倉石瑞稀の嘘だらけの物語 その5
夏休みのある日、瑞稀はことねの呼びかけで、美羽、彩乃、舞香と共に海水浴へ出かけることになりました。
ーー彼女は思いました。 『私以外で勝手に行ってくれないかなぁ?』と。
出発前から、渋る彩乃も舞香のとりなしで加わり、一行は賑やかに海へ向かいました。
海では、舞香が用意した水着姿の彩乃が瑞稀に頭を撫でるよう甘え、美羽は海の家の店主たちと大食い勝負を始めて店番までする始末でした。
一人ビーチチェアで見守っていた瑞稀は、いつしか眠り込み、うなされながら「ことねに謝り続けていた」と彩乃に告げられました。
ーー彼女は思いました。 『勝手に寝言を聞くなよ、気持ち悪い』と。
夜、旅館では女子トークが始まりました。 湊のハーレム疑惑や、彩乃が健太を好きらしいという話題に美羽が反応して騒ぎになる中、突如姫様が現れました。
彩乃と舞香は困惑しましたが、美羽が以前から姫様の存在を知っていたことが判明しました。 姫様は瑞稀の悩みを話題にし、美羽も「ボケた後いつも私の様子を伺っている」「リストの達成を不安がっている」と 指摘を重ね、瑞稀は耐えきれず寝床へ逃げ出したのでした。
ーー彼女は、美羽たち『モブ』に嫌悪感を募らせました。
寝床に向かってからも、今度は彩乃が語り始めました。 彩乃は「別の世界線の貴方の心の声が夢に出てきてもおかしくない」という不思議な解釈を口にしました。
瑞稀は形だけの謝罪で済ませようとしましたが美羽に一蹴され、姫様は追及を諦めて瑞稀のケアに専念すると宣言しました。 そして美羽は、見たことのない真剣な表情で「貴方が思っているよりも、私は貴方のことが好き。 自分の本心と向き合って、私たちに本気で向き合って」と告げたのでした。
美羽にだけは弱みを見せたくなかった瑞稀は、その言葉に心を揺さぶられるのでした。
ーー彼女は思いました。 このままでは危険だと。 いずれ、自分の本性が晒されてしまうのではないかと。
そう。 彼女は恐れたのです。 自分の本性が美羽たちに暴かれるのをーー
こんな醜い自分。 嘘にまみれた自分なんて、誰も求めていない、と。
翌朝、ことねに起こされた瑞稀は、いつになく元気に目覚めました。見上げた空がこんなに綺麗だったのかと感じるほど、彼女の心は晴れやかになっていたのでした。
ーー彼女は思いました。 昨日の自分はどうかしていた。 『モブ』なんかにかまっている場合じゃない。
私はやりたいことをやるんだ! 邪魔はいらないーー




