は私たちを守るために死んだ」という現実離れした、しかし真実だとわかる話を聞かされたのでした。
しかし和解の一方で、瑞稀は生徒会の仕事で限界を超え続けていました。
私の不思議な力も相まって、彼女は美羽たちの前から幽霊のように姿を消し、家族すら不在に違和感を抱かない異常な日々が続きました。
そしてある朝、廃人のような表情で現れた瑞稀は、駆け寄った美羽の腕の中で倒れてしまったのでした。
自宅で静養することになった瑞稀のもとには、次々と見舞い客が訪れました。
母は娘の異変に気づけなかったと涙し、ことねと姫様、舞香、「女王様に対する言葉遣い集」を朗読するゆいゆい、エタナの代償を警告するサッチー、「学校を変えるんだろ」と激励する健太ーーそして最後には、クラスメイトたちまでもが「生徒会長、元気になって」と駆けつけたのでした。
『愛されていますね……瑞稀?』
「……それがなに? いい話にしたい訳?」
『瑞稀、もうやめましょう』
「ふん。 モブに愛されても、どうでもいいかなぁ」




