倉石瑞稀の嘘だらけの物語 その1
とある町の住宅街の一軒家で、倉石瑞稀は入学式前夜にもかかわらず、机に向かって『高校生活でやりたいことリスト100』を書き続けていました。
彼女は入試最高得点という理由だけで新入生代表に選ばれており、そのことに本人が一番驚いていたのでした。
瑞稀は誰にも明かせない本心に蓋をしたまま、理想の学校生活を夢見て眠りにつくのでした。
ーーそれが、夜に溢れて、文字を追加したことに自意識は気づかずに。
迎えた入学式当日。 瑞稀は家族に見送られ、校門で生徒会長・黒田陽介から激励を受けました。
しかし新入生代表の挨拶では、強制クラブ加入制度への不満をぶちまけた挙げ句、やりたいことリスト100個を読み上げようとして制止されるという大失態を演じてしまいました。
ーー彼女は「高校デビュー失敗」と落ち込みましたが、元々彼女はそれを実行するつもりなどありませんでした。
その後、瑞稀は土地の守護一族・川端家の神子であることねと同じクラスになり、クラス委員長の座も手に入れました。 体育大会ではメンバー決めの権限を利用し、どさくさに紛れて自分の名前を書かないという策略で、まんまと競技への不参加を果たしたのでした。
ーー彼女は青春など下らないことだと内心思っていました。 なぜなら、倉石瑞稀はずっと、引きこもりだったからです。
そんな折、川端家の関係者だという転校生・櫻井美羽がやって来ました。
瑞稀は、入学式の失敗以来クラスで孤立しており、シャワーの水に紛れて涙を流すほど孤独に苦しんでいました。
ーーいえ正確には、彼女は涙を出しませんでした。 涙などは既に彼女には流れないのです。
彼女は勇気を振り絞って美羽に話しかけ、生意気だと誤解していた彼女が、実はただの人見知りだったと知るのでした。
瑞稀は美羽を「応援マスコット・ミウミウ」に任命し、自分と共に司会係にすることで、体育大会サボりの共犯に仕立て上げたのでした。
ーーそう。 瑞稀とって、美羽はただのマスコットだったのです。
体育大会当日。 瑞稀は司会席から、ことねを大量の競技に出場させるという采配で、見事クラスを優勝に導きました。 途中、企みに気づいた美羽が抗議しましたが、瑞稀は着ぐるみ「ミウミウのプロトタイプ」で彼女を封じ込めるなど、やりたい放題でした。 それでも二人の掛け合いは賑やかで、瑞稀は久しぶりに楽しさを感じていたのでした。
ーーけれどそれは嘘で、本当はこの気持ちに戸惑っていました。
次なる目標は部活の設立でしたが、最低五人の部員が必要だと職員室で告げられ、友達のいない瑞稀は絶望していました。
そんな休日、ゲームセンターで対戦した相手が、偶然にもことねだったのです。
意気投合した二人は推しの話で盛り上がり、瑞稀はついに念願の「友達」を手に入れたのでした。
そして瑞稀は、ことね、美羽、湊、彩乃を部員に迎え、『のんびり推活部』の設立に成功しました。
顧問は、寝不足で保健室を訪れた縁で知り合った今川先生が快く引き受けてくれました。
活動内容は「帰宅して推し活」という実質帰宅部同然のもので、美羽が「ただの帰宅部ですわ!」と的確に突っ込んでいました。
担任は渋い顔をしましたが、神子であることねが部員にいるため断れず、部活は正式に承認されたのでした。
瑞稀は先生の前でガッツポーズを決め、新作ゲームへの期待に胸を躍らせるのでした。
ーーそう。 新作の呪術で、恨みの人物を呪うというゲームが。




